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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文「ニトロフラゾン曝露に対する繊毛虫カタラーゼの用量応答反応:酵素活性とmRNA発現」

最近読んだ論文は、マーカー遺伝子の発現変動と有害物質の曝露濃度との関係を直線で近似していました。曝露濃度が最大でもLC50の1/10なので線形モデルで上手くフィットしたのでしょうが、それってどうなんだろうと思って下の論文を読んでみました。 Li J., …

論文「異なる曝露時間で自然・化学ストレスを与えたヒメミミズの遺伝子発現解析」

ヒメミミズEnchytraeus albidus を使って2,4,21日間曝露試験を行い、生存個体の遺伝子発現をマイクロアレイによって解析した論文。 曝露物質は銅とフェンメデファン(除草剤)で、土壌にスパイク。また土壌の粒径やpHが異なる曝露系も実施。21日というのは、…

論文「混合物と地下水がオオミジンコの転写産物に与える影響の評価」

環境中にある有害物質が1つの物質単独で存在することは非常にレアなケースです。多くは、複数の有害物質が同時に存在しています。 そのように複数の有害物質が混在する際の毒性影響は、物質が単一で存在する場合の毒性影響と異なるのでしょうか。例えば単一…

論文「湖沼底質の有機汚濁物質がDaphniaの休眠卵からの孵化に影響する」

Daphniaの乾燥卵殻 (dried ephippium) を、Greifensee湖の底質に曝露させてみた研究。15日間でのふ化率は、曝露させた系での方が高かったようです。 ちょっと意外な結果でしたが、ストレスのある環境で卵のまま死んでしまうのを防ぐために早くふ化する戦略を…

論文「Ni, ZnのDaphniaへの複合影響は、影響の度合いによって相乗的になったりならなかったりする」

ETCから来た新着論文のアラートにあったもの。まだ要旨しか見れないけど、面白そうだったのでメモしておきます。影響レベルの高い物質・濃度同士を組み合わせると相乗効果だが、影響の低い物質・濃度同士ならば濃度加算モデル(CA model)で説明できる、という…

論文「ゼブラフィッシュと水浄化技術:有害な都市排水の対策としてのバイオリテンション」

路面排水の生態毒性評価に関する論文。具体的な毒性低減策と結びつけた研究はあんまり見たことがなかったので、メモ。高速道路で採取した路面排水を土壌カラムに通して、ゼブラフィッシュの毒性試験をおこなったもの。 McIntyre J.K., Davis J.W., Incardona…

論文「水生甲殻類RNAの簡易迅速な固定法」

RNA固定のTips論文。 Heckmann L-H et al., 2007, A simple method and rapid method for preserving RNA of aquatic invertebrates for ecotoxicogenomics, Ecotoxicol., 16, 445-447. Daphniaなどの水生生物のRNA固定をおこなうとき、水を除去するのが困難…

論文「甲殻類の慢性試験から推定した個体群増加率の感度解析」

前回の投稿に続き、個体群の話。あんまりちゃんと読んでないです。 Meyer J.S., Ingersoll C.G. and McDonald L.L., 1987, Sensitivity analysis of population growth rates estimated from cladoceran chronic toxicity tests, Environ. Toxicol. Chem., 6…

論文「個体群レベルでの生態毒性評価に関する日本語の総説まとめ」

個体群レベルでの生態毒性評価に関する日本語の総説。 田中嘉成, 中西準子, 1998, 慢性毒性の生命表評価法と生態リスク分析, 水環境学会誌, 21 (9), 589-595. 田中嘉成, 中西準子, 1998, 生態学モデルの生態リスク分析への適用 外挿法と生活史感度解析の効用…

論文「化学物質曝露の評価ツールとしてのDaphnia magnaマイクロアレイ」

遺伝子発現などの生物応答は、化学物質曝露などの環境要因によって変化します。遺伝子発現を調べることで曝露化学物質の同定、キャラクタライズをおこなう試みがあります(→参考:mTIE)。下記の論文も、それに近い趣旨ですね。 Watanabe H., Takahashi E., …

