環境化学と環境毒性学の国際学会SETAC Europe 29th Annual Meeting@Helsinkiに参加してきました。
SETACに参加するのは、SETAC North Americaを含めてこれで3度目。正直なところ、若干飽きてきたかも。自分が聞いた代替試験法・OMICS・底質毒性・微量化学物質汚染などの発表では大きな目玉となる動きはなかったです。パラダイムの常識に沿った知見を蓄積している段階と言えば良く聞こえるでしょうか。
代わりに目立っていたのは、マイクロ(ナノ)プラスチックの研究。ホントに多かったです。体感では1/8くらいの発表がマイクロプラスチック関連だったほど。底質毒性や微量化学物質汚染のセッションでもその関連の発表が入り込んでました。ブームってそんなものだと思いますが、発表内容もただ環境中での存在量を測ったというものや有機化学物質の吸着量を測っただけのものなどが多くて食傷気味。良かったのは、リスクを過大に煽るような発表が自分の観測範囲内では見られなかったこと。むしろリスクは検出されなかったという傾向の発表が多かったです。
「面白そうなタイトル」と思って発表を聞きに行ったら論文化されていて既に読んだことある、という経験が数回ありました。もしくは真逆の、これから「こういう内容で研究するよ~」という事前告知やコンセプトだけの発表。研究の盗用があるから、このような状況も致し方ないのでしょうか…。
自分と関係なさそうな研究発表(というか学会?)をもっと積極的に聞きに行かないと、強い刺激は得られないかも。
個別発表・セッションのメモ。
- 底質を凍結して間隙水濃度を5 cm毎に測定した研究。OECD 218と219というスパイク法の違いで濃度勾配の傾向に違いが出る。結果は割と納得いく内容。凍結させる手法はやってみたい。
- 単一物質、単一濃度、単一時間で「OMICSしました~」だけではもう生態毒性分野でも不十分。曝露時間、濃度を複数見ないと厳しい。
- OMICS(というかRNA-Seq)ではヘルムホルツ研究所の発表(Schuttler et al., 2019関係)が良かった。 Self-organizing mapであれこれ。
- morseというecotoxicology用のRパッケージ。既にdrcなどがある中で、TKTDモデルの1種GUTSの使用ができる点が新しいっぽい。Web版のMOSAICもある。