備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 外来種と化学物質汚染

外来種って応用的な問題であって、純粋科学の扱うトピックではないと勝手に思ってましたが、そんなことないかも。壮大な野外実験だと思えば、結構面白い。

 

 

「侵略種はランダムに選ばれているわけではない

Karatayev AY, Burlakova LE, Padilla DK, Mastitsky SE, Olenin S, 2009, Invaders are not a random selection of species, Biol Invasions 11:2009-2019.

北米とヨーロッパにおける淡水無脊椎動物について、在来種と外来種との特徴を比較した論文。外来種は軟体動物や甲殻類の割合が高いとか、懸濁物食者suspension-feederが多いとか。また、外来種は有機汚染に耐性のある種が多いという結果です。

では、汚染耐性はどうやって評価してるのでしょうか。Mandaville (2002) のAppendixによる分類を基にしているようです。Mandaville (2002) の分類は、さらにBarbour et al. (1999, EPA) やBode et al. (1996, NYS Department of Environ Conservation) などを元ネタにしています。しんどいので元ネタの詳細は未確認。どうも野外調査をして、生息状況と生息地点の汚染状況から判断しているっぽいですが…。

 

水質汚染外来種の侵略を増加させる

Crooks JA, Chang AL, Ruiz GM, 2011, Aquatic pollution increases the relative success of invasive species, Biol Invasions 13:165-176.

サンフランシスコ湾で付着生物の銅曝露実験をおこなった論文。護岸沿いにポリ塩化ビニルのプレートを沈めて、4~6週ごとに回収し、複数濃度の硫酸銅に72時間曝露させて海に戻す。その作業を計24週繰り返すという実験です。結果、外来種の方が銅による影響を受けにくく、高濃度でも種数・個体数の変化が生じにくかったらしいです。

考察では、バラストタンクでの輸送など外来種が移動する際にtolerantなものが選ばれた( = "weeding out" procces) のではないか、と述べられてます。自分が気になったのも、これに似ていますが、ここで調べられている外来種集団は既にある程度汚染されたサンフランシスコ湾に定着しているので、(清浄な地点にいた?)元の集団とは異なる形質・汚染耐性を獲得してるんじゃないか、ということ。

上のCrooks et al. (2011) でも気になる点は同じ。汚染耐性は定着後の集団を基にした評価です。

 

「汽水域の状況と侵略種の地理的分布との関係

Dafforn KA, Glasby TM, Johnston EL, 2009, Links between estuarine condition and spatial distributions of marine invaders, Diversity Distributions 15:807-821.

あとで読む。

 

 

野外から採ってきた在来種と外来種とのストレス耐性を調べたという論文はいっぱいあります。流し読みしただけですが、例えば以下。

 

バルト海における在来ヨコエビと非在来ヨコエビにおけるストレス耐性と腹仔数の違い

Sareyka J, Kraufvelin P, Lenz M, Lindström M, Tollrian R, Wahl M, 2011, Differences in stress tolerance and brood size between a non-indigenous and an indigenous gammarid in the northern Baltic Sea, Marine Biol, 158:2001-2008.

生息環境や食性、生活史が似ている在来種G. zaddachi外来種G. tigrinusの熱・貧酸素への耐性を比較した論文。両種は同一地点から採取してます。外来種の方が耐性があるという結果。

 

 「淡水巻貝の非生物ストレスへの高い耐性と侵入成功

Weir SM, Salice CJ, 2012, High tolerance to abiotic stressors and invasion success of the slow growing freshwater snail, Melanoides tuberculatus, Biol Invasions 14:385-394.

繁殖能では在来種B. glabrataに劣るM. tuberculatusの温度、化学物質(Cd・マラチオン)、乾燥に対する耐性を調べた論文。外来種は野外採取、在来種は研究所で継代飼育されているもの。外来種の方が耐性があるという結果。侵入成功している外来種の多くは、繁殖能が高いのでレアな例ではないかとのこと。

 

 「在来種・侵入種・寄生されたヨコエビへのアンモニア毒性

Prenter J, MacNeil C, Dick JT, Riddell GE, Dunn AM, 2004, Lethal and sublethal toxicity of ammonia to native, invasive, and parasitised freshwater amphipods, Water Res 38:2847-2850.

