備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: ナノマテリアル曝露に共通する遺伝子発現パターンのメタ解析

Burkard M, Betz A, Schirmer K, Zupanic A, 2019, Common gene expression patterns in environmental model organisms exposed to engineered nanomaterials: A meta-analysis, Environ Sci Technol 54(1): 335-344.

スイスからの論文。

ナノマテリアルに曝露した生物のマイクロアレイデータのメタ解析。シロイヌナズナと線虫(C. elegans)とゼブラフィッシュを一緒に論じるという剛腕っぷり。3種で計11件のメタ解析。レビュー論文を書く代わりにメタ解析してみたよ、という感じなのでしょうか。

 

エネルギー生成、DNA代謝シグナリングが複数の生物種、ナノマテリアルに共通のGO(Gene Ontology)だったそう。ナノマテリアルの影響としてベタな酸化ストレスと遺伝毒性も観察されたそうです。あまり報告例のない影響として、タンパク質のミスフォールディングやDNA/RNAのメチル化が挙げられてます。

こういうGOのfunctional analysisって影響を概観するには良いけど、AOP的にどういうパスウェイ・メカニズムなのか、を考えるには適してないですね。結局泥臭く考えるしかない。例えば本文で「ミトコンドリアダメージ→ROS生成→酸化ストレス→DNAダメージ」という流れが語られてますが(これはすごくベタですが)、こういう流れは論文中で実施されてるメタ解析だけでは見えません。

 

あと手法について。古典的なDEG(differentially expressed genes)検出法(FDR補正p値とFold change)だとDEGの数が少なすぎて議論できないから、代わりにFold changeベースの手法(FCROS; Dembele & Kastner, 2014)でDEGを選び出してます。これはメタ解析論文ではよく見る流れ。