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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

最近読んだ論文のメモ: 継代飼育による多様性損失・AFLPの統計解析・その他AFLP論文

論文 生態系 生態毒性 AFLP 分子生物学 遺伝

「実験室での飼育による遺伝的多様性の損失」

Nowak C., Vogt C., Diogo J.B. and Schwenk, K., 2007, Genetic impoverishment in laboratory cultures of the test organism Chironomus riparius, Environ. Toxicol. Chem., 26(5), 1018-1022. 

一般的な毒性試験では、実験室で継代飼育した生物個体を用います。そのため試験個体の遺伝的多様性は低くなります。そうなると実験室で得られた結果は、遺伝的多様性の高い野外集団の毒性応答を反映してないかもしれません。一般的には遺伝的多様性の低い集団の方が環境ストレスに対する感受性は高いと考えられてます。

継代飼育によって実際にどれくらい遺伝的多様性が失われるかを評価したのがこの論文です。11実験室で飼育されてきたユスリカの遺伝的多様性と、野外集団のそれをマイクロサテライトマーカーで比較しています。23世代同系交配していくと、10世代目くらいから急にヘテロ接合度期待値Heが急に落ち込むFig.2が印象的。「founder effect:創始者効果」という言葉は知らなかった。

この論文の着眼点は面白いけど、主張はどうだろう…。定期的に野外集団からサンプリングして実験室での多様性を維持しようという方向性ですが。

 

「実験室で継代飼育することによる種分化」

Duan Y., Guttman S.I., and Oris J.T., 1997, Genetic differentiation among laboratory populations of Hyalella azteca: implications for toxicology, Environ. Toxicol. Chem., 16(4), 691-695. 

上の論文と似たような文脈の研究。淡水域の底質毒性試験に用いるHyalella aztecaの14種アロザイム分析を、色々な研究室で飼育されている6系統でおこなったもの。

系統間の遺伝的な距離は、H. montezumaという別種との距離より大きい場合があったそうな。継代飼育によって別種レベルに分化してしまう怖れ。

 

(追記 2015.08.16)

Soucek D.J., Mount D.R., Dickinson A., Hockett J.R. and McEwen A.R., 2015, Contrasting effects of chloride on growth, reproduction, and toxicant sensitivity in two genetically distinct strains of Hyalella azteca, Environ. Toxicol. Chem., in press.  

USAの2ラボのHyalella azteca飼育株でClに対する応答が大きく異なったという論文。しかし硝酸と硫酸に対する応答は、同程度だったみたい。アブストと図、イントロぐらいしか読んでません。

(追記 終わり)

 

「AFLPデータの統計解析手法」

Bonin A., Ehrich D. and Manel S., 2007, Statistical analysis of amplified fragment length polymorphism data: a toolbox for molecular ecologists and evolutionists, Mol. Ecol., 16(18), 3737-3758. 

先日AFLPでヘテロ接合度を算出した論文を読みましたが、もっとまとまったレビューがありました。

 

・AFLPを用いたヘテロ接合度算出の例

Gomez-Uchida D., Weetman D., Hauser L., Galleguillos R. and Retamal M., 2003, Allozyme and AFLP analyses of genetic population structure in the hairy edible crab Cancer setosus from the Chilean coast, J. Crustacean Biol., 23(2), 486-494. 

3地域から採集した食用カニにAFLP適用。5つのプライマーセットで190バンド生成。うち52%が多型を示すバンド。ヘテロ接合度は3地域合わせた場合He=0.187。地域ごとだと0.165~0.215。

Maldini M., Marzano F.N., Fortes G.G., Papa R. and Gandolfi G., 2006, Fish and seafood traceability based on AFLP markers: Elaboration of a species database, Aquaculture, 261(2), 487-494. 

全32種の魚などの海産の食用品のAFLP。BSI(Band Sharing Index)とバンド多型割合。BSIは同一集団由来の食品なら0.97-1.00。多型割合は0.0275-0.3727。