アイルランドでの在来1種と外来2種のアンモニア耐性比較論文。

 

 

外来種の遺伝的な解析については、これから勉強していきたい。

論文のメモ:ヨコエビ飼育のための人工海水の素

「汽水産端脚類を用いた慢性非致死底質バイオアッセイ

Emery VL, Moore DW, Gray BR, Duke BM, Gibson, AB, Wright RB, Farrar JD, 1997, Development of a chronic sublethal sediment bioassay using the estuarine amphipod Leptocheirus plumulosus (Shoemaker), Environ Toxicol Chem 16(9):1912-1920.

忘れそうなのでメモ。汽水産・海産ヨコエビの繁殖に適切な人工海水の素を調べてます。Instant Ocean(Aquarium Systems)やEPAでお薦めしているGP2培地より、Forty Fathoms (Marine Enterprise)が良いとのこと。Forty FathomsでググったらCrystal Sea® Marinemixというのが出てきたけど、同一商品かな?

 

 

(追記 2017.11.25)

EPAプロトコルにあるGP2培地は、オリジナルのGP2培地 (Spotte et al., 1984) を簡略化したものだったのか。オリジナルを見ると、ビオチンやビタミンB12も加えています。

 

(追記 2020.08.04)

日本での研究用途なら、Marine Art SF-1が良いかも。組成が公開されているので。

論文のメモ: メタゲノム情報の保存庫としての貝殻

気晴らしで読んだ論文。

 

「メタゲノムアーカイブとしての貝殻

Coutellec MA. 2017. Mollusc shells as metagenomic archives: The true treasure is the chest itself. Mol Ecol Resources 17(5): 854-857.

Der Sarkissianら (2017) の解説記事。貝殻のDNAを抽出して、その貝のDNAだけでなく、関連する細菌叢などのメタゲノムを分析できたという研究。病原性微生物の存在など、7000年前の情報まで辿れたという話です。貝殻がどうやって作られてるのかは全然知りませんが、藻類のDNAも検出されてるみたいで面白いです。食物などで取り込まれたDNAは案外体内に遍在してるんですね。最近「破壊する創造者」を読んでて、このへんの話に興味あり。

貝殻の微生物メタゲノムは、海水の細菌叢より土壌細菌叢の方に近かったそうです。その原因はデータベースの情報不足かもしれないと考察されていてます。こういう系の論文には常について回る課題ですね。

 

 

「ポリスチレンがゴカイの細菌群集に影響する

Kesy K, Oberbeckmann S, Müller F,  Labrenz M. 2016. Polystyrene influences bacterial assemblages in Arenicola marina-populated aquatic environments in vitro. Environ Pollut 219:219-227.

マイクロプラスチックによる生物への影響には、プラスチック自身の物理的な影響とプラスチックに吸着している有害物質による影響があるようです。マイクロプラスチックの影響はそれだけじゃなくて、(糞や周囲の底質中の)細菌群集への影響もあるのではないか、という疑問を調べた論文です。面白そうかなと思ったけど、あんまりパッとしなかった。ゴカイ自身への影響や腸内細菌は調べていない。

 

 

TSAに登録する際のmultifastaファイルの編集

NGSで読んだcDNAをデータベースに登録するとき、生配列はSRA(Sequence Read Archive)だけど、アセンブリ配列はTSA(Transcriptome Shutgun Assembly)という区分だそうな。

