疎水性物質の毒性試験では、通常アセトンやDMSOなどのキャリア溶媒を用いて試験溶液を作成します。そのキャリア溶媒の使用に関する論文(2013年, Aqua. Toxicol.)は、このブログでもまとめを書きました(→「キャリアーとしての有機溶媒の使用:実務・統計・レギュラトリー面での考察」)。
次の論文は、その2013年論文の元ネタです。アセトン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、エタノール、メタノール、トリエチレングリコールをキャリア溶媒として用いた際に水生生物の急性・慢性影響が生じるかどうか、のレビューです。
Hutchinson T. H. et al., 2006, Acute and chronic effects of carrier solvents in aquatic organisms: a critical review, Aqua. Toxicol., 76, 1, 69-92.
内容は、先日読んだ2013年の論文とほぼ同じですが、cytochrome P450に関する内容が新しかったので下に簡単にまとめ。
cytochrome P450(以下、CYP)とは、活性部位にヘムを持つモノオキシゲナーゼの総称です。CYPは、内因性物質(endogenous substances)の生合成や、異物(xenobiotics)の代謝において、酸化作用を担う酵素です。
詳しくはフォロー出来てませんが、キャリア溶媒がCYPを阻害したり、逆にCYPの発現を誘導することがあるそうです。後者の例として、CYPの発現が誘導されると、卵黄タンパクであるビテロジェニンの生合成を阻害し、繁殖に影響が出るのだとか(ここのくだりが正直よく理解できていない)。