ヒラノ教授シリーズを初めて読みました。
初めて読んだのですが、このヒラノ教授シリーズが人気なのは納得でした。ファンになりました。
筆者も1章で述べている通り、いわゆる「ハウツー本」では全くありません。各章の終わりごとに「必勝法8; 論文書きは習慣のようなものだ。書き出せば次々と書けるが、ひとたび書かなくなると書けなくなる。」などのようなまとめはありますが、基本的には「ヒラノ教授」の体験談が綴られ、それに絡めた教訓が語られるという自叙伝的なスタイルです。この体験談が、あけすけで面白い。酒の席での話のようです(実際、酒の席で他の教授から聞いた科研費獲得のコツ・秘訣というくだりも載っています。p. 58*1)。
面白かった点。
- アメリカの大学は、研究室内・研究室間でのアイデアのドロボーが頻繁にある。村社会の日本との違い。(p.56)
- まとまった時間のあるうちに、つまり学生時代と助教時代に自身の研究スタイルを確立する必要がある*2。准教授以降は雑用が山のように降ってくるため。(p.72)
- ヒラノ教授がお勧めするスタイルは、工学部ということもあり、論文量産スタイル。そのための秘訣は、「研究領域を常に拡大し続け、創業者利益を得ること」と、「学生を巻き込むこと」、そして「新しい分野に参入する時にこれまでいた分野の人間関係を損なわないこと」。
- レフェリー付き論文の掲載までの時間・成果稼ぎのために、誰にも相談せずに「IHSSレポート」なるものを自分で書いて自分で発行していた。(大学の紀要のようなもの)(p.86)
- 論文量産の裏ワザ。ヒラノ教授の学生時代の指導教員の森口教授は、調査直後の記憶が鮮明なうちに調査結果をテープレコーダーに吹き込み、それを別の人に報告書としてまとめさせる。最後に修正をして完成。(p.106)
- レフェリー(査読者)との戦い。レフェリーが理不尽なら反論し、それでもだめなら編集委員に直談判。(p.130~)
「日本では、学生がやった研究に、教授・准教授・助教の名前を加えて投稿するのを慣例とするグループがあったが、同業者の間ではきわめて評判が悪かった。」(p.150)とありましたが、自分のいる分野では割と皆やってるような・・・。実験系と理論系の違いでしょうか。
ヒラノ教授の論文必勝法 教科書が教えてくれない裏事情 (中公新書ラクレ)
- 作者: 今野浩
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/12/09
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