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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

最近読んだ論文のメモ: bioavailability考慮したTIE・底質関連の細菌群集・在来種を用いた毒性試験

論文 生態毒性 生態系 底質 分子生物学 NGS 微生物

「中国南部の都市河川底質におけるTIE: bioavailability考慮」

Yi X., Li H., Ma P. and You J., 2015, Identifying the causes of sediment‐associated toxicity in urban waterways in South China: Incorporating bioavailabillity‐based measearuments into whole‐sediment toxicity identification evaluation, Environ. Toxicol. Chem., 34 (8), 1744-1750. 

中国の珠江(Pearl River)の底質にTIEを適用した研究。ざっと読み。急性の致死率が100%ちかく達するほどの汚染底質は、今の日本には少ないかも。

前も似たようなことを書きましたが、TIEのPhaseIIでのTU(Toxic Units)の計算はこのように野外調査のデータを適用するのは普通なのでしょうか。結構荒いなぁという印象を受けます。と思ったら、前回と同じ著者グループでした。

Bioavailable Toxic Unitsの計算もやりたいことは分かりますが、この値を通常のTUと同じTUとして扱うのは気に食わないかも…。TU=1の意味が異なるので。

 

 

「有害物質に曝露させた南極ヨコエビの転写産物NGS解析」

Kang S., Kim S. and Park H., 2015, Transcriptome of the Antarctic amphipod Gondogeneia antarctica and its response to pollutant exposure, Marine Genomics, inpress.  

PCB, PFOS, PFOAのそれぞれに3日間曝露させた南極産ヨコエビのmRNAを、イルミナのNGSでde novoシーケンスした技術報告。各処理系で1Gbちょっと、合計で4.6Gb。生成されたcontigは20,749個で、そのうちデータベースのものと相同性が認められたのは61% (12,461個)。

同じような内容でも、2年ぐらい前までは技術報告でなくて一本の原著論文として載っていたイメージなんですけどね。

 

 

「大型底生生物を導入することによる微生物叢の変化」

Ma Y., Hu A., Yu C.P., Yan Q., Yan X., Wang Y., Deng F. and Xiong H., 2015,Response of microbial communities to bioturbation by artificially introducing macrobenthos to mudflat sediments for in situ bioremediation in a typical semi-enclosed bay, southeast China, Marine Pollut. Bull., 94(1), 114-122. 

底質に多毛類を3か月ほど導入したことで細菌群集の組成が変化するという論文。細菌叢の構成は重金属濃度などより明確に、前後の変化が見られるそうな。機能に関する解析はまだ何とも言えない感じ。ANOSIM (Oneway Analysis of analysis of Similarity; 類似度行列分析) という手法は、前に読んだ総説で登場してたけどすっかり忘れてた。

 

 

ヨコエビ細菌叢の多様さ

Mengoni A., Focardi A., Bacci G. and Ugolini A., 2013, High genetic diversity and variability of bacterial communities associated with the sandhopper Talitrus saltator (Montagu)(Crustacea, Amphipoda), Estuarine, Coastal Shelf Sci., 131, 75-82. 

野生ヨコエビ内の細菌叢microbiomeをT-RFLPで調べた論文。1匹ずつDNAを抽出してます。同一集団内のRFLPのばらつきが大きい、というのが結論。RFLP断片はほとんど共通していないみたいです(全30個体中、20%以下の個体でしか共通していないバンドが大半)。RFLP断片の類似度をもとにクラスターを作っても、あまりきれいに分かれない。しかしこれだけ集団内のばらつきが大きいと、手法を疑ってしまいます。RFLPのプライマーが良くないんじゃないかとか…。

なんとなく読んでみた論文ですが、サンプルごとのばらつきが大きいフラグメント解析の解析手法を探るという意味で、自分の研究の参考になるかも。

あと、制限酵素の種類と断片の長さと、これまでにシーケンスされた情報から細菌分類を類推してくれるMiCAというツールがあるそうな。

(追記 2015.12.14)

 この論文のmicrobiomeって、別に腸内細菌叢ではなくて、表面に付着している細菌も含んでいるようす。他の論文でヨコエビのDNA解析に使ったサンプルを使い回したみたいですね。

 

「在来種を用いることの大事さ」

Freitas E.C. and Rocha O., 2011, Acute toxicity tests with the tropical cladoceran Pseudosida ramosa: the importance of using native species as test organisms, Arch. Environ. Contam. Toxicol., 60(2), 241-249. 

 副題につられて読んでみました。どこの地域でもDaphnia magnaばかりで試験するんじゃなく、その地域に生息する種で試験するべきという主張。やっていることは、在来種を用いた複数の化学物質の曝露試験。LC50を20回も繰り返し求めている、すごい。

副題のような主張を理論的に補強したかったのですが、感受性が異なるというだけではちょっと弱いなぁ。