備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 底質(毒性試験)における生物攪拌の影響

2歳半近くになりイヤイヤ期を脱した娘。この1年間くらい、だいたい同じ年齢の甥っ子や姪っ子(つまり娘にとってはいとこ)と会うたびに、おもちゃを取り合って衝突していましたが、ようやくそれが収まる兆しを見せてきたかも。帰省の間、数回に1回、自ら引く姿を見せていました。

大人から見ると明らかに会話が成立していないけど、というか会話すらほぼないけど、年長の子の「イェーイ」的な声に合わせて2歳頃の子たちが爆笑する様子が面白い。

 

Ciarelli S, van Straalen NM, Klap VA, van Wezel AP, 1999, Effects of sediment bioturbation by the estuarine amphipod Corophium volutator on fluoranthene resuspension and transfer into the mussel (Mytilus edulis), Environ Toxicol Chem 18(2): 318-328.

古いけど見落としていた論文。フルオランテンをスパイクした底質に、ヨコエビCorophium volutatorとイガイMytilus edulisを30日間曝露させ、イガイへのフルオランテンの移行などを調べた研究です。ヨコエビの数が増えると、ヨコエビの活動( = bioturbation)によって懸濁粒子が増えて、イガイへのフルオランテンの移行量も増えています。

よくある感じの研究ですが、上層水におけるフルオランテンの溶存態と懸濁態や、間隙水中の濃度をちゃんと測定しているのがポイント高い。

 

 

2021年によく聴いた音楽

Spotifyで2021年によく聴いた曲のリスト。

今年は通勤中LEX聴きまくってました。LEXは本当に聴き心地が良い。声がひとつの楽器という感じ。あまりRapとかHip hopに囚われてない感じなのも良い。基本何言っているのか分からないし、歌詞見てもやっぱり何言ってるのか分からないことが多いですが。

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BAD HOPとElle Teresaは去年から引き続き。

Jin Doggは今年からちゃんと聴きました。Jin Doggは言葉がスッと頭に入ってきます。このレベルはKOHH以来かも。その分、攻撃的な曲は聴くのが辛い時もあるかも。

あとランクインしてたのはkim taehoon、JP THE WAVY、Creepy Nuts、OZ Worldとか。High School DropoutのDADAは最近割と聴いてましたが入ってなかった。たぶん12月から聴き始めたから集計されてないっぽい。f:id:Kyoshiro1225:20211228203436p:plain

 

論文のメモ: マイクロプラスチックとバイオフィルム

論文書きのための論文読みばかり続くと、テンション下がってきますよね。漫然と読みたい時もある。てことで面白そうだったマイクロプラスチック論文。今のところマイクロプラには(ほぼ)自らの研究でかかわってませんが、来年度はいくつか関わりそうな感じ…。

 

Amariei G, Rosal R, Fernández-Piñas F, Koelmans AA, 2021, Negative food dilution and positive biofilm carrier effects of microplastic ingestion by D. magna cause tipping points at the population level, Environ Pollution 118622.

ポリエチレン(PE)を下水流入水で1〜3週間培養したら、PEを与えない場合に比べてむしろオオミジンコの14-day生存率が増加した。これは、培養することでPE表面にバイオフィルムができ、ミジンコの餌として機能し、PEマイクロプラスチックの主な毒性原因である"food dilution"が働かなくなったからでは、というお話。"food dilution"を軸にするために、そもそもの生存試験の餌の藻類を低濃度(0.0125 mgC/L/day)で与えています。

"To our best knowledge this work is the first quantitative assessment of this interaction(=biofilm形成とMP自身の影響)."と書いてますが、その定量的な議論はいまいち追いきれず。

 

Schür C, Weil C, Baum M, Wallraff J, Schreier M, Oehlmann J, Wagner M, 2021, Incubation in Wastewater Reduces the Multigenerational Effects of Microplastics in Daphnia magna, Environ Sci Technol 55(4): 2491-2499. 

Norwayのグループの論文。上と同じように、下水流入水で38時間培養したポリスチレン(PS)を、低餌濃度で(0.05 mgC/daphnid/day)オオミジンコに曝露して、多世代の生存や産仔を見ています。こちらの論文でも、下水で培養することでマイクロプラスチックの毒性は下がっています。その原因はほぼdiscussionのみ。培養によって表面のチャージや粒子径に変化はなかったと書いています。

 

 

論文のメモ: 地表オゾン濃度の季節変動

Tanimoto H et al., 2005, Significant latitudinal gradient in the surface ozone spring maximum over East Asia, Geophys Res Letters 32(21): 1-5.

