備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: Target Lipid Modelとその底質基準への応用

// USEPAのPAHの底質基準(USEPA,2003,EPA/600/R-02/013)のベースとなっている理論であるTLMと、その底質基準への応用について。 Di Toro DM, McGrath JA, Hansen DJ, 2000, Technical basis for narcotic chemicals and polycyclic aromatic hydrocarbon c…

論文のメモ: 平衡分配法における分配係数Kocの不確実さ

// 前回書いたように、底質基準の設定法にはざっくり3つのアプローチがあります。 2つ目のアプローチ(EqP)では、分配係数Kdと水のみ曝露の毒性値Cw(≒水質基準値)を用いて、底生生物に影響の生じうる底質濃度Csを算出します。 (Eq.1) このKdは通常、底質…

論文のメモ: 生態系保全のための農薬の底質基準

ひきつづき自宅就業中。 Nowell LH, Norman JE, Ingersoll CG, Moran PW, 2016, Development and application of freshwater sediment-toxicity benchmarks for currently used pesticides, Sci Total Environ 550: 835-850. ちら見して放っていた論文。底質…

「すごい進化」感想

面白いし、読みやすい。オススメです。 一見すると不合理な進化、例えば不完全な擬態など、はどうして生じるのか。 なんらかの制約によって進化が中途半端になってしまったのか、それとも実は自然淘汰を経て十分に適応した結果(=環境に適した形質が残った…

論文のメモ: ヨコエビのサイズと細粒分への応答

絶賛自宅就業中。 Anderson B, Phillips B, Voorhees J, Siegler K, Trowbridge P, 2020, Size-specific responses of the amphipod Eohaustorius estuarius to clay in sediment toxicity testing, Environ Sci Pollut Res 1-8. ここに昔書いたのと同じマイ…

論文のメモ: 化学物質の毒性作用機序(MoA)の分類と生態リスク評価

化学物質の作用機序(mode of action; MoA) 。 あるMoAは特定の生物分類群に強い毒性を示すが、別の分類群には効きにくい。一方生態系の保護は、特定の分類群だけでなく、全ての分類群をなるべく対象にしたい。MoAの情報をどのように生態リスク評価・管理に役…

論文のメモ: RNA-Seqの前処理にトリミングは必要ない

タイトル通り。 これまで普通にトリミングしてました。確か(クオリティ)トリミングあり/なしでde novoアセンブリの結果があまり変わらないとかは自分で確認しましたが、mRNA定量への影響はそう言えば検証してませんでした。 こういう「一部では常識」みた…

論文のメモ: 生態リスク評価におけるEvolutionary Toxicology

化学物質の汚染にさらされたとき、ある生物種の個体群(または複数種の集まりcommunity)が化学物質に対する耐性を持つことは良く知られています。殺虫剤に耐性を持つ蚊や抗生物質の効かない薬剤耐性菌などが特に有名ですね。 耐性を獲得するメカニズムは、…

論文のメモ: 種の感受性分布における自己相関の補正

種の感受性分布(Species Sensitivity Distribution; SSD)。 化学物質に対する生物種の感受性は、経験的に対数正規分布にフィットすることが知られています。その性質を利用して累積分布関数で種の感受性を表現したのがSSDです。SSDを利用して5%の種が影響…

論文のメモ: ヨコエビのオスはどのようにしてメスを認識しているか?

Holmes SJ, 1903, Sex recognition among amphipods, Biological Bulletin 5(5): 288-292. 論文というかエッセイのような書き物。 ヨコエビのメスは脱皮直後にしか産卵しないため、オスはその瞬間を逃さぬようメスを背後から抱きかかえて過ごします。この行…

論文のメモ: ナノマテリアル曝露に共通する遺伝子発現パターンのメタ解析

Burkard M, Betz A, Schirmer K, Zupanic A, 2019, Common gene expression patterns in environmental model organisms exposed to engineered nanomaterials: A meta-analysis, Environ Sci Technol 54(1): 335-344. スイスからの論文。 ナノマテリアルに…

「わたしを離さないで」感想

ノーベル賞受賞前からM氏にオススメされていたけどスルーしていたカズオイシグロ。「合成生物学の衝撃」で引用されていて、俄然興味が出て読みました。ちなみに「合成生物学の衝撃」は生物学の話はほぼなくて、期待外れでした(ちゃんとレビューを確認してか…

論文のメモ: さよならゲノムペーパー

ある生物のドラフトゲノムをどこに公開しようかと思ってたら、こんな論文見つけました。 Smith DR, 2016, Goodbye genome paper, hello genome report: the increasing popularity of ‘genome announcements’ and their impact on science, Briefings in Fun…

論文のメモ: RNA-Seq論文では条件をちゃんと報告しよう

RNA-Seq Blogで紹介されていた論文。 Simoneau J, Dumontier S, Gosselin R, Scott MS, 2019, Current RNA-seq methodology reporting limits reproducibility, Briefings in Bioinformatics. RNA-Seqをおこなって、生データのリポジトリ場所・前処理ツール…

「海外で研究者になる-就活と仕事事情-」感想

別に海外で就職したいとは思ってませんが、評判良かったので。 筆者の在籍しているイギリスと、アメリカの大学の話多め。文系の研究者のインタビューもありますが、どちらかというと理系の話がメインです。 海外の大学に就職するのは、難しそうだと改めて思…

