備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 外来種と化学物質汚染

外来種って応用的な問題であって、純粋科学の扱うトピックではないと勝手に思ってましたが、そんなことないかも。壮大な野外実験だと思えば、結構面白い。

 

 

「侵略種はランダムに選ばれているわけではない

Karatayev AY, Burlakova LE, Padilla DK, Mastitsky SE, Olenin S, 2009, Invaders are not a random selection of species, Biol Invasions 11:2009-2019.

北米とヨーロッパにおける淡水無脊椎動物について、在来種と外来種との特徴を比較した論文。外来種は軟体動物や甲殻類の割合が高いとか、懸濁物食者suspension-feederが多いとか。また、外来種は有機汚染に耐性のある種が多いという結果です。

では、汚染耐性はどうやって評価してるのでしょうか。Mandaville (2002) のAppendixによる分類を基にしているようです。Mandaville (2002) の分類は、さらにBarbour et al. (1999, EPA) やBode et al. (1996, NYS Department of Environ Conservation) などを元ネタにしています。しんどいので元ネタの詳細は未確認。どうも野外調査をして、生息状況と生息地点の汚染状況から判断しているっぽいですが…。

 

水質汚染外来種の侵略を増加させる

Crooks JA, Chang AL, Ruiz GM, 2011, Aquatic pollution increases the relative success of invasive species, Biol Invasions 13:165-176.

サンフランシスコ湾で付着生物の銅曝露実験をおこなった論文。護岸沿いにポリ塩化ビニルのプレートを沈めて、4~6週ごとに回収し、複数濃度の硫酸銅に72時間曝露させて海に戻す。その作業を計24週繰り返すという実験です。結果、外来種の方が銅による影響を受けにくく、高濃度でも種数・個体数の変化が生じにくかったらしいです。

考察では、バラストタンクでの輸送など外来種が移動する際にtolerantなものが選ばれた( = "weeding out" procces) のではないか、と述べられてます。自分が気になったのも、これに似ていますが、ここで調べられている外来種集団は既にある程度汚染されたサンフランシスコ湾に定着しているので、(清浄な地点にいた?)元の集団とは異なる形質・汚染耐性を獲得してるんじゃないか、ということ。

上のCrooks et al. (2011) でも気になる点は同じ。汚染耐性は定着後の集団を基にした評価です。

 

「汽水域の状況と侵略種の地理的分布との関係

Dafforn KA, Glasby TM, Johnston EL, 2009, Links between estuarine condition and spatial distributions of marine invaders, Diversity Distributions 15:807-821.

あとで読む。

 

 

野外から採ってきた在来種と外来種とのストレス耐性を調べたという論文はいっぱいあります。流し読みしただけですが、例えば以下。

 

バルト海における在来ヨコエビと非在来ヨコエビにおけるストレス耐性と腹仔数の違い

Sareyka J, Kraufvelin P, Lenz M, Lindström M, Tollrian R, Wahl M, 2011, Differences in stress tolerance and brood size between a non-indigenous and an indigenous gammarid in the northern Baltic Sea, Marine Biol, 158:2001-2008.

生息環境や食性、生活史が似ている在来種G. zaddachi外来種G. tigrinusの熱・貧酸素への耐性を比較した論文。両種は同一地点から採取してます。外来種の方が耐性があるという結果。

 

 「淡水巻貝の非生物ストレスへの高い耐性と侵入成功

Weir SM, Salice CJ, 2012, High tolerance to abiotic stressors and invasion success of the slow growing freshwater snail, Melanoides tuberculatus, Biol Invasions 14:385-394.

繁殖能では在来種B. glabrataに劣るM. tuberculatusの温度、化学物質(Cd・マラチオン)、乾燥に対する耐性を調べた論文。外来種は野外採取、在来種は研究所で継代飼育されているもの。外来種の方が耐性があるという結果。侵入成功している外来種の多くは、繁殖能が高いのでレアな例ではないかとのこと。

 

 「在来種・侵入種・寄生されたヨコエビへのアンモニア毒性

Prenter J, MacNeil C, Dick JT, Riddell GE, Dunn AM, 2004, Lethal and sublethal toxicity of ammonia to native, invasive, and parasitised freshwater amphipods, Water Res 38:2847-2850.

アイルランドでの在来1種と外来2種のアンモニア耐性比較論文。

 

 

外来種の遺伝的な解析については、これから勉強していきたい。