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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

【本】HSPと分子シャペロン

HSPと分子シャペロン」 -生命を守る驚異のタンパク質-

水島徹 著 講談社 2012年

 生命を脅かすあらゆるストレスからタンパク質を守り誕生から、機能を失い分解されるまでタンパク質のために健気に働く「タンパク質」。それが、HSPであり、分子シャペロンだ。  生命が40億年かかって手に入れたナノレベルのこの驚くべきシステムを解説し、創薬へのチャレンジまでを紹介する。 (本書裏の紹介文より)

 

※本記事は2013/09/08に別ブログに書いたものの転記です。

 僕は薬学、医学のことはほとんど知りません。HSPは多くの生物種が持っており、生態毒性の文献を読んでいてもよく登場するので、タイトルだけ見てなんとなくで読んでみたのですが、かなり楽しめました。

 

 非常に読者を引き込む力のある本だと感じました。何がそうさせるのかな、と思って僕が考えた要因は次の3つです。

 

①1つは著者のHSPや研究に対する情熱が、押しつけがましくなく上手く描かれていること。

 

②もう1つは、事実を羅列するのではなく、著者や他の研究者の思考をかなり分かりやすく、追体験させようとしていることです。

 例えば「ストレスによってHSPというタンパク質が増える」ということがまず紹介されます。次に「HSPはどのような働きをしているのだろう」と疑問が出され、「ストレスから細胞を守っている」ことを検証する実験が説明されます。そして「HSPはどのような方法で、ストレスから細胞を守っているのか」という疑問、検証に移っていく、といったように、「疑問」⇒「仮説」⇒「実験による検証」の過程が丁寧に描かれています。なので、読者を参加している気にさせてくれます。

 

③最後に、HSPだけでなく、研究や社会に関する著者の考えも、おおげさに言えば人間観や人生観も誠実に書かれていることです。 中でも僕が一番感心させられたのは、「良い研究は基礎と応用のセット」という考えです。あとがきにも書かれているので、著者の強い信念のようですが、かなり共感しました。ただ、そのような研究を行うためにどこに着眼するかが難しいのでしょうけど。

 

 

  あと内容に関して。 ストレスとタンパク質の変性についての説明を読んで、今まであいまいだった知識がかなり整理されました。

 

 

 タンパク質は疎水部分と親水部分を持ち、複雑な立体構造によって疎水部分を内側に、親水部分を外側に向けている。ストレスを受けるとタンパク質は、その立体構造がゆらぐために、疎水部分が外側に出て、他のタンパク質の疎水部分と結合し、凝集する。そうすると元の形に戻れず、タンパク質の機能が失われる。

 

 

 HSPが非特異的にストレスに反応する仕組み(つまり熱、アルコール、金属曝露などあらゆる)も面白かったです。面倒なので詳しく書きませんが、受容体ではなく、転写因子HSF1が関係しているという箇所です。ただ、書いていて気付いたけど、生化学かなんかで昔勉強したかも…

 

 

 

HSPと分子シャペロン (ブルーバックス)

HSPと分子シャペロン (ブルーバックス)