「ネオニコチノイドが水系食物網を崩壊させ漁獲高を減少させる」
Yamamuro M., Komuro T., Kamiya H., Kato T., Hasegawa H., Kameda Y., 2019, Neonicotinoids disrupt aquatic food webs and decrease fishery yields, Science 366: 620-623.
話題になっていたのでざっと読んでみました。ネオニコチノイド系農薬によってユスリカなど無脊椎動物が減少し、それらを餌とするウナギやワカサギが減少したという話。
大筋には異論ないし、ネオニコが長期的に影響していることはありそうに思えます。汽水に着目してるのも面白い。
ですが、ネオニコの使用が開始された1993年から急に影響が出始めた、という風に読めるのはちょっと書きすぎでは…。1993~1995年のネオニコ(というかイミダクロプリド)の出荷量はFig.1から現在(2018年の値はないけど)の1/5程度。2018年のイミダクロプリドの実測濃度が約0.01 μg/L(Fig. S10)なので、1993~1995年の濃度はおそらくそれ以下であり、冒頭で引用している慢性影響が懸念される濃度 0.035 μg/L(Morrissey et al., 2015, Environ. Int.; 未確認)より低いことになります。それほど低濃度の農薬の影響が散布された年に急に現れるとは思えません…。もちろん農薬の濃度は時空間的なばらつきが大きいから、当時局所的にめちゃ高濃度なところがあった可能性は否定できませんがね。
調べたら1993年は記録的な冷夏ということなので、1990年代初頭に限ってはその影響の方が大きいように思えます。と言ってもこんな素人考え的なことは既に考慮されてるでしょうか。
まあでも、こういう疫学的な研究は大事。もっと多角的に攻めれば(例:Nakanishi et al., 2018)、因果関係の信頼性はより強固になるでしょう。
あとこれほど長期のモニタリングデータがあるのは素晴らしいですね。
(2019.11.06追記)
件のScience論文、元データを漁ったら農林統計の生データをそのまま使っていることが発覚。うーん、努力量補正がないのはひじょーに問題があると思うんですが。内水面漁業はここ40-50年の間に衰退しているはずなので、努力量の減少を反映しているだけの可能性が。。。
— Akira Terui (@m_laevis) November 5, 2019
ちゃんとCPUEを算出した松崎さんたちの論文では宍道湖でそのような漁業資源の減少は示されていないようです。 https://t.co/Ca4RCIOKLO
— Jun Nishihiro / 西廣 淳 (@jnishihiro) November 5, 2019
こんな指摘も。