提出するfastaファイルは以下の形式に則っていないとダメだそうです。

 
>CLN01  <-- 1件目のエントリ名
ggacaggctgccgcaggagccaggccgggagcaggaagaggcttcgggggagccggagaa
ctgggccagatgcgcttcgtgggcgaagcctgaggaaaaagagagtgaggcaggagaatc
gcttgaaccccggaggcggaaccgcactccagcctgggcgacagagtgagactta
//      <-- 配列情報終了フラグ
>CLN02  <-- 2件目のエントリ名
ctcacacagatgcgcgcacaccagtggttgtaacagaagcctgaggtgcgctcgtggtca
gaagagggcatgcgcttcagtcgtgggcgaagcctgaggaaaaaatagtcattcatataa
atttgaacacacctgctgtggctgtaactctgagatgtgctaaataaaccctctt
//      <-- 配列情報終了フラグ

perlってなにそれ状態で、大量の配列を含むfastaファイルの一括編集に手こずったので、メモ。

自分がやらないといけない作業は、スラッシュ//を追加することと、エントリ名を変更すること。次の2つのサイトを参考にコピペして、若干の変更を加えれば出来ました。なお、MacBook Proテキストエディタにmi使用。

マルチファスタの改行をとる(perl、awk) - script of bioinformatics

bioperl - Replace Fasta header files using Perl - Stack Overflow

 

使用したコードの一部は以下のもの。コピぺしたものをそのまま使っているので、コードの意味はイマイチわかってません。

#!/usr/bin/perl#!/usr/bin/perl

# マルチファスタファイル

open (IN, "<multi.fasta");

# 出力ファイル

open (OUT, ">output2.fasta");

 

@IN = <IN>;

$a = 1;

for ($i=0;$i<@IN;$i++) { 

  if(@IN[$i] =~ />/){

       if(@IN[$i] =~ /DN([0-9]*)/) {   #各配列のヘッダが"DNXXX"になっている

             $b = sprintf("%06d",$a); #ヘッダの番号を6桁で表示"000001"のように

     my $f = " / /\n\>\ABC$b\n"; #">ABC000001"という表記

             print OUT $f;

             $a =$a +1 ;   #番号を1ずつ足していく

       }else{

       print OUT @IN[$i];

       }

  }else{

print OUT @IN[$i];

}

}

close(IN);

close(OUT);

 

 

論文のメモ: 遺伝子ネットワーク推定とAOP

マイクロアレイやRNA-seqのデータから遺伝子間の関係(ネットワーク)を推定し、有害物質によって引き起こされる悪影響adverse outcomesのメカニズムを明らかにしようという研究について。

 

「システム生物学アプローチによってNarcosisのCa依存メカニズムを解明する

Antczak P, White TA, Giri A, Michelangeli F, Viant MR, Cronin MT, Vulpe C, Falciani F, 2015, Systems biology approach reveals a calcium-dependent mechanism for basal toxicity in Daphnia magna, Environ Sci Technol, 49(18), 11132-11140.

昔2回ほど簡単に読んだけど、頭に残ってなかったので精読し直しました。

Narcosis(Basal toxicity)のメカニズムをシステム生物学的なアプローチで明らかにしたよ、という論文。疎水性の物質ほど毒性が大きい、それは疎水性物質ほど細胞膜のintegrityを阻害しやすいから、ということまで既存研究で分かっていたけれど、より詳細なメカニズムまでは明らかになっていなかったそうです。この論文は、2013年ESTのDaphnia magnaトランスクリプトーム解析論文のマイクロアレイデータ(26種の有機物質に24h曝露)用いて、曝露物質のlogKowと遺伝子発現、曝露物質の物性との関係を調べることによって、その詳細なメカニズム理解に迫ったものです。細胞膜でのCa輸送阻害がnarcosisのMolecular Initiating Event(MIE)ではないか、というのが結論。

Ca関係のpathwayが怪しいと見做すきっかけになった結果は、logKowと発現データの相関(Significance Analysis for Microarrays; SAM, Table S6)?色々やっているけど、肝心の結果の記述はあっさりしてます。Ca阻害がMIEだという仮説の検証のため複数の追加実験をおこなっていて、投げっぱなしでないのは好感が持てます。

イントロ読んだ時は、全自動的なデータ解析でAOP(Adverse Outcome Pathway)を構築するのかと思ったけど、意外と泥臭いことやってました。

 

AOPリバースエンジニアリング

Perkins EJ, Chipman JK, Edwards S, Habib T, Falciani F, Taylor R, Aggelen GV, Vulpe C, Antczak P, Loguinov A. 2011. Reverse engineering adverse outcome pathways. Environ Toxicol Chem 30(1): 22-38.