忘れそうなのでメモ。

地表のオゾン濃度には季節的な周期性があって、日本含む東アジアでは春に高くなる。北の方ほど最高濃度に達する時期が遅めで、日本は5月ころに最大になる。このへんに詳しい。

 

ちなみに東京都の過去のオゾン濃度、ではなく光化学オキシダント濃度は東京都環境局で入手可能。

SETAC NA 42nd Annual Meeting

オンライン開催。

自分は共著の発表一つだけしかしていませんが、いくつか発表を聞いてました。オンライン開催だと、新しいヒト・発表への出会いが中々うまくいかない反面、いつでも発表が聞けるのは嬉しい。なお、リアルタイムの催しは一つも参加できませんでした。。

 

 

6PPD-quinone関係の発表が10個もありました。Q&Aも盛り上がっている気がしました。なんとなく。

  • 02.09.10: ギンザケに路面排水を曝露させて、トレーサー物質の脳への移行を調べたもの。Blair et al. (2021, Canadian J. Fish Aquat. Sci.) の続き。魚のsurfacingの前から既にトレーサーは脳に移行しつつあり、血液脳関門(BBB)は破壊されている様子。鰓についても同様にleakingあり。しかし3時間以内に反応が出るというのは速い。どういうメカニズムなのか。
  • 04.03.01: 6PPDとタイヤ破砕物をオゾン酸化させて、6PPD-Qの生成率を観察。モル割合で、6PPDのせいぜい10%以下しか6PPD-Qにならない。タイヤ破砕物の場合、わずか1%。
  • 04.12.09: Science論文の筆頭著者によるプレゼン。合成した6PPD-Qは、市販品に比べて15倍もピークが低く、これまでの定量結果は過大評価だったとのこと。更新されたギンザケのLC50は95 ng/L。低い!
  • 04.12.20: 河川底泥から6PPD-Qはほとんどの場合検出下限以下(< 0.25 ng/g)だったとのこと。雨が降った後でも、雨が200日(!)降っていない場合でも同じ。

 

その他の発表。

  • 01.14.11: Hyalella aztecaの胚発生試験の開発。ヨコエビの胚発生モデルと言えばP. hawaiensisがありますが。これはやってみたい! まずオス・メスそれぞれ分けてから2週間置いて、その後ペアを作成し、解剖して取り出す。
  • 02.01.10: H. aztecaの慢性繁殖試験について。オーストラリアのMelita pulumulosaの試験に触発されて、性成熟した個体を用いてオスの割合を減らせば、産仔数のばらつきを減らせるんじゃないかという提案。個人的には実用化するとはあまり思えませんでしたが。
  • 03.04.04: 低濃度のネオニコは蝶の蛹化を阻害する。Crustacean cardioactive peptide (CCAP) の阻害がメカニズム?
  • 01.05.02: Altenburger氏らのzebrafish transcriptomics。前からself-organizing mapを用いた解析をしてましたが、今回はmixture effectsに応用。作用機序の異なる物質間の、遺伝子レベルの応答でもconcentration addition (CA) モデルで予測できるというのは面白い。しかし細かいところは正直フォローできてません。この手の研究では一歩抜きんでている印象。

あまり真新しく感じたのはなかったけど、その他AOPとか、底質汚染関係とか、無脊椎動物関係などをよく聞きました。依然として発表が多かったマイクロプラとPFASは正直あまり聞いてません。

深夜のウェブ国際会議

オンラインの某国際会議に参加しました。

ヨーロッパの国が主催なので、日本時間では夕方から夜(23時)まででした。家には小さい子供がいて、しかも私個人の部屋(も机)などない。さらに、話を聞くだけでなくて、21時半頃に話をしなければならない。

ということで近くのレンタルワークスペースで会議に参加することに。電話ボックスよりわずかに広い部屋で5時間。Wifiつきで約1,500円。同じ時間帯に複数の利用があったっぽいですが、誰とも顔を合わせず、また音漏れなどもほとんどなく、思ったより快適に過ごせました。こんなサービス、コロナ前から自宅近くにあったのかな?

