備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

「乱交の生物学 -精子競争と性的葛藤の進化史-」感想

電車で読みづらい書名。原題は"Promiscuity"という語で、一般には乱婚と訳されるそうです。

 

"オシドリ夫婦"のオシドリは実は全く一雌一雄ではないというのは有名な雑学ですが、オシドリだけでなく自然界の多くの種は一雄多雌や一雌多雄であり、一雌一雄は例外的です。つがいを形成する鳥類などのように社会的に一雌一雄な種であっても、性的に一雌一雄ではないこともあります。

 

本書は、なぜ生物が乱交である(=複数の個体と交尾している)のか、乱交であるときに何が生じているのかについて、進化学および生理学・解剖学の観点から述べた本です。雄が乱交であることは比較的広く受け入れられているので、本書は雌の乱交、一匹の雌が多くの雄と交尾することに特に焦点を当てています。「雌は出産や育児にかかるコストがかかる場合が多いため、複数の雄と交尾しても産める子どもの数に限りがあるのに、なぜ乱交なのか?」

全7章あるうち3~5章は生殖器・性細胞の構造や仕組みに充てられていて、これらの章は特に雑学的な面白さがあります。昆虫の中には何年も生死を貯蔵できる種がいるとか(p. 105)、雌が乱交であり精子競争が激しい種では体重に対する相対睾丸サイズが大きいとか(p. 122)、雄の副生殖腺からの分泌物は、交尾後に雌の膣内に交尾栓を形成し、後に別の雄が精子注入するのを妨げたり(p. 138)、雌の寿命を縮めたりするとか(p. 194)、ヒラムシの中には陰茎を何十種も持つものがいるとか(p. 146)、トコジラミの雄は鎌状の器官を用いて雌の体壁を貫いて精液を注入するとか(p. 210)。

と言っても、本書は面白エピソードを羅列しただけの雑学本ではありません。豊富なエピソードは、なぜ乱交であるのか、どのようにして乱交になっているのか、という問いを様々な観点から検証するためのものであり、割と体系的に書かれている印象です。

 

一貫しているのは、生物は利己的であり己の遺伝子の存続が最重要課題であるということ。そのため、雌雄関係は必ずしも協力関係ではなく、対立関係であることも多くなります。本書の副題にもなっている性的葛藤(sexual conflict)ですね。

雌が乱交である理由も、利己性の観点から説明できます。例えば遺伝子の和合性の課題。どの雄の精子が自身の卵と適合するのか外見からは判断できないので、雌は多くの雄と交尾します。

乱交である理由は、複数の雄に子どもを養育してもらうためであるとも説明されています。2匹の雄と交尾して、どちらの雄にも自分の子どもである可能性を感じさせ、養育に参加させるわけです。特に資源の不足しており親の力が必要な環境下では、このような戦略が発達するみたいです。

 

本書の主眼ではないけれど、雌が乱交である事実が、男性中心だった科学の世界でなかなか受け入れられなかったというのは面白い。純粋な、客観的な科学の世界の話に見えても、当時の社会的文化的な制約を受けているものですね。

 

乱交の生物学―精子競争と性的葛藤の進化史

乱交の生物学―精子競争と性的葛藤の進化史

 

 

某誌での査読

某環境系の学術誌に論文投稿して先日受理されました。Major revisionで修正した原稿を返したら、その当日に受理になりました。

5人も査読者がいたので査読対応のコメントだけで20ページにも及ぶ力作を送ったのに、ほぼ読まれてないだろうなー。自分が編集者だったら、確かに面倒くさいし時間もかかるので気持ちは分かりますが、ちょっとむなしい気もします。

 

査読のハードルを下げて論文をどんどん出していこうという傾向が、自分の分野でもあるんでしょうか。個人的にはその方針に賛成ですし、出版後査読も歓迎ですが、正直に査読する人が損しないようにはして欲しいです。

論文のメモ: オオミジンコの遺伝的多様性と感受性

「オオミジンコの遺伝的多様性と生態毒性学的評価

Picado A., Chankova S., Fernandes A., Simões F, Leverett D, Johnson I, Hernan R, Pires AM, Matos J, 2007, Genetic variability in Daphnia magna and ecotoxicological evaluation, Ecotoxicol. Environ. Saf. 67 (3): 406–410. https://doi.org/10.1016/j.ecoenv.2006.10.004.

