備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 水質基準導出の毒性データにおける水生生物種の多様性

Coleman AL, Edmands S, 2022,  Data and Diversity in the Development of Acute Water Quality Criteria in the United States, Environ Toxicol Chem 41(5): 1333-1343.

自然界の生物種の多様性に比べると、ごくわずかな生物種の毒性データに基づいて設定されている、化学物質に関する水質基準。そのデータセットの多様性が米国で初めに生物に対する基準が設定された1985年から変わっているのか、基準に使用されたデータの生物多様性と基準値は関連しているのか、などを調べた論文。後者は、現在入手できるデータをランダムに再選別して評価している様子。

結果、多様性は過去からあまり変わっておらず(毒性データの種数は増えても魚類と節足動物が増えてるだけ?クラゲcnidariaなど一部の新規分類もありそうですが)、基準値と多様性の関係は明瞭ではなかったそうです。

 

問題意識としては、SSD(Species Sensitivity Distribution)に用いられる生物種は偏っていることを問題視したこの論文(Moore et al., 2020, IEAM)も近いです。自分も似た問題意識を持ってますが、このET&C論文のような過去との比較というアプローチはとらないだろうな、と思ったので面白かったです。自分なら、化学物質のメカニズムから出発して、生物分類群が変われば基準値が変わると想定される事例をベースに解析しますね。