備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

「相分離生物学の冒険」感想

つくばエクスプレスの線路破断のため3時間ほどつくば駅周辺に留まることになり、本屋に寄った際に購入。冒頭の息子さんの食物アレルギーのくだりでもう心を掴まれて購入決定しました。 相分離生物学(Phasing biology)は、タンバク質や遺伝子などの生物の個…

「すごい進化」感想

面白いし、読みやすい。オススメです。 一見すると不合理な進化、例えば不完全な擬態など、はどうして生じるのか。 なんらかの制約によって進化が中途半端になってしまったのか、それとも実は自然淘汰を経て十分に適応した結果(=環境に適した形質が残った…

「わたしを離さないで」感想

ノーベル賞受賞前からM氏にオススメされていたけどスルーしていたカズオイシグロ。「合成生物学の衝撃」で引用されていて、俄然興味が出て読みました。ちなみに「合成生物学の衝撃」は生物学の話はほぼなくて、期待外れでした(ちゃんとレビューを確認してか…

「海外で研究者になる-就活と仕事事情-」感想

別に海外で就職したいとは思ってませんが、評判良かったので。 筆者の在籍しているイギリスと、アメリカの大学の話多め。文系の研究者のインタビューもありますが、どちらかというと理系の話がメインです。 海外の大学に就職するのは、難しそうだと改めて思…

「お金2.0 -新しい経済のルールと生き方-」感想

どうして買ったのか忘れたけど、家にあったので読みました。 ブロックチェーンやインターネットなど技術の発展により、各個人や企業が独自の経済圏を作り出すことができるようになり、国家のような中央集権的な構造から自由になった。この「経済の民主化」は…

「人間そっくり」「砂の女」感想

「人間そっくり」 読んだのは大学生のとき以来。セリフとト書でほぼ構成されていて、安部公房の作品の中ではかなり読みやすいです。1時間くらいで読了。 火星人を題材としたラジオドラマの脚本家である語り部の自宅へやって来た火星人を名乗る男によって翻弄…

「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」感想

「乱交の生物学」に続いて性の進化についての本。有名な「銃・病原菌・鉄」の著者ジャレドダイアモンドの著作です。さすが、かなり読みやすかったです。 章立ては下の通り。 1. 人間の奇妙な性生活 2. 男と女の利害対立 3. なぜ男は授乳しないのか? 4. セッ…

「乱交の生物学 -精子競争と性的葛藤の進化史-」感想

電車で読みづらい書名。原題は"Promiscuity"という語で、一般には乱婚と訳されるそうです。 "オシドリ夫婦"のオシドリは実は全く一雌一雄ではないというのは有名な雑学ですが、オシドリだけでなく自然界の多くの種は一雄多雌や一雌多雄であり、一雌一雄は例…

「パパは脳研究者 -子どもを育てる脳科学- 」感想

帰省中に読了。 昔「単純な脳、複雑な『私』」を読んでから(「単純な脳、複雑な『私』」感想)、この著者のファンです。著者のTwitterからも分かりますが、自身の研究の直近だけでなく、ちょっと遠い研究の面白ばなしも意識的に収集してるんでしょうね。そ…

「生物をシステムとして理解する」感想

8月の帰省の新幹線で読了。150ページで、タッチも軽いのでさっくり読めます。この分野に興味ある高校生とか学部生が読むのに良さそう。 現在の数学(統計学?)は物理学とともに発展してきたので、まだ実験誤差の大きい生物学には対応しきれていない、今後生…

「MCバトル史から読み解く日本語ラップ入門」感想

あとがきにもあるように、DARTHREIDERによる極私的MCバトル史の本。書名は盛りすぎ。 ヒップホップ界隈の一つのイベントでしかなかったMCバトルの変遷について。 2000年代中頃まではラッパーとしての生活の延長上にMCバトルが存在していました。ラッパーの余…

「傷はぜったい消毒するな」感想

どうして消毒してはいけないのか。それは、消毒によって細菌だけでなく人間の皮膚の細胞まで破壊され、さらに皮膚が乾燥してしまい、傷の治りが遅くなるから。また、消毒すると、皮膚常在菌が殺されて、その隙に病原性を持つ通過菌(例:黄色ブドウ球菌)が…

「ヒトゲノムを解読した男:クレイグベンター自伝」感想

ひと月くらい前に読了。 バイタリティに富んだ人間という一言に尽きます。 彼が海軍衛生兵としてベトナムへ従軍していた時の話。腹部に傷を負った二人の男が同時期に病院に運ばれてきた。ひとりは生きて当然だと思われたが、すぐに息を引き取った。もうひと…

「破壊する創造者」感想

生物ってなんでもありだな、というのが一番の感想。 進化は突然変異と自然選択だけではなく、共生発生や異種交配、エピジェネティクスによっても生じる。そしてウイルスは共生発生による進化の大きな推進力になっている。端折りまくった本書の概要は、おおよ…

「化学の歴史」感想

全部読み通しました。が、ちょっと退屈だったかも。研究の歴史を勉強するのは好きです。高校の時、村上陽一郎の「新しい科学論」というブルーバックスの本を読んでから。 科学史を知ると、今現在の科学が磐石ではないこと、これからダイナミックに変化してい…