OECDやISOによって(オオ)ミジンコを用いた毒性試験が標準化されていますが、どの系統を使用するかについては定められていません。しかし系統によって感受性が異なることが知られています。そこで、その差が遺伝子の多型によるものなのかを調べた論文。

多型の評価にRAPD(random molecular typing technique)を使用していて、前時代感あり。ヨーロッパのラボの7集団における19座位をRAPDで調べて、硫酸亜鉛、二クロム酸カリウム、排水試料の急性毒性値との関連を比較しています。硫酸亜鉛と二クロム酸カリウムについてはほぼ差が生じてませんが、排水についてはEC50に10倍以上の差が検出されてます。ただ、RAPDの結果との明確な関連は見つけられなかったみたいです。

まあランダムな変異じゃなくてターゲットで見た方が良さそう。

 

 「エチルパラチオンに対するオオミジンコの感受性に寄与する生化学的要因

Barata C, Baird DJ, Soares AMVM, Guilhermino L, 2001, Biochemical factors contributing to response variation among resistant and sensitive clones of Daphnia magna Straus exposed to ethyl parathion, Ecotoxicol. Environ. Saf. 49(2): 155-163.

上の論文よりはかなりしっかりしてます。3つのラボ系統と2つの野外系統で、エチルパラチオンに対する感受性の違いを調べた論文。in vivoの毒性試験だけでなく、ミジンコの破砕液を使ってin vitroのAChEの活性試験も実施してます。

in vivoのEC50では3倍以上の差が見られたのに、in vitroのAChE活性ではほぼ差が見られなかったという結果。AChE活性ではなく、エチルパラチオンの代謝など他の活性の違いで決まったのでは、との考察。

 

 「オオミジンコのCd耐性はhsp70の発現

Haap T, Köhler HR, 2009, Cadmium tolerance in seven Daphnia magna clones is associated with reduced hsp70 baseline levels and induction, Aquatic Toxicol., 94(2): 131-137.

7つの系統でCdの急性毒性値とヒートショックプロテイン70 (hsp70) の発現との関連をしらべた論文。感受性が高い系統ほど、hsp70の発現量が低かったとのこと。ただ体内Cd蓄積量とhsp70発現量との間に関連は見られなかったそうです。

せっかくきれいな実験をしているので、他の酵素の反応も見てみたい…。メタロチオネインとか。考察にはいろいろ書かれていますが。

 

 「複数のオオミジンコ系統を用いた急性毒性感受性の比較研究

Baird DJ, Barber I, Bradley M, Soares AM, Calow P, 1991, A comparative study of genotype sensitivity to acute toxic stress using clones of Daphnia magna Straus. Ecotoxicol. Environ. Saf. 21(3): 257-265.

この話題で良く引用されている論文。ちゃんと読んでない。

 

 

 

以下は、野外集団の系統地理に関する論文。地域間のオオミジンコの遺伝的距離の大きさはこれらを読めば良い、はず。とりあえずメモ。

De Gelas K, De Meester L, 2005, Phylogeography of Daphnia magna in Europe, Molecular Ecol, 14(3), 753-764.

ミトコンドリアのシトクロームCオキシダーゼサブユニットI(COI)609 bpを読んでます。日本のラボ系統も含まれてます。これもちゃんと読んでない。プライマーはFolmer et al., 1994のLCO1490とHC02198。

 

Bekker EI, Karabanov DP, Galimov YR, Haag CR, Neretina TV, Kotov AA, 2018, Phylogeography of Daphnia magna Straus (Crustacea: Cladocera) in Northern Eurasia: Evidence for a deep longitudinal split between mitochondrial lineages, PloS One, 13(3), e0194045.

