備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

生態毒性

論文のメモ: クロレラとマイクロプラスチックとミジンコ

Albini D, Fowler MS, Llewellyn C, Tang KW, 2020, Turning defence into offence? Intrusion of cladoceran brood chambers by a green alga leads to reproductive failure, Royal Society Open Sci 7(9): 200249. 偶然出あった論文。 緑藻類のクロレラが…

論文のメモ: 生物種によって感受性が異なるのはなぜか? その2

この記事の続き。 化学物質に対する感受性が生物種によってなぜ異なるのか、という問題。そのものズバリな総説が出てました。 van den Berg SJ, Maltby L, Sinclair T, Liang R, van den Brink PJ, 2020, Cross-species extrapolation of chemical sensitivi…

論文のメモ: 分配係数 Kocの値に何を使用するか

このへんの話 の続き。忘れそうなのでメモ。 Norman JE, Kuivila KM, and Nowell LH, 2012, Prioritizing pesticide compounds for analytical methods development: U.S. Geological Survey Scientific Investigations Report 2012–5045, 206 p. USGSでは、…

論文のメモ: 生物種によって感受性が異なるのはなぜか?

Narcoticな毒性(あるいはbaseline toxicity)は、物質が生物膜に移行して、膜の完全性(integrity)を破壊するために生じると言われています。 そして毒性の大きさは、一般に生物種を問わず、脂質中の物質濃度で決まるとされています。 一方、生物体内の受…

論文のメモ: 土壌・底質汚染についてのET&C Points of Reference

最近ET&C(Environmental Toxicology & Chemistry)にPoints of Referenceなる短いコーナーが出来ました。1,000 words以内の査読なしの意見論文だそうです。そのPoRに、今年になって土壌、底質の話が何度か登場していたので、メモっておきます。 Neaman A, S…

論文のメモ: Target Lipid Modelとその底質基準への応用

// USEPAのPAHの底質基準(USEPA,2003,EPA/600/R-02/013)のベースとなっている理論であるTLMと、その底質基準への応用について。 Di Toro DM, McGrath JA, Hansen DJ, 2000, Technical basis for narcotic chemicals and polycyclic aromatic hydrocarbon c…

論文のメモ: 平衡分配法における分配係数Kocの不確実さ

// 前回書いたように、底質基準の設定法にはざっくり3つのアプローチがあります。 2つ目のアプローチ(EqP)では、分配係数Kdと水のみ曝露の毒性値Cw(≒水質基準値)を用いて、底生生物に影響の生じうる底質濃度Csを算出します。 (Eq.1) このKdは通常、底質…

論文のメモ: 生態系保全のための農薬の底質基準

ひきつづき自宅就業中。 Nowell LH, Norman JE, Ingersoll CG, Moran PW, 2016, Development and application of freshwater sediment-toxicity benchmarks for currently used pesticides, Sci Total Environ 550: 835-850. ちら見して放っていた論文。底質…

論文のメモ: 化学物質の毒性作用機序(MoA)の分類と生態リスク評価

化学物質の作用機序(mode of action; MoA) 。 あるMoAは特定の生物分類群に強い毒性を示すが、別の分類群には効きにくい。一方生態系の保護は、特定の分類群だけでなく、全ての分類群をなるべく対象にしたい。MoAの情報をどのように生態リスク評価・管理に役…

論文のメモ: 生態リスク評価におけるEvolutionary Toxicology

化学物質の汚染にさらされたとき、ある生物種の個体群(または複数種の集まりcommunity)が化学物質に対する耐性を持つことは良く知られています。殺虫剤に耐性を持つ蚊や抗生物質の効かない薬剤耐性菌などが特に有名ですね。 耐性を獲得するメカニズムは、…

論文のメモ: 種の感受性分布における自己相関の補正

種の感受性分布(Species Sensitivity Distribution; SSD)。 化学物質に対する生物種の感受性は、経験的に対数正規分布にフィットすることが知られています。その性質を利用して累積分布関数で種の感受性を表現したのがSSDです。SSDを利用して5%の種が影響…

論文のメモ: ナノマテリアル曝露に共通する遺伝子発現パターンのメタ解析

Burkard M, Betz A, Schirmer K, Zupanic A, 2019, Common gene expression patterns in environmental model organisms exposed to engineered nanomaterials: A meta-analysis, Environ Sci Technol 54(1): 335-344. スイスからの論文。 ナノマテリアルに…

論文のメモ: 無脊椎動物のAhR発現

脊椎動物では、いわゆるダイオキシン類やPAHsがAhR(aryl hdrocarbon receptor)に結合し、CYP1Aなど多くの遺伝子の発現を誘導することが知られています。一方、無脊椎動物ではダイオキシン類はAhRと結合しないと言われてます。 Hahn ME, 2002, Aryl hydroca…

論文のメモ: ネオニコチノイド系農薬による宍道湖漁獲高への影響

「ネオニコチノイドが水系食物網を崩壊させ漁獲高を減少させる」 Yamamuro M., Komuro T., Kamiya H., Kato T., Hasegawa H., Kameda Y., 2019, Neonicotinoids disrupt aquatic food webs and decrease fishery yields, Science 366: 620-623. 話題になって…

論文のメモ: ToxCastデータを用いた高リスク化学物質の優先順位付け

米国のToxCast and Tox21プログラムで多数の化学物質に対するin vitro assayデータが生み出されています。それらのデータを、環境中の化学物質モニタリングデータと組み合わせて、リスクの高い化学物質をスクリーニングしようと試みた論文。方向性はここで書…

