備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 金属曝露とヨコエビの繁殖阻害

前回にひき続き、甲殻類への金属毒性のメカニズム勉強中。

 

ヨコエビの生殖学と内分泌制御についての総説

Hyne R.V., 2011, Review of the reproductive biology of amphipods and their endocrine regulation: identification of mechanistic pathways for reproductive toxicants, Environ. Toxicol. Chem., 30 (12), 2647-2657.

曝露によって繁殖能が低下する原因は、ざっくり言うと脱皮の阻害と卵形成(vitellogenesis)の2つ。でも別にこの2つは独立の現象でもなさそうです。例えば、Y器官から分泌されるエクジステロイドは、脱皮もVitellogenin合成も促進するみたい。繁殖能の阻害の報告が多いのはやはり有機ですが、金属類でもCdによる阻害はヨコエビで報告があるとのこと。

総説の主題ではないですが、ω-3脂肪酸が不足すると産仔数が減少するんじゃないかという話は面白そう(→Hyne et al., 2009; Sundelin et al., 2008)。

 

「金属汚染底質に曝露されたヨコエビの産仔数が減少しても二次卵黄形成は継続される

Hyne R.V., Mann R.M., Dillon C.T., de Jonge M.D., Paterson D., and Howard D.L., 2013, Secondary vitellogenesis persists despite disrupted fecundity in amphipods maintained on metal-contaminated sediment: X-ray fluorescence assessment of oocyte metal content, Ecotoxicol. Environ. Safety, 93, 31-38.

Pbなど金属曝露による繁殖阻害のメカニズムは、亜鉛を含むタンパクであるVitellogenin(VTG)への亜鉛の結合を他の金属が阻止するからではないか、という仮説を検証した論文。亜鉛・銅・カドミウム・鉛をスパイクした底質にヨコエビを曝露させて、卵巣における金属の分布を蛍光X線分析で調べています。既に抱卵したメスと成熟したオスを曝露させてます。

結果、卵母細胞に亜鉛は分布しているし、control系と曝露系で大きな違いはなさそうで、secondary vitellogenesis(別の場所で作られたvitellogeninが卵巣の卵母細胞に取り込まれること?)は汚染系でも進んでいるというものでした。仮説は否定されたということで、他に有りうる繁殖阻害のメカニズムは、脱皮サイクルの遅れやCa摂取阻害(Muyssen et al., 2006)などではないかとの考察。

 

 

 「水生無脊椎動物における金属の毒性・摂取・蓄積―甲殻類における亜鉛

Rainbow P.S. and Luoma S.N., 2011, Metal toxicity, uptake and bioaccumulation in aquatic invertebrates—modelling zinc in crustaceans, Aquatic Toxicol., 105 (3), 455-465.

以前読んだ総説ヨコエビOrchestia gammarellusの話。