論文「海産珪藻へのシアン化物およびシアン錯体の毒性」

シアン化合物は、金属の精錬やめっき製造などの工業排水によって水圏に流入しています。また、バクテリアや藻類によっても生産されています。 シアンは例えば下記のように、シアン化水素となったり、金属と錯体を形成したり、様々な形態をとっています。水生…

論文「二枚貝は融雪剤汚染を記録しているか?」

融雪剤として使用される塩(塩化ナトリウム; road-salt)が生態系へ悪影響を与えているかも、という論文はこのブログで紹介してきました(→こちら)。Nature系のオープンアクセス誌であるScientific Reportsに、関連する論文が先月出ていました。ほとんど読…

論文「路面融雪剤の見直し:局地的~全国的スケールでの生態毒性と水質影響」

道路に積もった雪を溶かすためにまく塩(塩化ナトリウム)は、水生生物に悪影響を与えるかもしれないという記事を昔書きました(→こちら)。塩化ナトリウムは舗装された道路を流れ、河川や湖に流入します。その地点の塩濃度は上昇し、淡水でしか生きられない…

論文「ネオニコチノイド系農薬にまつわるやっかいごと」

論文といってもperspectiveですが。 Sánchez-Bayo F, 2014, The trouble with neonicotinoids, Science, 346(6211), 806-807. ネオニコチノイドというのは、現在広く使用されている殺虫剤のグループです。タバコに含まれるニコチンは、ニコチノイドというグ…

論文「シリカを用いた人工底質下で行うヨコエビのZn毒性試験」

底生生物を用いる毒性試験では、自然環境中から採取した底質ではなく、人工的に作成した底質(以下、人工底質; artificial sediment, formulated sediment)を用いる場合があります。例えばユスリカの底質毒性試験は、石英砂とカオリンなどを混合した人工底…

論文「淡水産カイアシの成長と繁殖を用いた底質毒性の評価」

研究室で紹介された論文。殺菌剤のtebuconazoleを底質にスパイクして、カイアシ(copepod)を曝露させた実験です。 Turesson E.U., Stiernstorm S., Minten J., Adolfsson-Erici M., Bengtsson B.E. and Breitholtz M., 2007, Development and reproduction …

論文「融雪剤が都市河川の底生生物に与える影響」

道路に積もった雪を解かすために、融雪剤をまくことがあります。融雪剤は、NaClなどを用います。融点を下げて、雪を水にするわけです。 Crowther R.A., and Hynes H.B.N., 1977, The effect of road deicing salt on the drift of stream benthos, Environ. …

論文「死に至るまでの時間:汚染底質の毒性の定量化指標として」

底質の希釈は困難だという話を書きました。ならば、かなり汚染された底質では、10日後の致死率とかではない、感度の低い(?)別の指標を使ってみようぜ、という論文。 DeFoe D.L. and Ankley G.T., 2003, Evaluation of time-to-effects as a basis for quant…

論文「コントロール底質を用いて汚染底質の希釈列を作成するのはOK?」

底質のような固相試料の希釈は、液相の試料の希釈より困難です*1。 汚染底質の希釈列作成の必要性:ひどく汚染された底質が複数あります。それらを採取し、底生生物を曝露させたところ、どの底質においても曝露させた全部の個体が死亡したとします。この時、…

論文「底生ヨコエビに対する毒性要因を定量的PCRを用いて特定する試み」

生物の周囲の環境を調べるのではなく、生物そのものの健康診断をすることで「どのような汚染が進行しているのか」を知る手法があります。例えば、生物の遺伝子発現を調べる手法です(参考:オオミジンコを用いた研究)。 下記の論文は、汽水域に生息するヨコ…