 

肝心の会議は、相変わらず英語が分からないことは置いといて、割と楽しめました。サイエンスとしての面白さというより、社会勉強的な面白さですが。

論文のメモ: TRWPの環境中での変化

Wagner S, Klöckner P, Reemtsma T, 2021, Aging of tire and road wear particles in terrestrial and freshwater environments–A review on processes, testing, analysis and impact. Chemosphere: 132467.

タイヤ由来の微量物質やマイクロプラスチックなどの分析をしているUFZのグループから総説。2018年にも同じグループがタイヤ粒子の生態影響に関して総説を出しているので、またかいと思いつつも読みました。

タイヤ・道路摩耗粒子(TRWP)の環境中での変化について。具体的には、熱酸化、光酸化、オゾン酸化、生物分解、そして溶出。6PPDは6PPD-Qより水溶解性が高いと書いてますが("For example, ozonation of 6-PPD results in 6-PPD-quinone (Lattimer et al., 1983) which has a higher solubility compared to its parent compound")、これは逆ですね。

 

論文のメモ: 先行晴天時間と道路塵埃

雨が降ると河川や湖沼に流れ出る道路塵埃(路面粉塵)。道路塵埃中には多くの有害物質が含まれるので、降雨時の水域で水生生物への悪影響が検出されることが、しばしばあります。

雨が降るまで道路塵埃が路面上で放置される時間(先行晴天時間; antecedent dry weather period)によって、道路塵埃の量や塵埃中有害物質の濃度はどう変わるのか、について論文を読んだのでメモ。物質は主に多環芳香族炭化水素(PAHs)。

 

Zhang J, Li R, Zhang X, Ding C, Hua P, 2019, Traffic contribution to polycyclic aromatic hydrocarbons in road dust: a source apportionment analysis under different antecedent dry-weather periods, Sci. Total Environ. 658: 996-1005. 

先行晴天時間1, 5, 10日の道路塵埃を、ドイツ・ドレスデンで採取して、道路面積あたりのPAHs収量(g/m^2)と塵埃中のPAHs濃度(mg/kg)を測定。収量は先行晴天時間に伴って増加したが、濃度は一度下がってまた増加したそうです。後半の理由がいまいちよく分かりません。粒子径分布が(風の影響とかで)変わっているかもしれないので、そのようなデータもあれば良かったです。

 

Gbeddy G, Egodawatta P, Goonetilleke A, Akortia E, Glover ET, 2021, Influence of photolysis on source characterization and health risk of polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs), and carbonyl-, nitro-, hydroxy-PAHs in urban road dust, Environ Pollution 269: 116103. 

オーストラリアで採取した道路塵埃への254 nm UV照射実験。ピレンやナフタレン、フェナントレンは照射によって濃度が変化しやすいが、フルオランテンやベンゾ[a]ピレン、クリセンなどは比較的安定。生の濃度データはGbeddy et al. (2021, EES) の方に示している?変化のしやすさは蒸気圧と関係するかも*1、ということもEESの方に記載あり。

 

Gbeddy G, Jayarathne A, Goonetilleke A, Ayoko GA, Egodawatta P, 2018, Variability and uncertainty of particle build-up on urban road surfaces, Sci Total Environ 640: 1432-1437. 

細かい粒子(< 75 μm)の溜まり方は予測が難しい。場所(やタイミング?)によって増えたり、減ったり。でも塵埃全体(< 3mm)の量は、先行晴天時間が増えるとべき関数に従って増える。

 

Wang J, Huang JJ, Li J, 2019, A study of the road sediment build-up process over a long dry period in a megacity of China, Sci Total Environ 696: 133788. 

あまりちゃんと読んでません。40日間も先行晴天時間があると塵埃の蓄積量はかなりカオスで予測不能という話。sinカーブでフィッティングする理由は不明…。

 

Ozaki N, Akagi Y, Kindaichi T, Ohashi A, 2015, PAH contents in road dust on principal roads collected nationwide in Japan and their influential factors, Water Sci Technol 72(7): 1062-1071. 

