名著という噂は知っていましたが、本当に名著でした。もっと早く読めばよかったです。
本書は、「理科系の人が仕事のために書く文章」を対象にすると書かれていますが、文系の人にも非常に有益だと思います。筆者の言う「理科系のための文章」とは、論文・報告・レポート・手紙など、情報と意見の伝達を目的とする文章のことです。これらの文章は、文系の人でも書かざるをえない状況が多々あるでしょう。「理科系の」という言葉は、心情的な要素を伝える文章は対象外にするという断りでしかありません
本書はただの文章書きのハウツー本ではなく、少し大げさですが「論理的かつ明快に考え、表現するためにはどうすべきか」の哲学が詰められた書籍でしょう。その哲学は、「いかに良い研究をするか」とリンクします。そのため本書を何度も読み返して、書かれている哲学を自分のものにすることは、研究者にとって有益だと思います。
私は、仕事の文書はすべてこういう重点先行主義で書くべきものと考える。(p. 32)
本書で何度も出てくる概念が「重点先行主義」です。大事なことは先に言え、ですね。
文書はまず、何を目標とした文章なのか、何を主張したいのか、をまとめた目標規定文から始め、読者に「その文書をそもそも読むべきかどうか判断させる」のが良いと言います*2。例えば「この論文は・・・を示す」「この報告では・・・を主張する」のような形です。つまり一番始めに、文書の結論・まとめを持ってくるわけですね。
「重点先行主義」は文書全体に関してだけでなく、もっと小さい部分―各パラグラフにも関係します。パラグラフは、文字数で適当に区切られた塊ではなく、ある一つのトピックについて述べた文が集まったものです。そのため、パラグラフには通例そのトピックについて概観的に述べたトピックセンテンスが含まれます。重点先行主義から、トピックセンテンスをパラグラフの冒頭に置くと良いと筆者は主張します*3
あと心に留めておきたいことを下に。
- 逆茂木型*4の文章を書かない(p. 78-)。
- 論文は読者に向けて書くべし。著者の想い、苦労話はどうでも良い(p.87)。
- 事実と意見は明確に区別して書くべし(p.110-)。
- 受け身の文は排除すべし。「・・・と思われる」の類。責任回避だ(p.137-)。
こう書いてみると、全て当たり前のことに思えます。当たり前のことを実行するのが難しい・・・。やっぱり、こういうブログの文章でも意識し続けないといけませんね。それは中々難しいけど。