前回の記事のネオニコチノイドの曝露時間と影響との関係を書いていて、昔、ネオニコのような神経系の毒は遅発性だと読んだのを思い出しました(この記事とか)。
ネオニコの遅発毒性 delayed toxicity に関する文献を、さらに探ってみました。
「イミダクロプリドは実環境に近い濃度で淡水ヨコエビの摂食を攪乱する」
Agatz A., Ashauer R. and Brown C.D., 2014, Imidacloprid perturbs feeding of Gammarus pulex at environmentally relevant concentrations, Environ. Toxicol. Chem., 33(3), 648-653.
実際の河川で検出されたレベルの濃度(96h-LC10以下)のイミダクロプリドを淡水産ヨコエビG. pulexに96 h曝露させた実験。曝露後は3日間きれいな系に移し、摂食率を測定。結果、高濃度(100 µg/L ≒ 96h-LC10)だとpost-exposureの3日間では摂食率は回復しなかったそうです。 一方で低濃度(< 30 µg/L)では、post-exposureの摂食率はコントロールと同レベルまで回復してます。
post-exposureの3日間で、(摂食率だけじゃなく)致死にも影響が出てないか、それが論文を読んだ目的でした。30 µg/Lは曝露直後の致死は0%だけれど、postexposureの計7日後には致死20% になったとのこと。これはTennekらが言う「ネオニコの不可逆性的 irreversible な結合」に起因するdelayed mortalityだろうと考察されてます。しかしなぜ100 µg/Lの7d致死を示さないのか? 見落としたのかな?
「7種の淡水節足動物に対するチアクロプリドの急性・遅発性毒性」
Beketov M.A. and Liess M., 2008, Acute and delayed effects of the neonicotinoid insecticide thiacloprid on seven freshwater arthropods, Environ. Toxicol. Chem., 27(2), 461-470.
チアクロプリドを7種の節足動物に24時間曝露させ、きれいな系に移し、11~30日後の生存率などを調べた研究。上の論文で使われたG. pulexも登場。Daphnia magnaは個体群増加率まで求めてます。
ちょっと曝露濃度の設定が高すぎる気もしますが、曝露1~5日後に生存率ががくっと下がる例として分かりやすい。
「ミツバチに対するイミダクロプリド毒性の特徴」
Suchail S., Guez D. and Belzunces L.P., 2000, Characteristics of imidacloprid toxicity in two Apis mellifera subspecies, Environ. Toxicol. Chem., 19(7), 1901-1905.
死亡率が対数軸。90%と100%の差が不自然に?強調されてます。delayed effectsはそれほど明確ではないです。