COI以外にも16S rDNA、18S rDNAやHSP90などを読んでますが、解析はCOIのみで実施。ロシアあたりの野外集団中心。 

論文のメモ: 分配係数と固液比

固相-液相間でのある汚染物質の分配を考えたいとします。固相Sは例えば底質とかで、液相Lはそれに接している水とかです。平衡状態にあるならば、一般に次の式が成り立ちます。

K_d = \frac{C_S}{C_L}

C_Sは固相に吸着した物質の濃度、C_Lは液相中の濃度です。平衡状態なら、この比率、すなわちK_dは実験条件によらず一定と考えられます。

 

しかし実験してると、K_dが条件によって変わっていることに気づきました。

固相の割合が多くなるとK_dが小さくなる、つまりC_Sが減り、C_Lが増える傾向にありました。

 

でも実はすごい単純な話かも。

固相が増えると、それに応じてDOCとかコロイドが増えて、汚染物質がそれらに取り込まれるので、見かけのK_dが小さくなるわけです。 式にすると下のようなもの。

K_d = \frac{C_S}{C_L'} =\frac{C_S}{C_L+C_{DOC}+C_{Colloid} }

 

Solid concentration effectと名づけられてもいます。例えば以下の総説。

Di Toro DM et al., 1991, Technical basis for establishing sediment quality criteria for nonionic organic chemicals using equilibrium partitioning, Environ Toxicol Chem 10: 1541-1583.
Limousin G, Gaudet JP, Charlet L, Szenknect S, Barthès V, Krimissa M, 2007, Sorption isotherms: A review on physical bases, modeling and measurement, Appl Geochem 22, 249–275.

 Di Toro(1991)は、コロイドの影響では説明できない場合もあるとか書いてますが…。

 

 

STRINGdbを用いたPPIネットワーク解析 その2: DEG解析など

前回の続き。今回は、STRINGdbから得たPPI networkの情報を、DEG解析(Differentially Expressed Genes)の結果と絡める方法について書きます。

 

前回までの話

ゼブラフィッシュのPPI networkをSTRINGdbから取得します。例えばこんな感じのデータ。 

> full.graph
IGRAPH a1f4259 UN-- 23369 9145627 --
+ attr: name (v/c), neighborhood (e/n), neighborhood_transferred (e/n), fusion (e/n),
| cooccurence (e/n), homology (e/n), coexpression (e/n), coexpression_transferred (e/n),
| experiments (e/n), experiments_transferred (e/n), database (e/n), database_transferred
| (e/n), textmining (e/n), textmining_transferred (e/n), combined_score (e/n)
+ edges from a1f4259 (vertex names):
[1] 7955.ENSDARP00000000004--7955.ENSDARP00000051551 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000023805
[3] 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000023951 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000024039
[5] 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000024056 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000024217
[7] 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000024581 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000024929
[9] 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000025540 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000026031
+ ... omitted several edges

 

タンパク質名の変換 

STRINGでは上記の通り、"ENSDARP00000000004"のようなEnsembleのタンパク質名で表現されています。けれどDEG解析をした場合など、手元にあるのは遺伝子名や転写産物名のリストであることも多いでしょう。その場合、名称を変更する必要があります。

STRINGにはalias情報が入っているので、容易に変更できます。

まずalias情報を取りだします。

Ali <- string_db$get_aliases()

> head(Ali)
STRING_id alias
1 7955.ENSDARP00000003766 plek
2 7955.ENSDARP00000035258 tesca
3 7955.ENSDARP00000045815 plg
4 7955.ENSDARP00000076522 gsc
5 7955.ENSDARP00000117101 aftpha
6 7955.ENSDARP00000126089 SEPT12

 

DEG解析の結果、下の6つの遺伝子が得られ、これらの遺伝子がPPI netowkrのどこに位置するのかを調べたいとします。

Gene <- c("pik3r3a","arap1a","UBL4B","yes1","hsp90ab1","zgc:158404")

matchコマンドを使って、Geneとaliasなタンパク質を探します。 

> Gene2 <-Ali[match(Gene,Ali$alias),]

> Gene2
STRING_id alias
17386 7955.ENSDARP00000106632 pik3r3a
NA <NA> <NA>
833 7955.ENSDARP00000009190 UBL4B
879 7955.ENSDARP00000009659 yes1
1461 7955.ENSDARP00000014978 hsp90ab1
12133 7955.ENSDARP00000093251 zgc:158404

