備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

分子生物学

論文のメモ: RNA-Seqの前処理にトリミングは必要ない

タイトル通り。 これまで普通にトリミングしてました。確か(クオリティ)トリミングあり/なしでde novoアセンブリの結果があまり変わらないとかは自分で確認しましたが、mRNA定量への影響はそう言えば検証してませんでした。 こういう「一部では常識」みた…

論文のメモ: 生態リスク評価におけるEvolutionary Toxicology

化学物質の汚染にさらされたとき、ある生物種の個体群(または複数種の集まりcommunity)が化学物質に対する耐性を持つことは良く知られています。殺虫剤に耐性を持つ蚊や抗生物質の効かない薬剤耐性菌などが特に有名ですね。 耐性を獲得するメカニズムは、…

論文のメモ: 種の感受性分布における自己相関の補正

種の感受性分布(Species Sensitivity Distribution; SSD)。 化学物質に対する生物種の感受性は、経験的に対数正規分布にフィットすることが知られています。その性質を利用して累積分布関数で種の感受性を表現したのがSSDです。SSDを利用して5%の種が影響…

論文のメモ: ナノマテリアル曝露に共通する遺伝子発現パターンのメタ解析

Burkard M, Betz A, Schirmer K, Zupanic A, 2019, Common gene expression patterns in environmental model organisms exposed to engineered nanomaterials: A meta-analysis, Environ Sci Technol 54(1): 335-344. スイスからの論文。 ナノマテリアルに…

論文のメモ: RNA-Seq論文では条件をちゃんと報告しよう

RNA-Seq Blogで紹介されていた論文。 Simoneau J, Dumontier S, Gosselin R, Scott MS, 2019, Current RNA-seq methodology reporting limits reproducibility, Briefings in Bioinformatics. RNA-Seqをおこなって、生データのリポジトリ場所・前処理ツール…

論文のメモ: 等脚類のheteroplasmy

ここに書いた話の続き。 ある未知生物のDNAからミトコンドリアCOI様配列が見つかった時、それが本物のCOI配列の場合もあれば、核DNA配列の場合もあれば、バクテリア配列のコンタミの場合もあります。さらにヘテロプラスミー(heteroplasmy)の可能性もありま…

論文のメモ: 無脊椎動物のAhR発現

脊椎動物では、いわゆるダイオキシン類やPAHsがAhR(aryl hdrocarbon receptor)に結合し、CYP1Aなど多くの遺伝子の発現を誘導することが知られています。一方、無脊椎動物ではダイオキシン類はAhRと結合しないと言われてます。 Hahn ME, 2002, Aryl hydroca…

メモ: Nanoporeロングリードのアセンブリ

Oxford Nanopore TEchnologies(ONT)のロングリードとIlluminaなどのショートリードのデータを組み合わせてde novoアセンブリするとき、どのツールを使用するかの話。 ロングリードは長いけどエラー率高い。ショートは短いけど、エラー率低く安く大量に読め…

論文のメモ: 核DNAにおけるミトコンドリア様配列

ある生物種のゲノム解析をしていて。 解読したミトコンドリアゲノム配列が、同じ種の既知のミトコンドリアcytochrome c oxidase subunit I(COI)配列と大きく異なっていました。 始めは、既存の報告で隠蔽種の存在が示唆されていたので、自分の読んだ配列と…

STRINGdbを用いたPPIネットワーク解析 その2: DEG解析など

前回の続き。今回は、STRINGdbから得たPPI networkの情報を、DEG解析(Differentially Expressed Genes)の結果と絡める方法について書きます。 前回までの話 ゼブラフィッシュのPPI networkをSTRINGdbから取得します。例えばこんな感じのデータ。 > full.gr…

STRINGdbを用いたPPIネットワーク解析

タンパク質間相互作用 (protein-protein interaction; PPI) のデータベースであるSTRING (Search Tool for the Retrieval of Interacting Genes/Proteins)。以下は、そのデータを使ってRでネットワーク解析してみた個人的な備忘録です。大部分は"STRINGdb Pa…