上の論文は、この総説?を先に読んだ方が理解しやすいかも。Ankleyら(2009, Aquatic Toxicology)のファットヘッドミノーのマイクロアレイデータを用いて、ネットワーク解析をおこなった論文。RのminetパッケージとSoftware Environment for Biological Network Inference(SEBINI)を使って、ARACNeとCLRで解析。

上のAntczakら(2015)もそうだけど、遺伝子発現データだけでなくadverse outcome(AO)データ自身もネットワークに組み込んでいるのが面白い。この論文では、繁殖能低下の代わりにtestosteronレベルをAOとしてます。AOと関連の深いpathwayを探索するという目的に適している方法だと思います。

データ解析の結果を一人歩きさせないよう述べた次の文は大事。"these results must be evaluated by both leveraging preexisting knowledge of the biological system and targeting follow-up experiment to explicitly test the hypothesis generated."

 

 

論文のメモ: 水生生物の体内に蓄積した金属の細胞内局在と毒性影響との関係

このへんの論文と関係ある話。体内の全蓄積量よりも、解毒された量を除いた画分の量の方が、毒性影響に関係しているのではないかという話。

 

二枚貝におけるCd・Znの細胞内局在:MSFとBDMの重要性

Wallace WG, Lee BG, Luoma SN. 2003. Subcellular compartmentalization of Cd and Zn in two bivalves. I. Significance of metal-sensitive fractions (MSF) and biologically detoxified metal (BDM). Marine Ecol Prog Ser 249, 183-197. 

この分野で古典になっている論文。体内金属の分画手法が多く引用されてます。オルガネラとheat denaturable protein(下図のNon-MTLP)の合計であるMSF(metal-sensitive fraction)が、毒性を引き起こす金属画分として挙げられているけど、その画分が毒性とリンクしていることの証拠は特にこの論文にはない。もっと遡る必要あり。

f:id:Kyoshiro1225:20171007175945p:plain

 

「オオミジンコの細胞内亜鉛分布とその毒性への関連

Wang WX,  Guan R. 2010. Subcellular distribution of zinc in Daphnia magna and implication for toxicity. Environ Toxicol Chem, 29 (8), 1841-1848.

オオミジンコの亜鉛MSFを測定し、48h急性致死との関係を調べた論文。亜鉛の曝露濃度を増してもMSFはきれいに増えない。むしろcelluar debris画分(細胞膜など)が曝露濃度に対応して増える。この論文では、MSFはオオミジンコの急性毒性の指標にはならない、と結論づけてますが、cellular debrisが毒性の指標になるかも、という方向性は考えられないのかな。あと、甲殻類の場合、殻に含まれる画分はどこに分類されるんでしょう?元ネタのWallaceら(2003)は二枚貝だし…。あと急性毒性は、解毒とかほとんど関係なさそうなので細胞内局在を指標にすることの効果は薄いのかも。

この論文は4日~14日の曝露も実施していて、その時のZnの大部分はCellular debris画分ではなく、オルガネラとメタロチオネインなどのheat-stable proteins画分に移行していました。このことから、急性と慢性では毒性のメカニズムが違うのかと思ったけど、どうなんでしょ。

  

「カキC. hongkongensis亜鉛感受性の地域差

Liu F, Rainbow PS, Wang WX. 2013. Inter-site differences of zinc susceptibility of the oyster Crassostrea hongkongensis. Aquatic Toxicol, 132, 26-33.