 大方の遺伝子はaliasが見つかってますが、2つ目は見つかっていません。aliasが見つからない場合は、遺伝子名ではなく例えばensembleのid(ENSDARG....)に変換してから探すと良いかも。

(2021.01追記) 例えばRならbiomaRtパッケージのgetBMでensembl gene idからensembl protein idに変換できます。

 

 

ネットワークの描画

V(full.graph)$ color <- ifelse ( is.na(match(V(full.graph)$name, Gene2$STRING_id)), "green", "tomato" )

Geneの6遺伝子とaliasであるタンパク質はトマト色、それ以外の遺伝子は緑色で示すことにします。

そして前回と同様にigraphパッケージで描画します。

top.vertices <- names( tail(sort(degree(full.graph)), 50) )

top.subgraph <- induced_subgraph(full.graph, top.vertices)
plot(top.subgraph,vertex.label=NA,vertex.size=10)

f:id:Kyoshiro1225:20190203222619p:plain

"Gene"リストに含まれていたタンパク質は赤色で表示されています。

このあとは、例えばenrichment解析などに進みます。

 

 

STRINGdbを用いたPPIネットワーク解析

タンパク質間相互作用 (protein-protein interaction; PPI) のデータベースであるSTRING (Search Tool for the Retrieval of Interacting Genes/Proteins)。以下は、そのデータを使ってRでネットワーク解析してみた個人的な備忘録です。大部分は"STRINGdb Package Vignette (15 March 2015)"に依拠してます。

 

まずSTRINGdbをインストールする

BioconductorからSTRINGdbをインストール。

if (!requireNamespace("BiocManager", quietly = TRUE))
install.packages("BiocManager")
BiocManager::install("STRINGdb", version = "3.8")

 これはver 3.5以上のRの場合。それ以前の場合は知りません。

 

 

まず特定の生物種のPPI network情報をゲット

 PPI network情報をロードします。ここではzebrafish (Danio rerio; taxid = 7955) を対象にします。

library(STRINGdb)
string_db <- STRINGdb$new (version="10", species=7955,
score_threshold=0, input_directory="" )   

コマンド中のversion=10はSTRINGのversionを示し、7955はzebrafishのtaxidを示しています。score_thresholdは、ロードするタンパク質相互作用のスコア下限です。STRINGではタンパク質間の関係をcombined scoreなる指標で表現しているそうですが(参考:FAQ)、ここでは指定したcombined score未満のPPIはロードしません。デフォルト値は400だそうです。

 

次にネットワークとして表現します。下のコマンドでグラフ形式に変換?できます。

full.graph <- string_db$get_graph()  

 

full.graphの中身を見ると、こんな感じ。23,369の頂点verticesと9,145,627の辺edgesが含まれています。

> full.graph
IGRAPH d850ca6 UN-- 23369 9145627 --
+ attr: name (v/c), neighborhood (e/n), neighborhood_transferred
| (e/n), fusion (e/n), cooccurence (e/n), homology (e/n),
| coexpression (e/n), coexpression_transferred (e/n), experiments
| (e/n), experiments_transferred (e/n), database (e/n),
| database_transferred (e/n), textmining (e/n),
| textmining_transferred (e/n), combined_score (e/n)
+ edges from d850ca6 (vertex names):
[1] 7955.ENSDARP00000000004--7955.ENSDARP00000051551
[2] 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000023805
[3] 7955.ENSDARP00000000192--7955.ENSDARP00000023951
+ ... omitted several edges

attrはfull.graphの属性のことで、()内にvとあるのが頂点に関するもの、eとあるのが辺に関する属性です。()内にcとあるのが文字characterで表現された属性、nは数値numericで表された属性。例えばnameは文字で表現された頂点に関する属性。

属性は下のようなコマンドで取り出せます。

V(full.graph)$name

 

 

  

igraphパッケージで描画

全部を描くと大変なので、次数の大きい頂点トップ50個を選びます。

top.vertices <- names( tail(sort(degree(full.graph)), 50) )

top.subgraph <- induced_subgraph(full.graph, top.vertices)

 

