有名で、既に知っている話が多かったです。ワトソンとクリックがウィルキンスを通じてフランクリンのX線写真を見ていた、とか韓国のES細胞論文捏造の黄禹錫とか。理系の院生以上なら多くの話は知っているでしょう。
たしか「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか、という副題を見て買ったのだと思いますが、本書のタイトルは書き過ぎです。実際の内容は「科学技術・研究にまつわる色々な話」ぐらいです。
竹内薫, 2011,科学嫌いが日本を滅ぼす-「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか-, 新潮選書
いくつか知らなかった話、面白かった話もあったので、下にメモ。
- 科学の世界で英語が覇権を握ったのは、戦後のこと。例えばアインシュタインの論文で最も被引用回数が多いブラウン運動の論文は、ドイツ語で書かれている。
- 科学史に残る大発見には、査読システムを経ていないものが多い*1。例えばワトソンのクリックのDNAの二重らせん論文やアインシュタインの「奇跡の年」の論文は、雑誌の編集長が独断で掲載を決めている。
- 日本の雑誌でも良いから、英語で発表するのが大事。フラーレンの存在を理論的に予言した大澤映二は、その先見性にもかかわらず日本語で論文を発表したため、ノーベル賞を受賞できなかった。一方湯川秀樹や朝永振一郎のノーベル賞につながった業績は日本雑誌に英語で発表されている。
科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか (新潮選書)
- 作者: 竹内薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/12/22
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
*1:言われてみりゃそりゃそうか、って感じですが。