環境化学および生態毒性関連の査読付き雑誌(ジャーナル)についての所感。現時点で思ったことを記録として残しておきます。誰かに提言しているわけではなく、将来の自分のために個人的なスタンスを書き残しているという感じ。想定しているのは以下の表のよ…
Palomares IMR, Bone AJ, 2024, Predictive value of the ToxCast/Tox21 high throughput toxicity screening data for approximating in vivo ecotoxicity endpoints and ecotoxicological risk in eco-surveillance applications, Sci Total Environ 16978…
化学物質の生物影響を調べる室内実験は、その多くが濃度応答反応を見ていて、時間と応答の関係を見ている研究は比較的少ないです。ここでは化学物質に曝露して、遺伝子発現応答の時間変化を追った研究について。 Schüttler A, Altenburger R, Ammar M, Bader…
2023年のSpotifyまとめ。12月のまだ1日なのに今年のまとめが出されるのが、ちょっとイヤかも。まだ今年を終わらせないでくれー。 今年のTop5。Watson、LEX、LANA、Creepy Nuts、JUMADIBA。日本語ラップばかりのラインナップでした。 Watsonは確かにかなり聞…
Schaupp CM, Maloney EM, Mattingly KZ, Olker JH, Villeneuve DL, 2023, Comparison of in silico, in vitro, and in vivo toxicity benchmarks suggests a role for ToxCast data in ecological hazard assessment, Toxicological Sciences 195(2): 145-15…
尿に含まれるRNAの話を以前書きました。 水生生物の環境RNAという観点では、尿の他に皮膚と糞も重要なソースだろうと思い、今度は皮膚と糞のmRNAをシーケンスする話。これらはヒトの研究です。どちらもAmpliSeqという、PCRでターゲット遺伝子を増幅してから…
この記事の続き。 生物種によってミトコンドリアのswelling assayの応答が異なるという論文がありましたが、同じように種によって単離したミトコンドリアの応答が異なる話。 Ricchelli F, Dabbeni-Sala F, Petronilli V, Bernardi P, Hopkins B, Bova S, 200…
Zhao B, van Bodegom PM, & Trimbos KB, 2023, Environmental DNA methylation of Lymnaea stagnalis varies with age and is hypermethylated compared to tissue DNA. Molecular Ecology Resources, 23(1): 81-91. 環境DNAでメチル化を見た初の論文。異な…
Parsley M, Goldberg C, 2023, Environmental RNA can distinguish life stages in amphibian populations, Mol. Ecol. Resources, in press. これまでの環境RNAの論文は、リボソームRNAやミトコンドリアRNAなど、条件や生活段階で変化しないような遺伝子を…
ギンザケ死亡症候群の原因物質であると2020年の年末に報告された6PPD quinone(6PPD-キノン; 6PPD-Q)の話(→2020年のScience)。当時はCAS番号が割り振られていないなど、全くの新規物質でしたが環境中での検出例や動態、毒性に関する報告が色々と出てきま…
尿のにおいから、線虫にがんを診断してもらう検査があります。 その臨床における有効性はよく知りませんが、尿にいろいろな成分が含まれることは確かで、尿には数十~数百nmサイズのexosomeがあり、そこにmiRNAやmRNAが含まれているという研究は数多くあるよ…
Oxford Nanopore Technology社のシーケンサー。ナノサイズのポアにDNA・RNAを通して、その際の電流の変化から塩基配列を読み取ります。 ポアを通している途中で興味のある配列(群)でなければ、そのDNA・RNAを吐き出して、無駄な配列を読まないようにする「…
つくばエクスプレスの線路破断のため3時間ほどつくば駅周辺に留まることになり、本屋に寄った際に購入。冒頭の息子さんの食物アレルギーのくだりでもう心を掴まれて購入決定しました。 相分離生物学(Phasing biology)は、タンバク質や遺伝子などの生物の個…
異なる生物種間のオルソログを検索して紐づけてくれるRパッケージです。GitHubページはここ。 使いやすくて非常に助かりました。1.5年前からBioconductorにあるみたいですが、5年くらい前にあればめちゃめちゃ使ってましたね…、 マニュアルに大抵のことは書…
ミトコンドリアの機能の研究方法についてお勉強。酸素消費速度(OCR)とか膜電位とか。 その中でMitochondrial swelling assayというのがあり、少しメモ。Swellingとは膨潤と訳されることが多く、例えばミトコンドリアの膜透過性遷移孔(mPTP)が開く際など…
表記の学会に参加してきました。3/15~3/17の3日間の学会ですが、2日目の午後から最後までの参加。 水環境学会年会は2019年以来の対面開催でした。私の専門とドンピシャの学会という感じではないですが、出身学科の同窓会的な側面もあり、久しぶりに会えた人…