 

plot(top.subgraph,vertex.label=NA,vertex.size=10)

f:id:Kyoshiro1225:20190202152636p:plain 

同じネットワーク図を、STRING独自のスタイルで描画することもできます。

string_db$plot_network(V(top.subgraph)$name)

f:id:Kyoshiro1225:20190202153046p:plain 

STRING形式の図は、カラフルで色んな情報が含まれてます。これはブラウザ上でSTRINGを利用した際にも見ることが出来ます。

ただ少し複雑すぎるので、注目したい情報だけ取り出して描画してみます。

 

例えば、STRINGの相互作用情報にはcooccurenceがあります。ネットワークの辺の太さをcooccurenceの程度によって変えてみます。※単なる描画の練習で、生物学的な意味は考慮していません。

E(top.subgraph)$width <- log10( E(top.subgraph)$cooccurence )

plot(top.subgraph,vertex.label=NA,vertex.size=10)

f:id:Kyoshiro1225:20190202154453p:plain

同じ要領でV(top.subgraph)$colorによって色を変えたり、E(top.subgraph)$ltyで辺の実線・点線を変えたりできます。

 

 

 

応用編: アノテーション

STRINGdbパッケージでは、get_annotations()でGO (Gene Ontology) やKEGG pathwayなどタンパク質のアノテーションを得ることもできます。

 Annotation <- string_db$get_annotations()

> head(Annotation)

STRING_id term_id category type
1 7955.ENSDARP00000000004 GO:0006810 Process IEA
2 7955.ENSDARP00000000004 GO:0006811 Process IEA
3 7955.ENSDARP00000000004 GO:0006812 Process IEA
4 7955.ENSDARP00000000004 GO:0006818 Process IEA
5 7955.ENSDARP00000000004 GO:0008150 Process IEA
6 7955.ENSDARP00000000004 GO:0008643 Process IEA

また、enrichment解析もできるそうです。例えば↓。 

test<-string_db$get_enrichment(top.verticies)

 

> head(test)
term_id proteins hits pvalue pvalue_fdr term_description
1 GO:0044267 434 10 1.542945e-17 6.403222e-15 cellular protein metabolic process
2 GO:0019538 478 10 4.085650e-17 8.477723e-15 protein metabolic process
3 GO:0006468 71 7 2.615610e-16 3.618260e-14 protein phosphorylation
4 GO:0006950 190 8 1.080273e-15 1.120783e-13 response to stress
5 GO:0016310 116 7 9.115423e-15 7.565801e-13 phosphorylation
6 GO:0038083 4 4 1.690731e-14 1.169423e-12 peptidyl-tyrosine autophosphorylatio

 

 

応用編: クラスタリング

STRINGdbパッケージでは、get_clusters()でクラスタリング解析もできます。

clustersList <- string_db$get_clusters( V(top.subgraph)$name, algorithm="fastgreedy")

クラスタリングアルゴリズムは、fastgreedy、walktrap、spinglass、edge.betweennessの4種類から選べます。

> clustersList
1
[1] "7955.ENSDARP00000009659" "7955.ENSDARP00000011298" "7955.ENSDARP00000019813"
[4] "7955.ENSDARP00000020408" "7955.ENSDARP00000021095" "7955.ENSDARP00000034350"
[7] "7955.ENSDARP00000035686" "7955.ENSDARP00000037198" "7955.ENSDARP00000040361"
[10] "7955.ENSDARP00000060744" "7955.ENSDARP00000064110" "7955.ENSDARP00000069405"
[13] "7955.ENSDARP00000075784" "7955.ENSDARP00000076407" "7955.ENSDARP00000087028"
[16] "7955.ENSDARP00000087454" "7955.ENSDARP00000089879" "7955.ENSDARP00000093618"
[19] "7955.ENSDARP00000107110" "7955.ENSDARP00000107491" "7955.ENSDARP00000107646"
[22] "7955.ENSDARP00000111940" "7955.ENSDARP00000112153" "7955.ENSDARP00000123746"
[25] "7955.ENSDARP00000123888"