日本各地から塵埃(< 2mm)を採取して、PAHs濃度を分析。塵埃PAHs濃度と先行晴天時間との相関は微妙。1か所から繰り返し採取した場合でも同様。

 

 

ざっくりまとめると、ある地域全体の塵埃量(=雨天排水中のSS量)は先行晴天時間に伴って増加するが*2、塵埃中の物質濃度がどう変化するかは風などの要素が絡むため予測困難である、あるいは濃度そのものは別に変化しない、という感じでしょうか。

 

 

 

(追記 2021.10.31)

古いクラシカルな論文の方が、塵埃量と時間の関係(build up & wash off process)について納得いく説明しているものがある気がします。

上の論文たちは、build up processに着目したものが多いけど、wash offの不確実さ(=雨が降っても全ての塵埃が流されるわけではない)も考えないと塵埃量と先行晴天時間の関係は説明できないかも。

 

Sartor JD, Boyd GB, Agardy FJ, 1974, Water pollution aspects of street surface contaminants, J Water Pollut Control Fed 46(3): 458-67.

塵埃のBuild-upの過程の超古典っぽい論文。先行晴天時間が長いと塵埃の量は多くなるという知見と、細かい粒子ほど有害物質が高濃度に含まれるという結果を提示してます。ただし前者はかなりばらつきが大きい。

 

Vaze J, Chiew FH, 2002, Experimental study of pollutant accumulation on an urban road surface, Urban Water 4(4): 379-389.

道路に溜まった塵埃の全てが降雨で流されるわけではないことを実験的に示した論文。

 

*1:そこまで明確に書いてませんが。

*2:例えばLi et al., 2007とか。https://doi.org/10.1016/S1001-0742(07)60048-5

論文のメモ: AOPとComplex simplicity

Knapen D, 2021, Adverse outcome pathways and the paradox of complex simplicity, Environ Toxicol Chem. in press.

短い意見論文。ET&CのPoints of Referenceという枠。

AOP NetworkのKnapen氏が書いてたので、読んでみました。

AOP(Adverse Outcome Pathways)は、生物の複雑さを表現するにはシンプル過ぎるし、でも使用するには複雑過ぎる、という話。それに対し、Knapen氏はスティーブ・ジョブズを引用しながら、今は過渡期だからエレガントではないけど、あと何か"key, the underlying principle of the problem"が見つかれば、AOPは生物の複雑さを考慮しつつもエレガントに使えるようになるよ、と述べてます(意訳)。現状と方向性はおおむね同意でした。ただ生物の複雑さ(毒性メカニズムとか)の知見が揃っているとは自分はあまり思ってないのですが、魚(Knapen氏はゼブラフィッシュなどを扱ってるようす)と無脊椎の違いでしょうか。

冒頭の以下の文章笑いました。"AOPs are thus often perceived as being too simple and too complex at the same time, raising concerns that they may in fact slow down hazard and risk assessment instead of being a catalyst for supporting 21st century toxicology."

 

 

論文のメモ: 2021年に出た6PPD-Qの報告

ギンザケ死亡症候群の原因物質であると昨年末報告された6PPD quinone(6PPD-キノン)の話(→昨年末のScience)。今年になって環境分析の結果がいくつか出てきたので、まとめ。

 

 

Huang W, Shi Y, Huang J, Deng C, Tang S, Liu X, Chen D, 2021, Occurrence of substituted p-phenylenediamine antioxidants in dusts, Environ SciTechnol Letters 8(5): 381-385.

2021年の4月に公開された論文。投稿は2月!早い!

道路や駐車場、車内の塵埃を採取して、p-Phenylenediamine(PPD)類濃度を測定した論文。6PPD-Qは標準品がなかったため、親物質の6PPDの検量線を用いてます。

車内から採取した塵埃では6PPD-Q/6PPDの比が他に比べて高かったことから、車内で酸化されて6PPD-Qが生成されたのでは、と書いてますが、下Klöcknerら(2021, ES&T)を読んだら、単純に6PPDが分解されただけな気がします。

 

Klöckner P, Seiwert B, Weyrauch S, Escher BI, Reemtsma T, Wagner S, 2021, Comprehensive characterization of tire and road wear particles in highway tunnel road dust by use of size and density fractionation, Chemosphere 279: 130530.

2021年の4月に公開された論文。高速道路の塵埃を採取して、サイズや密度で分画した粒子中のベンゾチアゾール類や亜鉛、6PPD、6PPD-Qの濃度を測定してます。ただし6PPD-Qのみ標準品がなかったため、ピークエリアのみ。6PPD-Qは>250 μmにはあまり検出されてません。

 

Johannessen C, Helm P, Metcalfe CD, 2021, Detection of selected tire wear compounds in urban receiving waters, Environ Pollution 287: 117659.