論文「ユスリカの遺伝子発現のフィンガープリンティングによる有害物質のスクリーニング」

環境汚染が単一の物質によって進行することは稀です。多くの場合、複数の有害物質による複合的な汚染が同時に進みます。そのため、生物に毒性があると判明した環境試料を化学分析してみても、どの物質が毒性要因なのかすぐには分かりません。 生物の応答を見…

論文「殺菌剤曝露ヨコエビにおける特異的発現遺伝子のSSHを用いたスクリーニング」

Wu, Y.H. et al., 2014, Screening differentially expressed genes in an amphipod (Hyalella azteca) exposed to fungicide vinclozolin by suppression subtractive hybridization, J. Environ. Sci. Health, Part B, 49 (11), 856-863. SSH(Suppression…

論文「有機物質のbioavailabilityに関する総説:accessibilityとchemical activityの区別」

以前の記事で少し触れた、底質や土壌における有機物質のbioavailability(生物学的利用能)に関する総説。簡単にまとめるつもりが、長くなってしまいました。 Reichenberg F. and Mayer P., 2006, Two complementary sides of bioavailability: Accessibilit…

論文「海洋の酸性化が重金属の毒性を増加させる:多毛類での検討」

大気中のCO2濃度増加により、海洋のpHが減少、すなわち酸性化することで生態系に様々な影響が及ぶと懸念されています。下記論文は、その影響の中でも重金属のbioavailability変化に着目しています。 Campbell A.L. et al., 2014, Ocean acidification increa…

順応的管理はご都合主義?

山室先生のブログを見たら、「順応的管理(Adaptive management)」がご都合主義的に使われていることを指摘されていました。 順応的管理とは「計画における未来予測の不確実性を認め、計画を継続的なモニタリング評価と検証によって随時見直しと修正を行い…

論文「生存・死亡微細藻類による高分子PAHの除去及び物質変換」

おなじみのPAH(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon; 多環芳香族炭化水素)に関する論文です。以前、藻類によるPAHの代謝と蓄積に関する論文を紹介しました。藻類のような下等(?)生物によってもPAHのいくらかは代謝・分解されるという話でしたが、今回は藻…

バイオアッセイと実環境中の影響予測・論文「異なる曝露履歴を持つミミズ個体群におけるメタロチオネインの発現」

化学物質が生態系に与えるリスクを評価する方法として、通常は生物応答を指標とした毒性試験(バイオアッセイ, bioassay)を行います。対象の化学物質の曝露濃度(あるいは投与量)と致死率などの生物応答との関係(=「用量反応関係, dose-response relatio…

論文「キャリア溶媒の急性・慢性影響に関する総説」

疎水性物質の毒性試験では、通常アセトンやDMSOなどのキャリア溶媒を用いて試験溶液を作成します。そのキャリア溶媒の使用に関する論文(2013年, Aqua. Toxicol.)は、このブログでもまとめを書きました(→「キャリアーとしての有機溶媒の使用:実務・統計・…

論文「水環境中のPAHの挙動に藻類が果たす役割」

人為起源のPAH(多環芳香族炭化水素)は、降雨や路面排水によって河川や海などに運ばれます。そしてその疎水性のために、懸濁物質や生物表面に吸着し、底質へと蓄積します。 そのような経路だけでなく、PAHは水中の藻類による取り込み・代謝も受けます。下の…

論文「キャリアーとしての有機溶媒の使用:実務・統計・レギュラトリー面での考察」

水生生物の毒性試験で疎水性物質を扱う際は、通常キャリアとして有機溶媒を用いることを先日書きました(8/21記「疎水性物質の毒性試験について」)。 そのキャリア溶媒(carrier solvents)に関する総説。以下は、この総説を読んでのまとめ。 Green J. and …