2
[1] "7955.ENSDARP00000009190" "7955.ENSDARP00000013441" "7955.ENSDARP00000014978"
[4] "7955.ENSDARP00000018692" "7955.ENSDARP00000022302" "7955.ENSDARP00000023119"
[7] "7955.ENSDARP00000026065" "7955.ENSDARP00000027785" "7955.ENSDARP00000032448"
[10] "7955.ENSDARP00000035728" "7955.ENSDARP00000038550" "7955.ENSDARP00000040644"
[13] "7955.ENSDARP00000053431" "7955.ENSDARP00000054986" "7955.ENSDARP00000058736"
[16] "7955.ENSDARP00000084288" "7955.ENSDARP00000084961" "7955.ENSDARP00000088354"
[19] "7955.ENSDARP00000094521" "7955.ENSDARP00000096950" "7955.ENSDARP00000103480"
[22] "7955.ENSDARP00000109027" "7955.ENSDARP00000109720" "7955.ENSDARP00000118902"
[25] "7955.ENSDARP00000119429"

 

 Cluster 1に含まれる頂点25個を緑、Cluster 2のものをトマト色で描画します。

V(top.subgraph)$ color <- ifelse ( is.na(match(V(top.subgraph)$name, clustersList1)), "green", "tomato" )
plot(top.subgraph,vertex.label=NA,vertex.size=10)

f:id:Kyoshiro1225:20190217212344p:plain

 

上記はSTRINGdb内の関数を使用しましたが、igraphパッケージの関数を使用して同様のクラスタリングをおこなうことも可能です。

clusters <- cluster_fast_greedy(top.subgraph)

plot(clusters,top.subgraph,vertex.label=NA,vertex.size=10)

f:id:Kyoshiro1225:20190217222039p:plain

 

 

 

 

論文のメモ: 複合影響の理解に向けたシステム毒性学

Spurgeon DJ, Jones OA, Dorne JLC, Svendsen C, Swain S, Stürzenbaum SR, 2010, Systems toxicology approaches for understanding the joint effects of environmental chemical mixtures, Sci Total Environ 408(18), 3725-3734.

レビュー論文。少し古いけど見逃していたので、メモ。

異なる化学物質間の相互作用は、3つのパターンがある。1) 生体外での相互作用、2) 化学物質の取り込み・排出に関する相互作用、3) 毒性の生じる部位での相互作用。2)をToxicokinetics、3)をToxicodynamicsと呼んでます。これらを明確に区別せずに複合影響の議論をしている論文は意外とある気がします。でも2)と3)の違いは微妙な場合もあるかな?

2)のToxicokineticsは、例えば、ある化学物質への曝露によって生物膜の透過性や摂餌速度が変わり他の物質の取り込み量が変化するとか、曝露によって解毒酵素の活性が変わる、とか。

 

 

論文のメモ: RNAの分解度評価 ~Transcript Integrity Number~

RNA-Seqデータの特性評価のためのシンプルなガイドライン

Son K., Yu S., Shin W., Han K., Kang K., 2018, A Simple Guideline to Assess the Characteristics of RNA-Seq Data, BioMed Research International, Article ID 2906292.

RNA-Seqのデータは、リードカウントとTIN(Transcript Integrity Number)のPCAプロットを描いて簡単に評価したほうが良いよ、という提言。処理群を代表しないサンプルを含めてDEG解析すると結果が変わってしまうから、PCAプロットでそのようなサンプルを可視化しようということですが、そのサンプルを除外すべきかどうかは明言なし。そもそもサンプル除外の効果があるのはreplicatesが2~3と少ない場合ですが、その少ないreplicatesからどういう基準でサンプルを除外するのか。

そんな感じで中々のHindawiクオリティですが、この論文のおかげでTINを知ったのでここにメモ。あと、reference genes単独での分解度を見ても不十分で、TINのように複数の遺伝子をまたいで評価するのが大事ということもigvの図から分かります。

 

RNA-Seqデータを用いて転写物の非分解度を測る

Wang, L., Nie, J., Sicotte, H., Li, Y., Eckel-Passow, J. E., Dasari, S., Vedell P.T., Barman P., Wang L., Weinshiboum R., Jen J., Huang H., Kohli M., Kocher J.P.A., 2016, Measure transcript integrity using RNA-seq data, BMC Bioinformatics, 17(1), 58.