3歳半になった娘と暮らしていると、クレヨンしんちゃん(原作。アニメはほとんど知らない。)は、育児マンガだったんだなと良く思います。昔読んだクレしんの場面が頻繁に脳内再生されます。 生態毒性な分野でのRNA-Seq解析の使われ方について。何か特定の物…
TOC計で水試料のDOC(溶存有機炭素)濃度をよく測定しています。 TOCはTotal Organic Carbonなので、TC(全有機炭素)からIC(無機炭素=炭酸塩炭素)を差し引いて求めます。その測定法には一般にTC-IC法とNPOC法(Non-Purgeable Organic Carbon)があります…
Xiong B, Yang Y, Fineis FR, & Wang JP, 2019, DegNorm: normalization of generalized transcript degradation improves accuracy in RNA-seq analysis, Genome Biol 20(1): 1-18. RNAの分解度の指標であるRIN(RNA Integrity Number)。RINはrRNAをベース…
11月13~17日にピッツバーグで開催されました。私は全く参加していませんが、要旨集がネットで見られるので主に6PPD-キノン(6PPD-Q)に関する発表でどんなのがあったのかをざっと確認してみました。 6PPD-Qに関する発表は全18件あり、そのうち8件が生態毒性…
Belanger SE, Lillicrap AD, Moe SJ, Wolf R, Connors K, Embry MR, 2022, Weight of evidence tools in the prediction of acute fish toxicity. Integr Environ Assess Manag, in press. P&GのScott Belangerらによるレビュー。動物愛護・動物福祉の観点か…
Zhang Y, Yin J, Qv Z., Chen H, Li H, Zhang Y, Zhu L, 2022, Deriving freshwater sediment quality guidelines of polycyclic aromatic hydrocarbons using method of species sensitivity distribution and application for risk assessment, Water Res …
Schaupp CM, LaLone CA, Blackwell BR, Ankley GT, Villeneuve DL, 2022, Leveraging ToxCast data and protein sequence conservation to complement aquatic life criteria derivation, Integr Environ Assess Manag, accepted. USEPAからの論文。SeqAPASS…
6/14から6/16まで富山国際会議場で開催された環境化学物質3学会合同大会に参加しました。環境化学会、環境ホルモン学会、環境毒性学会の3つの学会が合同で行う発表会です。ちなみに私はこのうちの2学会の会員です。 開催後に事務局から来た報告メールによる…
Coleman AL, Edmands S, 2022, Data and Diversity in the Development of Acute Water Quality Criteria in the United States, Environ Toxicol Chem 41(5): 1333-1343. 自然界の生物種の多様性に比べると、ごくわずかな生物種の毒性データに基づいて設定…
オンラインと現地のハイブリッド開催。 自分はオンラインのみで参加。ハイブリッドと言いつつ、ほぼ現地開催メインのようでした。Q&Aにほぼ書き込みを見なかったくらい、オンラインは全然盛り上がっていませんでした…。前回参加した完全オンラインのNorth Am…
Fuchylo U, Alharbi HA, Alcaraz AJ, Jones PD, Giesy JP, Hecker M, Brinkmann M (2022). Inflammation of gill epithelia in fish causes increased permeation of petrogenic polar organic chemicals via disruption of tight junctions, Environmental …
Wilkinson JL, Boxall AB, Kolpin DW, Leung KM, Lai RW, Galbán-Malagón C, ... Teta C, 2022, Pharmaceutical pollution of the world’s rivers, Proc National Acad Sci 119(8). PNAS。世界規模で医薬品・生活関連物質(PPCPs)の測定を行った論文。読み…
いつも地味に気になっているがすぐ忘れてしまうCYP代謝のメモ。 Ikenaka Y, Eun H, Ishizaka M, Miyabara Y, 2006, Metabolism of pyrene by aquatic crustacean, Daphnia magna, Aquatic Toxicol 80(2): 158-165. ミジンコにおける、PAHの1種ピレンの代謝産…
ギンザケ死亡症候群の原因物質であると昨年末報告された6PPD quinone(6PPD-キノン; 6PPD-Q)の話(→昨年末のScience)。2021年の半ばまではまだ標準品がなかったので速報的なものが多かったですが(→2021年に出た論文のまとめ)、Scienceの論文発表から丸1…