論文のメモ: Sediment TIEの実践例

色々な化学物質によって汚染された底質を対象に、どの物質(群)が有害な影響を及ぼしているのか探索する手法であるSediment TIE(Toxicity Identification Evaluation)を実施した論文。 「時空間的にばらつきのあるデータを用いたSediment TIE研究デザイン…

論文のメモ: オオミジンコの遺伝的多様性と感受性

「オオミジンコの遺伝的多様性と生態毒性学的評価」 Picado A., Chankova S., Fernandes A., Simões F, Leverett D, Johnson I, Hernan R, Pires AM, Matos J, 2007, Genetic variability in Daphnia magna and ecotoxicological evaluation, Ecotoxicol. En…

論文のメモ: 複合影響の理解に向けたシステム毒性学

Spurgeon DJ, Jones OA, Dorne JLC, Svendsen C, Swain S, Stürzenbaum SR, 2010, Systems toxicology approaches for understanding the joint effects of environmental chemical mixtures, Sci Total Environ 408(18), 3725-3734. レビュー論文。少し古い…

論文のメモ: Daphniaのストレス応答遺伝子データベース

「Daphnia stressor database: 10年来のDaphniaのomicsデータを遺伝子アノテーションにフル活用」 Ravindran SP, Lueneburg J, Gottschlich L, Tams V, Cordellier M, 2018, Daphnia stressor database: Taking advantage of a decade of Daphnia'-omics' da…

論文のメモ: 路面排水によるギンザケ死亡症候群

2000年代からアメリカ北部でギンザゲの死亡症候群が見られ、その原因として路面排水が疑われています。以下は、その一連の論文。NOAAとワシントン州立大学あたりが中心に研究してるみたいです。 「Puget Sound都市河川で頻発するギンザケ成魚の死亡」 Scholz…

論文のメモ: AOP Networkについて

AOP(Adverse Outcome Pathways)に関する話。 ETCに出ていた以下のcompanion papers+αを読んで、AOPの理解が進んだので備忘録的に書いておきます。どちらもOpen Accessです。 ざっくり言うと、「AOPは個々に独立しているわけではなく別の複数のAOPsと関連し…

論文メモ: ヨコエビ Hyalella aztecaのゲノム

「底質毒性と進化毒性学のモデル生物:Hyalella aztecaのトキシコゲノム」 Poynton HC, Hasenbein S, Benoit JB, Sepulveda MS, Poelchau MF, Hughes DST, Murali SC, Chen S, Glastad KM, Goodisman MAD, Werren J, Vineis JH, Bowen JL, Friedrich M, Jone…

論文のメモ: EDA・TIEについての最近の論文

最近出たEDA(Effect-Directed Analysis)とTIE(Toxicity Identification Evaluation)に関する論文。 「底質の複雑な毒性の診断:TIEとEDA」 Li H., Zhang J., You J., 2017, Diagnosis of complex mixture toxicity in sediments: application of toxicit…

論文のメモ: omics technologyとAOP

AOP(Adverse Outcome Pathways)の構築に、網羅的な生物応答の解析技術(omics)を用いて何ができるかというお話し。omicsの中でも特にtranscriptomicsについて。 「化学物質リスク評価へAOPを適用するうえでomicsの果たす役割」 Brockmeier EK, Hodges G, …

論文のメモ: トンネル洗浄水による遺伝子発現変動

「交通関係の汚染に曝露されたブラウントラウトの肝臓の遺伝子発現プロファイル」 Meland S, Farmen E, Heier LS, Rosseland BO, Salbu B, Song Y, Tollefsen KE, 2011, Hepatic gene expression profile in brown trout (Salmo trutta) exposed to traffic …

論文のメモ: 生態毒性研究へのWGCNAの適用

重み付き遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA; weighted gene co-expression network analysis)のはなし。 「遺伝子共発現ネットワークによるDaphniaの繁殖影響予測」 Asselman J, Pfrender ME, Lopez JA, Shaw JR, De Schamphelaere KAC, 2017, Gene co-e…

論文のメモ: Zebrafishのマイクロアレイメタ解析

「化学物質曝露後のゼブラフィッシュ胚のトランスクリプトーム:メタ解析」 Schüttler A, Reiche K, Altenburger R, Busch W. 2017. The transcriptome of the zebrafish embryo after chemical exposure: a meta-analysis. Toxicol Sci, 157 (2), 291-304. …

論文のメモ: 最近読んだヨコエビ系の話(共食い・光走性)

ヨコエビが出てくる論文。生態毒性と関連するのもあったり、なかったり。 「抗うつ剤はヨコエビを光の方へ向ける」 Guler Y, Ford AT, 2010, Anti-depressants make amphipods see the light, Aquatic Toxicol 99:397-404. 選択的セロトニン再取り込み阻害作…

論文のメモ: 底質の金属毒性

「底質中の金属毒性の予測」 Simpson SL, Batley GE, 2007, Predicting metal toxicity in sediments: a critique of current approaches, Integr Environ Assess Manag 3:18-31. 総説。以下に簡単なまとめ。 底質の金属毒性を考えるときは、生物種による違…

論文のメモ: 外来種と化学物質汚染 その2

前回の続き。前回は、外来種の方が高い汚染耐性を持つという報告を中心に見ましたが、今回はその逆の話。 「在来種の二枚貝は外来種より耐性が高いのか?」 Faria M, López MA, Díez S, Barata C, 2010, Are native naiads more tolerant to pollution than …