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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

本「リスクに背を向ける日本人」

本書のテーマ自体は新しくないのですが、面白かったです。出てくるエピソードや知見が豊富だし、筆者たちの物の見方が新鮮で面白いのでしょう。

山岸俊男, メアリーCブリントン, 2010, リスクに背を向ける日本人, 講談社現代新書

 

概要

本書は乱暴にまとめると、下のような内容です。

日本人はリスクをとる生き方をしない。内向きで、場の空気に気を遣いすぎてしまう。新しい環境や物事にチャレンジできない生き方は、終身雇用制が崩壊しかけているなど変革期を迎える現代の日本では、安泰ではない。しかし実は、日本人の性向そのものがチャレンジやリスクを嫌悪しているわけではない。現状がそうだから、皆がそうしているから、社会全体がチャレンジを受け入れにくくなっているだけである。社会制度を変えれば、生き方を変革できる可能性はある。

 

全体的な印象

対談形式ということもあってか、いろんなことに話題が飛びます。それは上に書いた通り本書の面白いポイントでもあるのですが、一方でまとまりを失わせてるかも。また解決策を提示していない問題提起的な本なので、読後に少しもやもや感が残りますね。

皆が空気を読みあって、慣習を変えられない。悪しき秩序でも、それを変えようとすれば他の人から嫌われそう。そういった状況でも個人個人は実は変革を望んでいる、という(特に山岸さんの)主張は勇気の出る話ですね。こういう話を心に置いておくだけで、何か行動に移す時は余裕が出ると思う。もちろん失敗した時のセカンドチャンスを確保することも大事ですが。

一般の人に向けて読んでほしいということを何度か述べられてましたが、関連する研究に興味ある人が読んでも面白いでしょう。研究者同士の対談ですし。特にアンケート調査などおこなう人には面白そう。下に書いた「デフォルト戦略」の話とか。

 

個別の話

  • デフォルト戦略」。知能テストを受けた大学生に「あなたの成績はテストを受けた人の平均よりも上か下か?」というアンケートをしたところ、7割の人が「下」だと答えた。しかし、アンケートの答えが当たっていれば金銭をプレゼントするという条件をつけると、今度はほぼ7割の人が「平均より上」だと答えた。特別な理由がなければ、本当のことよりも当たり障りのない言動を優先するのが日本人の「デフォルト戦略」である。(p.89~)
  • 「間接互恵性」=「情けは人のためならず」。誰かに親切をすると、めぐりめぐって親切が返ってくる。意地悪でも同じ。「間接互恵性が成り立つためには、評判が重要だってことですね。」(p.116~)
  • まわりの目を気にしがちな人は、監視の目がないとむしろ利己的にふるまう。協調するのは周囲に人がいる時だけ。逆に意見をはっきり持ち主張する人は、他人の感情をよく理解する、協力的な人間である。(p.129~)
  • 日本の多くのシステムでは、規則は違反されることを前提にした建前であって、現場の運用でズレを調整している。例えば交通ルールの速度規制。制限速度は破られるのが当たり前になっている。「集団主義的」な秩序の一例。(p.234~)

 

光化学オキシダントの基準も、最後の「運用での調整」に該当しますね。達成されたことがない「基準値」がそのままになっているという…(「基準値のからくり」(p.169) より)。

 

リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)

リスクに背を向ける日本人 (講談社現代新書)