これは2021年6月公開。実験開始時には6PPD-Qの標準品がなかったため、6PPDをオゾン酸化して6PPD-Qを合成してます。最終的には標準品で純度を検証。高速道路の排水の下流で雨天時に水を採取してhexamethoxymethylmelamineと6PPD-Q、diphenyl guanidineを測定。6PPD-Qの最大実測値は0.72 μg/Lで、ギンザケに対する24-h LC50と同程度(0.8 μg/L; Tian et al., 2020)。

※追記:ギンザケに対するLC50は0.095 ug/Lに修正されました(こちらの記事参考)。

 

Johannessen C, Helm P, Lashuk B, Yargeau V, Metcalfe CD, 2021, The tire wear compounds 6PPD-quinone and 1, 3-diphenylguanidine in an urban watershed. Arch. Environ. Contam. Toxicol.: 1-9.

これは2021年8月公開。上と同じグループから。上記Environ Pollutionと同じ場所から2019年と2020年に採取した水試料を固相抽出して、6PPD-Qとdiphenyl guanidine(DPG)を測定。ちなみに固相抽出にサロゲートは加えていません(が標準試料を加えた際の6PPD-Q回の収率は98%だそう)。6PPD-Q実測濃度の最大は2.3 μg/Lで、ギンザケの致死濃度を超えていました。

面白いのは、DPGは降雨開始直後に濃度のピークが来てすぐに濃度が低下するのに、6PPD-Qは降雨開始から数時間後に上がり始め、20時間ほど高い濃度が維持される点。おそらく疎水性の違い(DPGは比較的水に溶けやすいが6PPD-Qは溶けにくい)。

 

Klöckner P, Seiwert B, Wagner S, Reemtsma T, 2021, Organic Markers of Tire and Road Wear Particles in Sediments and Soils: Transformation Products of Major Antiozonants as Promising Candidates, Environ Sci Technol

2021年8月公開。一番上のKlocknerら(2021, Chemosphere)と同じUFZのグループから。タイヤのマーカ物質の探索を目的に色々やってますが、6PPD-Qに関するとこだけピックアップ。6PPD-Q濃度はサロゲートを用いた補正はされてません。

タイヤ破片中の親物質の6PPDはXeアークランプで照射(自然光2~7週間相当)すると濃度が減少するが、6PPD-Qはほとんど減少しない。またLC/MS/MSによる6PPD-Qの定量は、フラグメント(m/z: 187)より元のm/z 299の方が感度が良い。タイヤ破片あるいは道路塵埃を用いた溶出液(2 g/L, 48h)で6PPD-Qがほぼ検出されない(これは降雨時の報告からすると意外。溶出にプラスチックを使って吸着してロスしている可能性ある?)。

 

(追記 2021.09.24)

Zhang Y et al., 2021, p-Phenylenediamine Antioxidants in PM2.5: The Underestimated Urban Air Pollutants, Environ Sci Technol

2021年9月公開。中国からPM2.5中のPPD類の報告。6PPD-Qがオゾン酸化によって生成されるという話に基づき、6PPD-Qとオゾン濃度(あるいは6PPD)との相関も見ています。論文では相関係数を示して相関があると書いてますが、散布図も見せて欲しいところ。この点については判断保留。

6PPD-Q以外のPPD類のキノンも検出しています。ただ、標準品がないため定性的な分析のみ。

 

(追記 2021.09.27)

Challis JK, Popick H, Prajapati S, Harder P, Giesy JP, McPhedran K, Brinkmann M, 2021, Occurrences of Tire Rubber-Derived Contaminants in Cold-Climate Urban Runoff, Environ Sci Technol Letters.

2021年9月公開。カナダ。2019年の雨天時排水stormwaterと2020年の河川水をretrospectivelyに分析。6PPD-Qだけでなく、N,N'-diphenyl guanidine(DPG)などの二環アミン4種も分析。

6PPD-Qは他のアミンと比べ、検出濃度のピーク時期が異なっています。雨天時排水中の6PPD-Q濃度は平均593 +/- 525 ng/Lで、時にはギンザケのLC50(800 ng/L)を超えています。

※追記:ギンザケに対するLC50は0.095 ug/Lに修正されました(こちらの記事参考)。