MSFの方が全蓄積量より、致死毒性の予測に適しているという話。けどその根拠が適切なのかは良く分からないです。MSFと致死を対数線形回帰しているけど…。

 

「2種のヨコエビにおけるCdの摂取速度と細胞内局在は致死影響を説明できるが…

Jakob L, Bedulina DS, Axenov-Gribanov DV, Ginzburg M, Shatilina ZM, Lubyaga Y A, Madyarova EV, Gurkov AN, Timofeyev MA, Pörtner HO, Sartoris FJ,  Altenburger R, Luckenbach T. 2017. Uptake kinetics and subcellular compartmentalization explain lethal but not sublethal effects of cadmium in two closely related amphipod species. Environ Sci Technol, 51, 7208-7218.

あとで読む。

精読はしてません。同属だがサイズが10倍以上異なる2種のヨコエビをCdに4週曝露させて、感受性・摂取速度・MSF蓄積量などを比較した論文。体の大きいE. verrucosusの方が感受性が低く、代謝率が低いせいかな、という話。

同じ影響レベル(LC1)の曝露時は、2種のMSF濃度がほぼ同じというCampanaら(2015)と似たような結果を示してます。

 

ヨコエビの金属細胞内局在を調べる手法の比較

Geffard A, Sartelet H, Garric J, Biagianti-Risbourg S, Delahaut L, Geffard O. 2010. Subcellular compartmentalization of cadmium, nickel, and lead in Gammarus fossarum: comparison of methods. Chemosphere 78 (7), 822-829. 

体内の細胞質基質cytosolに蓄積した金属のうち、MTLP(メタロチオネイン様タンパク質; metallothionein-like protein)とnon-MTLPに分画する手法には主に、加熱時に安定している画分をとMTLPとみなす手法と、サイズ分画する手法との2つがあります。その2つの手法を比較した論文。

手法の差は大きいという結果。例えば熱処理法ではCdのMTLP画分>non-MTLPなのに、サイズ分画法では逆転している、など。考察によると、加熱処理後にheat sensitive proteins(=non-MTLP)が金属と錯体を形成してしまうためではないかとのことです。つまり熱処理法ではnon-MTLP量を過小評価しているみたいです。

 

 

論文のメモ: 侵略的外来種なヨコエビの話

「侵略的ヨコエビになる方法:生活史形質の比較

Grabowski M, Bacela K, Konopacka A. 2007. How to be an invasive gammarid (Amphipoda: Gammaroidea)–comparison of life history traits. Hydrobiologia 590(1), 75-84.

ヨーロッパにおける旧ヨコエビ亜目を在来種・外来種に分けて、その生活史形質を比較した総説的な論文。Breeding female sizeやBrood size(一回当たりの産仔数)、繁殖期の長さなど。外来種で継続的な繁殖に成功している種は、brood sizeが大きかったりや人為汚染に対する耐性が高かったりする傾向にあるとのことです。

ただ、考察に書いてあるけど、例えばこの論文で在来種扱いだったG . pulexアイルランドでは侵略種と考えられているそうで、話はそれほど単純ではなさそう。あと、捕食(or 被食)様式はこの論文で解析の対象ではないけど、やはり重要だろうとのこと。

 

 

「非在来種ニホンドロソコエビの北米太平洋個体群における地理分布と隠蔽遺伝的多様性

Pilgrim EM, Blum MJ, Reusser DA, Lee H, Darling JA. 2013. Geographic range and structure of cryptic genetic diversity among Pacific North American populations of the non-native amphipod Grandidierella japonica. Biol Invasions 15(11), 2415-2428.

