遺伝子発現などの生物応答は、化学物質曝露などの環境要因によって変化します。遺伝子発現を調べることで曝露化学物質の同定、キャラクタライズをおこなう試みがあります(→参考:mTIE)。下記の論文も、それに近い趣旨ですね。
Watanabe H., Takahashi E., Nakamura Y., Oda S., Tatarazako N. and Iguchi T., 2007, Development of Daphnia magna DNA microarray for evaluating the toxicity of environmental chemicals, Environ. Toxicol. Chem., 26 (4), 669-676.
オオミジンコDaphnia magnaのマイクロアレイを用いて、硫酸銅・過酸化水素・ペンタクロロフェノール (PCP) ・β-ナフトフラボン (βNF) にそれぞれ24h曝露させた個体の遺伝子発現を調べた論文。
曝露物質ごとの遺伝子発現パターンをクラスタリングしているのですが*1注目すべきは、同じ物質でも濃度によって発現パターンが大きく異なる場合があるということです。例えばH2O2とβNFは高濃度曝露と低濃度曝露とが同じクラスターに分類されているのに、CuSO4とPCPは濃度によって別のクラスターに分けられています。筆者らはCuのdose-responseカーブが急であることを理由の一つにあげていますが、個人的にはマイクロアレイ上の遺伝子数が178と非常に少ないため*2*3、分類に必要な遺伝子が搭載されていなかったことが原因ではないかと思いました。