a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

【論文】生態毒性: 底生系食物網における有機物質の蓄積

An equilibrium model of organic chemical accumulation in aquatic food webs with sediment interaction

Thomann R.V., Connolly J.P. and Parkerton T.F.

1992, Environ. Toxicol. Chem., Vol.11, p.615-629.


 

 疎水性物質の多くは、底質に蓄積しています。その有機物質について、底質における環境基準を定めるためには、物質が底質・生物・上層水(overlying water)などを含めた生態系においてどのような挙動を示すか、どのような要因によって挙動が変化するのかを知る必要があります。

 

 この論文は5つのコンパートメント・要素からなる生態系モデルを用いて、「どのような経路によって、どこにどれだけ有機物質が蓄積するか」を検討したものです。5つのコンパートメントは、「上層水・間隙水(interstitial water)・底質粒子・植物プランクトン・底生生物・魚類(底生生物食者)」です。

 どうも、動物プランクトンや上位魚類も考慮する予定みたいですが、今回読んだ範囲では、そのあたりは話に入っていませんでした。

 自分の興味のあった点は、底生生物への有機物質蓄積の経路です。ので、以下ではそこを中心にメモ。

 

 手法

 この論文のモデルでは、「上層水・間隙水」の水系曝露と「植物プランクトン(以下PP)・底質粒子」の摂食曝露が考慮されています。

 水系曝露では「水中濃度×摂取量」で底生生物への蓄積量が決まりますが、摂食曝露では「粒子中濃度×摂食量×同化率」で蓄積量が決まります。同化率(assimilation efficiency)は、物質のKowの関数として定められています。疎水性であるほど同化効率は高くなるけれど、Kowが6.5より大きくなるとかえって同化効率は下がるようになっています(たぶん物質の大きさが増して、生体膜を通過しにくくなるなるからでしょう)。

 物質の排泄率やらは文献値を用いたり、感度解析から得たり。その辺は流し読み。  オンタリオ湖のデータに適用して検証。

 ※引用されている論文のタイトルを見ると、対象物質はPCBなどの有機塩素ばかり?

 

 結果

 ヨコエビへのBSF(Biota Sediment Factor; 生物中の物質濃度/底質中の物質濃度)は、水系曝露の寄与のみだと、うまく説明できない。

 特にLog Kow > 6 あたりの疎水性物質は、ほとんど底質粒子に吸着していると考えられるので、水系曝露の寄与は少ない。しかし、実際にはヨコエビ中に蓄積している。底質粒子の摂食曝露の寄与を考えないと、その蓄積が説明できない。そのような疎水物質に関しては、「底質粒子を好まない、PPをより好む(底質粒子:80%, PP:20%)」ようにモデルを設定しても、底質粒子からの寄与の方がPPからの寄与よりも大きくなるそうな。