日本では在来種であるニホンドロソコエビ。人間活動によって他国へ持ち込まれ、そこでは侵略的外来種として認識されてます。ミトコンドリアCOI領域607bpを読んで、個体群の遺伝的構造を調べてます。

北米太平洋側海岸で、2つの集団に分かれているとのこと。各集団内での遺伝的多様性は低いので、ニホンドロソコエビが持ち込まれたのは数回だとみなされてます。2つの集団間の差異は異種間並みに大きいそうです。ヨコエビは隠蔽種の話をよく聞く気が…。 

 

論文のメモ: 環境毒性分野での遺伝子発現データと機械学習

マイクロアレイやRNA-seqの遺伝子発現データから、機械学習を使って情報を引き出す話。例えば、発がん性物質に曝露したデータと曝露してないデータを与えて、発がん性の有無を識別できる遺伝子(バイオマーカー)を探索する研究などがあるかと思います。昔このブログでも、SVM (Support Vector Machine) をマイクロアレイデータ解析に適用した論文を紹介しました(これ)。

 

 

「汚染物質を分別する遺伝子バイオマーカーの探索

Wei X, Ai J, Deng Y, Guan X, Johnson DR, Ang CY,  Zhang C, Perkins EJ. 2014. Identification of biomarkers that distinguish chemical contaminants based on gene expression profiles. BMC Genomics 15 (1), 248.

ラットの肝細胞 (hepatocyte) を105種の物質に24h曝露させて、マイクロアレイ解析した論文。論文の目的は、発現プロファルを基にした機械学習で105物質を14クラス(コントロール・antimicrobial・cancer-related drugs・metals・pesticides・PPCPsなど)に分けられるかどうかの検証と、クラスを分類するバイオマーカー遺伝子の探索。各物質、最低3回以上のアレイ解析をしてます。曝露濃度はLC50の半分で一定。

分類アルゴリズムは決定木・ナイーブベイズ・ロジスティック回帰・SVM・ランダムフォレストを使用、特徴選択 (feature selection) は7種試してます。この特徴選択によってモデルの正確さが大きく変わるというのが、一つの主眼っぽい*1最終的にgradientという新しい特徴選択の手法提案し、それとSVMの組み合わせで訓練・テストデータともにaccuracyは80%前後。

化学物質のクラスを分類するという目的が面白そうだったけど、細部が少し雑な感じの論文でした。

 

「ミミズのマイクロアレイデータから分類子となる遺伝子を同定する

Li Y, Wang N., Perkins EJ, Zhang C, Gong P. 2010. Identification and optimization of classifier genes from multi-class earthworm microarray dataset. PloS One 5 (10), e13715.

上の論文と著者の一部は同じ。

 TNTRDXにミミズを曝露させて、control・TNTRDXを識別できるバイオマーカーの探索を、SVMクラスタリングを通じておこなおうという論文です。

上の論文もそうだけど、統計的な手法で探し出されたマーカー遺伝子は、この論文の後に検証されているのでしょうか。投げっぱなし感が強い。まあでも、この論文は曝露を繰り返したり、濃度区も5~6つ設定しているので良心的かもしれません。

 

「土壌中金属を識別する遺伝子セットを遺伝子発現解析によって明らかにする

Nota B, Verweij RA, Molenaar D, Ylstra B, van Straalen NM, Roelofs D. 2010. Gene expression analysis reveals a gene set discriminatory to different metals in soil. Toxicol Sci 115 (1), 34-40.

トビムシ (springtail) のマイクロアレイデータから金属6種 (Ba・Cd・Co・Cr・Pb・Zn) を識別できる遺伝子セットを探した論文。非相関収縮重心法(Uncorrelated Shrunken Centroid)法なるアルゴリズムを使用。ちゃんとは読んでない。

 

ピレスロイド系殺虫剤に対するomicsベースの曝露バイオマーカーセット

Biales AD, Kostich MS, Batt AL, See MJ, Flick RW, Gordon DA, Bencic DC. 2016. Initial development of a multigene ‘omics-based exposure biomarker for pyrethroid pesticides. Aquatic Toxicol 179, 27-35.

