備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 魚類急性致死試験の代替法としてのFET試験の改良

魚類胚を用いた急性毒性試験(Fish Embryo Acute Toxicity Test; FET試験)の話。代替試験法を従来の試験法に近づける話という意味では、この記事の話などに近いです。

 

Reichstein IS, Becker AH, Johann S, Braunbeck T, Schiwy S, Hollert H, Schiwy A, 2024, Biotechnological metabolization system has the potential to improve the predictive ability of the fish embryo acute toxicity (FET) test with the zebrafish (Danio rerio), Environmental Sciences Europe 36(1): 1-15.

FET試験は、稚魚をもちいた魚類急性致死試験(OECD Test Guideline 203; AFT)の代替法として位置づけられていますが、胚の代謝能が低いので毒性を過小・過大評価する場合があるのでは、という欠点が指摘されています。そこで、「代謝させてからFET試験してみたよ」という論文。代謝は、ラット肝臓S9画分やewoS9Rというpermanent cell line由来の画分を使用して、37°C・2時間処理することで実施しています。

結果、Allyl alcoholは代謝を事前に行うことで、FETのLC50がAFTのLC50と近づきました。代謝活性化を評価できています。Bisphenol Aでは代謝により解毒されたのか、FETのLC50はやや増加。しかし、もともとFETとAFTの差は多くの物質で大きくないので、あまり効果は見えづらいようです。FETとAFTで差のあるクロルピリホス(AFTではLC50が10 µMで、FETでは> 100 µM)では、代謝による効果が見られていません…。Bioavailabilityの問題かもと書いていますが、もともと神経毒性はFETで検出しづらいと言われていますからね。

試験物質の曝露濃度や代謝物濃度を実測していないのは、結構大きなマイナスかも。

 

 

von Hellfeld R, Pannetier P, Braunbeck T, 2022, Specificity of time-and dose-dependent morphological endpoints in the fish embryo acute toxicity (FET) test for substances with diverse modes of action: the search for a “fingerprint”, Environ Sci Pollution Res 1-17.

上の論文でも共著に入っているBraunbeck氏らの研究。FET試験では、4つのエンドポイントが定められていますが(凝集・体節形成・尾部剥離・心拍の有無)、他に観察したら作用機序と分かるよ、という提案です。作用機序の異なる18物質に曝露して、高濃度ではspecifcな変化は見られなかったが、EC50より低い低濃度ではspecificな変化が見られたとのこと。もっとも高濃度でも、眼の肥大化や脊椎湾曲など少数の物質でしか見られない影響もあるようです。

この論文はまだpreliminaryな感じで定性的な評価にとどまっていますが、動画・画像解析と組み合わせて定量化して欲しいです。心拍とかはすぐにでも出来そう。