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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

最近読んだ論文のメモ: パルス曝露の影響

定常的な曝露ではなくて、短期間の曝露の影響についてどんな研究がなされているのかちょっとだけ調べてみました。農薬の研究が結構多いみたいです。

 

「短期間の殺虫剤曝露がヨコエビの生存と繁殖能に与える影響

Cold A. and Forbes, V.E., 2004, Consequences of a short pulse of pesticide exposure for survival and reproduction of Gammarus pulex, Aquat. Toxicol., 67(3), 287-299. 

淡水産のヨコエビG. pulexピレスロイド系殺虫剤のエスフェンバレートに曝露させてます。1時間の曝露をおこなってから清浄な容器に移し、2週間の生存率や産仔数・子供の生存率などを見ています。色々な実験を行っているしそれぞれは面白いんですが、なんかとっ散らかっている印象。できれば曝露時間、曝露濃度とエンドポイントの関係を体系的にまとめて欲しかったかも。

 

 

「パルス的曝露における曝露時間とrecovery time

Zhao Y. and Newman M.C., 2006, Effects of exposure duration and recovery time during pulsed exposures, Environ. Toxicol. Chem., 25(5), 1298-1304. 

こちらの論文は、曝露が1回ではなくて、複数生じる場合を想定。曝露の間のcleanな系にいる期間をrecovery timeと呼んで、どれくらいのrecovery timeがあれば元の曝露がなかった状態に戻れるかを調べています。Discussion部分のデータ分析の詳細が把握できてないのですが、まだ体系的にまとまっている段階ではないかな?

上のCold and Forbes (2004) と違ってこちらの曝露期間は12h以上と長め。実環境中でもこれくらいの時間幅で濃度変動するんでしょうか?

 

「パルス曝露したマラチオン毒性のメカニズム解明

Trac L.N., Andersen O. and Palmqvist A., 2016, Deciphering mechanisms of malathion toxicity under pulse exposure of the freshwater cladoceran Daphnia magna, Environ. Toxicol. Chem., 35 (2), 394-404. 

これは体系的にまとめようとしていて分かりやすい! 統計処理の記述も丁寧で好感が持てます。しかし結果はそれほどきれいではないかも。

塩素消毒のCT値みたいに「曝露濃度×曝露露間=equivalent integrated does」という指標を使い、短期間の曝露による影響を評価してます。1 µg/L×48h, 2 µg/L×24h, 16 µg/L×3hの曝露後にきれいな系に移して3~48h後の生存・遊泳阻害・酵素活性などを調査。

生存率は、「低濃度×長期間」が「高濃度×短期間」よりも影響が大きいけど、統計的に有意ではない。遊泳阻害は「高濃度×短期間」の影響が強い。こちらは明確な差がある。わずか3hの曝露でも高濃度であれば影響が48h後まで残るから、こういう実環境に近い曝露方式も考えるべき、という主張でした。(16 µg/Lが本当にenvironmentally realistic concentrationなのかはたぶん書かれてなかったと思います。

 Conclusionに書かれてますが、Daphnia magnaでさえGSTとかCYPに関する十分な塩基配列情報がないというのは意外。

 

(2016.02.20 追記)

まだちゃんと読めてませんが、総説がありました。濃度が一定でない曝露による影響をどう定式化するかに焦点を絞っているみたいです。面白そう。

Ashauer R., Boxall A. and Brown C., 2006, Predicting effects on aquatic organisms from fluctuating or pulsed exposure to pesticides, Environ. Toxicol. Chem., 25(7), 1899-1912. 

 上のTrac et al. (2016) のように「曝露濃度×曝露露間」が同じならば影響が一定になるというのはHaber's lawと言うそうな。

(2016.02.26 追記)

このAshauerって人のグループは2000年後半くらいからパルス曝露影響の数理モデル化に関する論文を出しまくってます。有害物質が生物体内に取り込まれて排出・代謝されるまでについての「Toxicokinetics」と体内における有害物質が生物に及ぼす影響の大きさに関する「Toxicodynamics」を組み合わせているということですが、ちょっと詳細まで追うのがしんどいです。いつかじっくり読もう。