ファットヘッドミノー (Pimephales promelas) の幼体をピレスロイド系殺虫剤4種に曝露させてアレイ解析した論文。再現性に気を配っていて、複数濃度区で曝露させたり(phase I)、同一条件曝露を3回繰り返したり(phase II)してます。Randomforestで、遺伝子発現からどの農薬曝露かを識別するモデルを作成。

実験のrunが異なると識別精度が落ちてしまうが、アレイデータのノーマライズによってある程度精度向上するという結果。Cypermethrinがテストデータの場合、特に精度が悪い。謎なのは、なぜone-vs-oneの分類器(合ってるかな?)なのかという点。4種の殺虫剤のうちどれかを当てる分類器にしないのは何故。あと殺虫剤のTypeごとに分けるとか。自分が理解できてないだけかな?

あと文章が冗長。

 

 

*1:データ解析の元ネタはPirooznia et al., 2008, BMC Genomics

第23回環境毒性学会@東洋大

参加してきました。

面白い発表もあり、自分のポスターでも多くの人と深い議論ができて充実感がありました。ただあんな成果0の発表で賞をいただいて、申し訳ないです…。最後の海洋汚染に関するシンポジウムは所要のため参加できませんでした。

 

増えすぎても困るけど、あともう少しだけプレイヤーの数が増えて欲しいです。普及活動も頑張らねば。うちの研究室の学生も誘ったけど、結局誰も参加しなかったし…。自分が今後やりたいバイオインフォ的な研究とこれまで関わってきた底質毒性の研究は、どちらもそれに従事する人を増やさないと進展しない気がしてきました。一人で研究する限界をようやく感じ始めたところです。まずは初学者に向けて日本語で論文書こうかな。

新モンスターになって欲しかった人 @フリスタダンジョン

フリースタイルダンジョン。2代目モンスターがようやく全員発表されましたね。

 

2代目もバランスの取れた良いメンバーだと思いますが*1、もう少し幅のある人選を期待してました。初代は漢とかサイプレス上野とか、楽曲面や人望?で既にプロップスを得てる人が居て良かった。

 

 

発表された後だけど、新モンスターについて希望してたこと書いてみます。

個人的にモンスターに欲しかった人1位は、板橋区の生き字引ことPunpee。「水曜日のダウンタウン」のテーマソングでもおなじみ。MCバトルでの実績はUMB2006東京予選優勝くらいかもしれませんが、HipHop好き(とサブカル好き?)からのプロップスは間違いないでしょう。キャラも立ってるし、あの楽しんでる感じが良い。人としてのスケールのデカさみたいなのをなんとなく感じさせますよね。二代目はコワモテな人多いし、そういう意味でもNERD代表としてP様は良い。

あとは鎮座DOPENESSZorn*2。このあたりはYoutubeのコメント欄を見る限り、ダンジョン観てる人からも強く支持されてるっぽいです。

皆、今はもうバトルしてないし、スポーツ化したMCバトルでは正直そこまで勝てないだろうけど、こういう既に実績ある人がモンスターに入るだけで「格」が違うと思うんですよね。

まあでも、全員オファーあっても断りそう。実際鎮さんはチャレンジャーとしてのオファー断ってたっていう話どこかで読んだし…。

 

 

しかし、「もうMCバトルは面白くなくなるだろ」と毎度のように思ってるけど、ずっと面白い。中々観るのを辞められない。UMB2014でR-指定が三連覇した時には「もうこれ以上のバトルは見れないだろうな」と思ったけど(特にDOTAMA戦)、全然そんなことなかったです。焚巻vs般若、晋平太vs漢、ニガリvsT-Pablow@高校生ラップ選手権、あとダンジョンでのT-Pablowの成長とか、文脈込みの面白さもあるけど、名勝負は中々尽きません。

 

(追記 2017.09.05)

第12回高校生ラップ選手権もざっと観ました。第10回を境に盛り下がってきたかなと思ってたら、Red Eye最高。この先楽しみすぎる。

*1:偉そうですみません…。

*2:あとBESが全盛期のままだったら欲しかったけど。