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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 甲殻類の脱皮と金属曝露

論文 生態毒性 分子生物学 重金属

「オオミジンコのecotoxicogenomicsによって金属毒性のメカニズムが推察できる

Poynton H.C., Varshavsky J.R., Chang B., Cavigiolio G., Chan S., Holman P.S., Loguinov A.V., Bauer D.J., Komachi K., Theil E.C., Perkins E.J., Hughes O., and Vulpe C.D., 2007, Daphnia magna ecotoxicogenomics provides mechanistic insights into metal toxicity, Environ. Sci. Technol., 41 (3), 1044-1050.

オオミジンコをCd・Cu・Zn溶液にそれぞれ1/10 LC50で曝露させて、遺伝子発現をマイクロアレイで調べた論文。昔よく読んだ論文ですが、またキチンに関する箇所を読み直し。

キチナーゼhomologous geneが、Zn曝露の時だけ発現が減少してます。キチナーゼの酵素活性も確かに、同濃度のCdとCuよりZnによって、より活性が阻害されてます。キチナーゼが阻害されると、脱皮が上手くできなくなるので最終的には繁殖能も阻害される(からキチナーゼ阻害は良いマーカーになる?)という議論も。

甲殻類の脱皮はホルモンによって制御されていて、有機物曝露によってキチナーゼ活性が阻害される報告はいくつかあったけれども、金属によってキチナーゼが阻害されたというのはこの論文が初めてじゃないか、とのこと。

  

「オオミジンコの遺伝子発現プロファイリング:NOTEL

Poynton H.C., Loguinov A.V., Varshavsky J.R., Chan S., Perkins E.J., and Vulpe C.D., 2008, Gene expression profiling in Daphnia magna part I: concentration-dependent profiles provide support for the no observed transcriptional effect level, Environ. Sci. Technol., 42(16), 6250-6256.

上記論文の続き。同じくCd・Cu・Zn溶液に曝露させてマイクロアレイ解析をしてますが、1/10 LC50に加えて1/10 EC50とNOECも追加。濃度は1/10 EC50 < 1/10 LC50 < NOEC。

定量PCRでキチナーゼの発現変動を確認してますが(Table S4)、別に亜鉛特異的ではなく、銅曝露でも発現は減少してます。この結果だけ見ると、上の論文のキチナーゼ活性の部分はう~んという感じ。ただこの論文では、いくつかあるキチナーゼhomologのうち一つしか試験してないので、あくまで酵素活性は亜鉛に特異的なんだという可能性はまだあるかも。

Cuticle proteinもCu・Zn溶液によって発現低下しています(Table S3)。

 

 

「転写物プロファイリングによるヨコエビの有害物質応答メカニズム評価

Hook S.E., Osborn H.L., Spadaro D.A., and Simpson S.L., 2014, Assessing mechanisms of toxicant response in the amphipod Melita plumulosa through transcriptomic profiling, Aquatic Toxicol., 146, 247-257.

汽水産ヨコエビの遺伝子発現をマイクロアレイで解析した論文。銅・亜鉛などを個別にスパイクした底質にヨコエビを48時間曝露させ、生存個体の発現変動を調べてます。ただ曝露濃度は物質ごとに違っていて、「銅>亜鉛>ニッケル」の順に毒性影響強い。

キチナーゼやcuticle proteinは銅・亜鉛・ニッケルのいずれによっても発現低下。同様にecdysteroid-regulated proteinの発現も、銅・ニッケルによって低下。キチナーゼはcrude oilとdiesel oil以外の全ての系(ピレスロイド系殺虫剤など)で発現低下しています。

 

 

カドミウムはエクジステロイド含量とキチナーゼ・NAG活性を減少させることで淡水カニの脱皮をさまたげる

Luo J., Pei S., Jing W., Zou E., and Wang L., 2015, Cadmium inhibits molting of the freshwater crab Sinopotamon henanense by reducing the hemolymph ecdysteroid content and the activities of chitinase and N-acetyl-β-glucosaminidase in the epidermis, Comp. Biochem. Physiol. C: Toxicol. Pharmacol., 169, 1-6.

カニの眼柄(eyestalk)を除去してカドミウム曝露。カニやエビの眼柄にはX器官という脱皮抑制ホルモン(MIH)を合成する部位があるため、眼柄を切除すると脱皮を誘導するエクジステロイド(ecdysteroid)の分泌が促進されるそうです。

そんでこの論文では、眼柄除去した個体にカドミウムを曝露させると、脱皮にかかわるecdysoneやキチナーゼ等の体内濃度が減少したことを確認してます。カドミウムの濃度が7.25 mg/L~29 mg/Lと高めですが、LC50は232 mg/Lともっと高め。

甲殻類の脱皮とホルモンとの関連は、総説読んでもうちょい勉強しよう。

 

(追記 2017.03.21)

カドミウムによるカニの脱皮阻害

Rodriguez Moreno P.A., Medesani D.A., and Rodrıguez E.M., 2003, Inhibition of molting by cadmium in the crab Chasmagnathus granulata (Decapoda Brachyura), Aquat. Toxicol., 64 (2), 155-164.

上と同じくカニの眼柄を除去してCdに曝露させた研究。上の研究より詳しくて面白い。Cd濃度を増加させると、脱皮しない割合が増えます。そのメカニズムを探るために、甲皮中のCa濃度と血リンパ中のecdysteroidレベルを測定しています。抜け殻中のCa濃度は、Cd曝露によって統計的に有意には変化せず、ecdysteroid濃度も同様でした。Ecdysteroid合成が始まる前の成長段階で曝露されないと、脱皮への影響は生じなかったという結果も。

 

 

 

(追記 2017.03.06)

「オオミジンコにおける亜鉛摂食曝露の分子レベル・高次レベルでの影響

De Schamphelaere K.A.C., Vandenbrouck T., Muyssen B.T.A., Soetaert A., Blust R., De Coen W., and Janssen C.R., 2008, Integration of molecular with higher-level effects of dietary zinc exposure in Daphnia magna, Comp. Biochem. Physiol. D: Genomic. Proteomic., 3 (4), 307-314.

亜鉛汚染藻類をオオミジンコに食べさせて、遺伝子発現や産仔数を調べた論文。

ユニークなのが、脱皮時期・脱皮率のモニタリングをしてる点です。亜鉛曝露の影響が出たのは2回目(3日後)と4回目(6日後)のみで、他の脱皮には影響していない。

亜鉛曝露によってVitellogeninの発現は変動していなくて、影響を受けたのはcuticle metabolism・chitin bindingとミトコンドリア系。ただ影響を受けた時期が違っていて、表皮関連のものは6日後、ミトコンドリア系は13日以降。

Discussionに "Despite this incereasing evidence that metals can also interfere with molting in crustaceans, it remains unclear whether or not this occurs through similar molecular mechanisms as for organic chemicals (e.g., binding to EcR receptor)."との記述あり。