論文のメモ: 等脚類のheteroplasmy

ここに書いた話の続き。 ある未知生物のDNAからミトコンドリアCOI様配列が見つかった時、それが本物のCOI配列の場合もあれば、核DNA配列の場合もあれば、バクテリア配列のコンタミの場合もあります。さらにヘテロプラスミー(heteroplasmy)の可能性もありま…

論文のメモ: 無脊椎動物のAhR発現

脊椎動物では、いわゆるダイオキシン類やPAHsがAhR(aryl hdrocarbon receptor)に結合し、CYP1Aなど多くの遺伝子の発現を誘導することが知られています。一方、無脊椎動物ではダイオキシン類はAhRと結合しないと言われてます。 Hahn ME, 2002, Aryl hydroca…

MDPIの査読をやってみた

スイスに本社を置く中国系の学術誌出版社MDPI。 MDPIの雑誌は、BiologyとかChemistryとかMetabolitesとか一単語のジャーナル名が多く、全部オープンアクセス。頻繁に勧誘メールを送り付けてくることで有名。 2019年9月からは東京にオフィスを構えたとか。 自…

論文のメモ: ネオニコチノイド系農薬による宍道湖漁獲高への影響

「ネオニコチノイドが水系食物網を崩壊させ漁獲高を減少させる」 Yamamuro M., Komuro T., Kamiya H., Kato T., Hasegawa H., Kameda Y., 2019, Neonicotinoids disrupt aquatic food webs and decrease fishery yields, Science 366: 620-623. 話題になって…

アセンブラFlyeのインストール

※2019.10.16追記。Flye ver 2.6(2019.09.16~)からPython 3に対応したそうです。タイミング悪かった…。 この記事(MaSuRCAのインストールエラー)の続き。 今度はCanuよりも評判が良いFlyeをインストール。MaSuRCAで苦しんだのでBiocondaでインストールしよ…

論文のメモ: ToxCastデータを用いた高リスク化学物質の優先順位付け

米国のToxCast and Tox21プログラムで多数の化学物質に対するin vitro assayデータが生み出されています。それらのデータを、環境中の化学物質モニタリングデータと組み合わせて、リスクの高い化学物質をスクリーニングしようと試みた論文。方向性はここで書…

「お金2.0 -新しい経済のルールと生き方-」感想

どうして買ったのか忘れたけど、家にあったので読みました。 ブロックチェーンやインターネットなど技術の発展により、各個人や企業が独自の経済圏を作り出すことができるようになり、国家のような中央集権的な構造から自由になった。この「経済の民主化」は…

MaSuRCAのインストールエラー

Nanopore現場の会、行けなかった。 楽しそうだったので残念です。 MinIONとMiSeq・HiSeqで読んだリードをいろんなアセンブラにかけようと試しているところ。 Canuを試してみたけどMinIONのカバレージが低いので、Canuのようなロングリードベースのアセンブラ…

メモ: Nanoporeロングリードのアセンブリ

Oxford Nanopore TEchnologies(ONT)のロングリードとIlluminaなどのショートリードのデータを組み合わせてde novoアセンブリするとき、どのツールを使用するかの話。 ロングリードは長いけどエラー率高い。ショートは短いけど、エラー率低く安く大量に読め…

論文のメモ: 核DNAにおけるミトコンドリア様配列

ある生物種のゲノム解析をしていて。 解読したミトコンドリアゲノム配列が、同じ種の既知のミトコンドリアcytochrome c oxidase subunit I(COI)配列と大きく異なっていました。 始めは、既存の報告で隠蔽種の存在が示唆されていたので、自分の読んだ配列と…

SETAC Europe@Helsinki参加感想

環境化学と環境毒性学の国際学会SETAC Europe 29th Annual Meeting@Helsinkiに参加してきました。 SETACに参加するのは、SETAC North Americaを含めてこれで3度目。正直なところ、若干飽きてきたかも。自分が聞いた代替試験法・OMICS・底質毒性・微量化学物…

「人間そっくり」「砂の女」感想

「人間そっくり」 読んだのは大学生のとき以来。セリフとト書でほぼ構成されていて、安部公房の作品の中ではかなり読みやすいです。1時間くらいで読了。 火星人を題材としたラジオドラマの脚本家である語り部の自宅へやって来た火星人を名乗る男によって翻弄…

「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」感想

「乱交の生物学」に続いて性の進化についての本。有名な「銃・病原菌・鉄」の著者ジャレドダイアモンドの著作です。さすが、かなり読みやすかったです。 章立ては下の通り。 1. 人間の奇妙な性生活 2. 男と女の利害対立 3. なぜ男は授乳しないのか? 4. セッ…

論文のメモ: Sediment TIEの実践例

色々な化学物質によって汚染された底質を対象に、どの物質(群)が有害な影響を及ぼしているのか探索する手法であるSediment TIE(Toxicity Identification Evaluation)を実施した論文。 「時空間的にばらつきのあるデータを用いたSediment TIE研究デザイン…

「乱交の生物学 -精子競争と性的葛藤の進化史-」感想

電車で読みづらい書名。原題は"Promiscuity"という語で、一般には乱婚と訳されるそうです。 "オシドリ夫婦"のオシドリは実は全く一雌一雄ではないというのは有名な雑学ですが、オシドリだけでなく自然界の多くの種は一雄多雌や一雌多雄であり、一雌一雄は例…