TINを提案した論文。TINは、転写産物にどれだけ均一にリードがマッピングされたかを表す指標のようす。Total RNA電気泳動して得られるRIN(RNA Integrity Number)との比較もあり。

TINの計算はpythonRSeQCパッケージでできます。

「パパは脳研究者 -子どもを育てる脳科学- 」感想

帰省中に読了。

昔「単純な脳、複雑な『私』」を読んでから(「単純な脳、複雑な『私』」感想)、この著者のファンです。著者のTwitterからも分かりますが、自身の研究の直近だけでなく、ちょっと遠い研究の面白ばなしも意識的に収集してるんでしょうね。そんな幅広い知見収集の跡がうかがえる本です。「単純な脳、複雑な『私』」よりだいぶ軽いけど。

 

ここ数年、赤ちゃん関連の映像や話を観たり読んだりするとほぼ無条件で泣いてしまいます。本書でも何度も涙ぐみました。感動的エピソードが盛りだくさん、という訳では別になく、科学的な知見を交えて淡々と娘さんとの日常を語っている本なので、我ながらヤバいヤツだと思いながら…。

 

面白かった箇所をいくつか。

  • 尿意と睡魔は赤ちゃんにとって不快な感覚。大人がそれらを快く感じるのは、尿意とまどろみの後の気持ち良い感覚を先読みしているから(p. 48)。
  • 胎児は、母親のお腹の中から音楽を聴いて脳回路に記憶させている(p.55, 元ネタはPartanen et al., 2013, Plos One)。
  • 幼い子は正確な記憶しかできないが、大人になっていくにつれ曖昧な記憶ができるようになっていく。これは進化の過程をなぞるような変化である。例えばトリは正確な記憶しかできない(p. 99)。
  • 2歳ころの子どもの記憶には偽の記憶が含まれていることが一般的(p. 159, Conway and Pleydell-Pearce, 2000, Psychological Review)。
  • 褒め方の難しさ。絵を描いた子どもを褒めると、絵を描くことへの興味を失うことがある。子どもは褒められ続けると「絵を描くことが好きだったのではなくて褒められることが好きだったのでは?」と解釈してしまうため(認知的不協和の解消)。対策としては、親の主観を述べる(「お父さんはこの絵が好き」)か、子どもの行為ではなく作品を褒める、など(p. 231)。
  • なかなか理想通りの褒め方を実践するのは難しい。そんな時はせめて笑顔で楽しそうに接する(p. 250)。

 

(追記2019.07.07)

この著者の本で取り上げられている科学的知見は、キャッチーで面白いけど、信ぴょう性についての議論がほとんどないのは危うい気がします。例えばマシュマロテストは再現性(というか親の経済格差という交絡因子の解釈?)に疑問符がついてるという話もありますし…。 

 

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

 

 

 

論文のメモ: Daphniaのストレス応答遺伝子データベース

「Daphnia stressor database: 10年来のDaphniaのomicsデータを遺伝子アノテーションにフル活用

Ravindran SP, Lueneburg J, Gottschlich L, Tams V, Cordellier M, 2018, Daphnia stressor database: Taking advantage of a decade of Daphnia'-omics' data for gene annotation, bioRxiv, 444190.

環境科学の分野でもアーカイブで発表される論文を見るようになってきました。環境ストレスに対するDaphniaの遺伝子発現を調べた90本の論文をまとめて、データベースを作ったという報告。DaphniaのゲノムデータべースとしてはwFLEABASEがすでにありますが、wFLEABASEでは環境ストレスと遺伝子の関係は分かりません。この論文で報告されているデータベースDaphnia stressor databaseは、Comparative Toxicogenomics Database (CTD) のミジンコ版みたいなもので、遺伝子名を検索すると関連あるストレス(というかほぼ化学物質)が出てきます。

せっかくなので、CTDみたいにcsvファイルとかで元データを整理したうえで全部公開して欲しい。そうすれば、この論文でやっているような、D. pulexD. magnaの発現データのD. galeataゲノムへのマッピングとかができるのに。現状だと検索しかできないっぽいので。