備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

最近読んだ論文のメモ: ニコチンの生態毒性 その5 ~微生物分解~

まだニコチン関連の論文読んでます。こうやって一つの物質に関して色んな角度から情報を収集するのって、意外と楽しいですね。

 

「カフェイン・コチニン・ニコチンの微生物分解」

Bradley P.M., Barber L.B., Kolpin D.W., McMahon P.B. and Chapelle F.H., 2007, Biotransformation of caffeine, cotinine, and nicotine in stream sediments: Implications for use as wastewater indicators, Environ. Toxicol. Chem., 26(6), 1116-1121. 

カフェインやコチニンを人間活動のマーカー物質として用いる研究があるけど、微生物によって分解されることを考慮しようぜ、という趣旨の論文。ニコチンはおまけ的な扱いですが、その部分だけ拾い読み。

河川底質にニコチンをスパイクすると42日間で、完全にCO2に分解されてしまう。ただ、下水処理場の下流にある底質だとほとんど分解されない。有機物リッチな底質だから、分解実験のバッチが嫌気的になることが原因のようす。

 

 

 「汽水・沿岸域における医薬品の微生物分解」

Benotti M.J. and Brownawell B.J., 2009, Microbial degradation of pharmaceuticals in estuarine and coastal seawater, Environmen. Pollut., 157(3), 994-1002. 

沿岸域で採取した海水にニコチンやカフェインなどをスパイクして、15°C暗所で曝気しつつ培養。一次反応で分解されるとして、ニコチンの半減期は0.68日~9.7日と短め。一方コチニンの半減期は70日~>100日と長めでした。実際ニコチンは下水処理場でほとんど分解されるそうなので、妥当でしょうか。

 

 

 「ニコチン分解の微生物学・生化学」

Brandsch R., 2006, Microbiology and biochemistry of nicotine degradation, Appl. Microbiol. Biotechnol., 69(5), 493-498. 

総説。ほとんど読んでません。ニコチンの微生物分解はPsedomonas属やArthrobacter属などによって行われることが分かってるそうです。高等生物の代謝経路とは異なってます。