論文「異なる塩分下でのエビM. sintangenseへのCd毒性」

水生生物への重金属の毒性、蓄積は色々な要因の影響を受けます。塩分もその一つです。一般に塩分が低いほど、重金属の毒性は増加します。塩化物イオンとの錯体を形成する重金属の割合が減少し、bioavailabilityの高いフリー態が多くなることや、生物膜に対す…

疎水性物質の毒性試験について

水に溶けにくい物質、すなわち疎水性物質(Hydrophobic Organic Chemicals;HOC)の毒性試験はやっかいです。「試験溶液をどうやって作成するか」が難しいためです。 例えば10 µg/L(= 10 ppb)の溶液1 Lを作成したい場合。 はかりでHOCを1 mgまで測定できる…

論文「HOCの拡散速度とDOC」・音楽「恋におちたら」

Mayer P. et al., 2007, Enhanced diffusion of polycyclic aromatic hydrocarbons in artificial and natural aqueous solutions, Environ. Sci. Technol., 47, 6148-6155. 昨日に引き続き、HOC(Hydrophobic organic chemicals;疎水性有機物質)に関する論…

論文「HOCの生物移行とDOC」

ter Laak T.L. et al., 2009, Dissolved organic matter enhances transport of PAHs to aquatic organisms, Environ. Sci. Technol., 43, 7212-7217. 「水生生物への重金属の毒性にどのような因子が影響するか」は良く研究されています。フリー態が最もavai…

本「生命はなぜ生まれたのか」・論文「底質試験での餌」

高井研, 2011, 生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る, 幻冬舎新書 「地球生物の起源」とタイトルにありますが、本書で対象としているのは、地球で本当に始めに生まれた生命ではなくて、ずっと繋がった末に現在の地球生命までたどり着いた生命で…

【論文】生態毒性: 淡水と海水における種感受性分布(SSD)比較

Freshwater to saltwater toxicity extrapolation using species sensitivity distributions Wheeler J.R. et al. 2002,Environ. Toxicol. Chem., Vol.21,No.11,p.2459-22467 手法 アンモニア、重金属、殺虫剤、narcotic cmopounds(ベンゼン・フェノール・ト…

【論文】生態毒性: LASのPEC及びPNEC推定-淡水と海水の比較-

Marine Risk Assessment: Linear alkylbenzenesulphonates (LAS) in the North Sea Temara A. et al. 2001, Marine Pollution Bulletin, Vol.42,No.8,p.635-642 概要・感想 LASに対する水生生物の感受性を文献調査してみたところ、急性試験では淡水と海水と…

【論文】生態毒性: DOMはCdのMobilityには影響するが藻類による取り込みには影響しない

Natural dissolved organic matter mobilizes Cd but does not affect Cd uptake by the green algae Pseudokirchneriella subcapitata (Korschikov) in resin buffered solutions Verheyen L., Versieren L. and Smolders E. 2014, Aquatic Toxicol., Vol.1…

【論文】生態毒性:分子生物学的手法によるオオミジンコに対する毒性要因の特定

The molecular toxicity identification evaluation (mTIE) approach predicts chemical exposure in Daphnia magna 「オオミジンコの毒性要因を分子生物学的手法を用いて特定する試み(mTIE)」 P. Antczak, H.J.Jo, S. Woo, L. D. Scanlan, H. C. Poynton,…

環境毒性学会@東洋大学

※本記事は2013/09/10に別のブログ用に書いたものの転記。 9/7~8の環境毒性学会@東洋大学 に行ってきました。 またしても自身の発表ではなく、ただ遊びに。 主に聞きたかったのは、化学物質によるリスクと生態系に関するシンポジウムですが、期待を上回る面…

【論文】生態毒性: 底生系食物網における有機物質の蓄積

An equilibrium model of organic chemical accumulation in aquatic food webs with sediment interaction Thomann R.V., Connolly J.P. and Parkerton T.F. 1992, Environ. Toxicol. Chem., Vol.11, p.615-629. 疎水性物質の多くは、底質に蓄積しています…