「人工知能は人間を超えるか」感想

帰省中の新幹線で読みました。 感想はずばり「ディープラーニングすごい」。 従来の機械学習ではどのような特徴量(=説明変数)を用いるかを人間が最終的に設計しなければならなかったのに対し、ディープラーニングは自ら重要な特徴量を設計できるそうです。…

本「ロボットとは何か -人の心を映す鏡」

TV番組「マツコとマツコ」のマツコロイドの製作者・石黒浩教授の新書。 筆者がロボット研究をしている理由・研究における興味の話が最も惹き込まれました(第一章あたり)。もちろん「不気味の谷」や「ロボット演劇」などの各論も面白いです。しかし院生とし…

本「海と湖の貧栄養化問題」

浦瀬先生のHPで紹介されていた本*1。早速読んで正解。妄想の広がる良書でした。 山本民次, 花里孝幸, 2015, 海と湖の貧栄養化問題, 地人書館. 水環境での過剰な栄養塩によって植物プランクトンが異常増殖し、アオコや赤潮が発生する、富栄養化。そのピークは…

「単純な脳、複雑な『私』」感想

何度も興奮させられました。人に話したくなるネタのてんこ盛りで、しかも読みやすい。著者はプレゼンが上手いんだろうな、と感心させられます。論文が豊富に引用されていて説得力もあります。既に知っている話もありましたが、それでも面白かったです。 もの…

「永すぎた春」 感想

今、何かと話題の三島由紀夫。 東大法学部の郁雄君と、古本屋の娘の百子さんの1年ほどの婚約期間のお話。金閣寺とかに比べたら気軽な作品です。 三島由紀夫の小説は作りこまれた感じがあって、あんまり好きじゃないんですが。いかにも「小説感」が強すぎると…

ベイズの定理

「異端の統計学ベイズ」を読んでいて。 最近、ベイズ統計に触れる機会があるのですが、いまいち胸に落ちる感じがしません。数式がダメなら、お話から入ってみようと思い上記の本を読んでみました。 すると、すごい分かりやすい(気がする)。ベイズの定理を…

本「反社会学講座」

いくつかの人から面白いとの評判を聞いて購入。評判通りの楽しさでした。語りの軽さと視点のエグさ。ただ一冊の本として連続して読むと、同じ調子で少し飽きてしまうかも。 パオロ・マッツァリーノ, 2007, 反社会学講座, ちくま文庫 全20回に分かれた「講座…

本「リスクに背を向ける日本人」

本書のテーマ自体は新しくないのですが、面白かったです。出てくるエピソードや知見が豊富だし、筆者たちの物の見方が新鮮で面白いのでしょう。 山岸俊男, メアリーCブリントン, 2010, リスクに背を向ける日本人, 講談社現代新書 概要 本書は乱暴にまとめる…

本「アクロイド殺し」

正月帰省の新幹線で読んだ本。犯人が誰なのか予め知っていて読みました。それでも十分楽しめました。 アガサクリスティー, アクロイド殺し, 羽田詩津子 訳, 早川書房 イギリスの田舎村の富豪アクロイドが殺された事件。仕事を引退して村へ越してきていたエル…

本「下水道の考えるヒント2」

下水道というワードが書名に入っているので、なんとなく読んでみました。 中里卓治, 2014, 下水道の考えるヒント2, 環境新聞社 雑誌連載の随筆をまとめた本なので、各テーマが5-6ページにおさまっています。MBRや汚泥処理法といった下水道に関する話もあり…

本「工学部ヒラノ教授」

「論文必勝法」に続けて、ヒラノ教授シリーズを読みました。 エピソードの30~50%くらいは「論文必勝法」と重複している印象ですが、面白かったです。なにより、内容がない訳ではないのに読みやすいです。 今野浩, 2010*1, 工学部ヒラノ教授, 新潮社 アメリカ…

本「理科系の作文技術」

名著という噂は知っていましたが、本当に名著でした。もっと早く読めばよかったです。 木下是雄, 1981*1, 理科系の作文技術, 中公新書 本書は、「理科系の人が仕事のために書く文章」を対象にすると書かれていますが、文系の人にも非常に有益だと思います。…

本「科学嫌いが日本を滅ぼす」

有名で、既に知っている話が多かったです。ワトソンとクリックがウィルキンスを通じてフランクリンのX線写真を見ていた、とか韓国のES細胞論文捏造の黄禹錫とか。理系の院生以上なら多くの話は知っているでしょう。 たしか「ネイチャー」「サイエンス」に何…

本「ヒラノ教授の論文必勝法」

ヒラノ教授シリーズを初めて読みました。 今野浩, 2013, ヒラノ教授の論文必勝法-教科書が教えてくれない裏事情-, 中公新書ラクレ 初めて読んだのですが、このヒラノ教授シリーズが人気なのは納得でした。ファンになりました。 筆者も1章で述べている通り、…

本「アリの巣をめぐる冒険」

Amazonで評判が良かったので、購入。タイトルからアリの生態学に関する本だと思ってたら、「アリと共生する昆虫(好蟻性昆虫)の分類学」に関する本でした。 丸山宗利, 2012, アリの巣をめぐる冒険-未踏の調査地は足下に-, 東海大学出版会 分類学のことは良…