論文のメモ: RNAの分解度評価 ~Transcript Integrity Number~

「RNA-Seqデータの特性評価のためのシンプルなガイドライン」 Son K., Yu S., Shin W., Han K., Kang K., 2018, A Simple Guideline to Assess the Characteristics of RNA-Seq Data, BioMed Research International, Article ID 2906292. RNA-Seqのデータは…

論文のメモ: Daphniaのストレス応答遺伝子データベース

「Daphnia stressor database: 10年来のDaphniaのomicsデータを遺伝子アノテーションにフル活用」 Ravindran SP, Lueneburg J, Gottschlich L, Tams V, Cordellier M, 2018, Daphnia stressor database: Taking advantage of a decade of Daphnia'-omics' da…

論文のメモ: AOP Networkについて

AOP(Adverse Outcome Pathways)に関する話。 ETCに出ていた以下のcompanion papers+αを読んで、AOPの理解が進んだので備忘録的に書いておきます。どちらもOpen Accessです。 ざっくり言うと、「AOPは個々に独立しているわけではなく別の複数のAOPsと関連し…

論文メモ: ヨコエビ Hyalella aztecaのゲノム

「底質毒性と進化毒性学のモデル生物:Hyalella aztecaのトキシコゲノム」 Poynton HC, Hasenbein S, Benoit JB, Sepulveda MS, Poelchau MF, Hughes DST, Murali SC, Chen S, Glastad KM, Goodisman MAD, Werren J, Vineis JH, Bowen JL, Friedrich M, Jone…

「ヒトゲノムを解読した男:クレイグベンター自伝」感想

ひと月くらい前に読了。 バイタリティに富んだ人間という一言に尽きます。 彼が海軍衛生兵としてベトナムへ従軍していた時の話。腹部に傷を負った二人の男が同時期に病院に運ばれてきた。ひとりは生きて当然だと思われたが、すぐに息を引き取った。もうひと…

論文のメモ: omics technologyとAOP

AOP(Adverse Outcome Pathways)の構築に、網羅的な生物応答の解析技術(omics)を用いて何ができるかというお話し。omicsの中でも特にtranscriptomicsについて。 「化学物質リスク評価へAOPを適用するうえでomicsの果たす役割」 Brockmeier EK, Hodges G, …

論文のメモ: トンネル洗浄水による遺伝子発現変動

「交通関係の汚染に曝露されたブラウントラウトの肝臓の遺伝子発現プロファイル」 Meland S, Farmen E, Heier LS, Rosseland BO, Salbu B, Song Y, Tollefsen KE, 2011, Hepatic gene expression profile in brown trout (Salmo trutta) exposed to traffic …

論文のメモ: 生態毒性研究へのWGCNAの適用

重み付き遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA; weighted gene co-expression network analysis)のはなし。 「遺伝子共発現ネットワークによるDaphniaの繁殖影響予測」 Asselman J, Pfrender ME, Lopez JA, Shaw JR, De Schamphelaere KAC, 2017, Gene co-e…

論文のメモ: Zebrafishのマイクロアレイメタ解析

「化学物質曝露後のゼブラフィッシュ胚のトランスクリプトーム:メタ解析」 Schüttler A, Reiche K, Altenburger R, Busch W. 2017. The transcriptome of the zebrafish embryo after chemical exposure: a meta-analysis. Toxicol Sci, 157 (2), 291-304. …

論文のメモ: メタゲノム情報の保存庫としての貝殻

気晴らしで読んだ論文。 「メタゲノムアーカイブとしての貝殻」 Coutellec MA. 2017. Mollusc shells as metagenomic archives: The true treasure is the chest itself. Mol Ecol Resources 17(5): 854-857. Der Sarkissianら (2017) の解説記事。貝殻のDNA…

TSAに登録する際のmultifastaファイルの編集

NGSで読んだcDNAをデータベースに登録するとき、生配列はSRA(Sequence Read Archive)だけど、アセンブリ配列はTSA(Transcriptome Shutgun Assembly)という区分だそうな。 提出するfastaファイルは以下の形式に則っていないとダメだそうです。 >CLN01 <--…

論文のメモ: 遺伝子ネットワーク推定とAOP

マイクロアレイやRNA-seqのデータから遺伝子間の関係(ネットワーク)を推定し、有害物質によって引き起こされる悪影響adverse outcomesのメカニズムを明らかにしようという研究について。 「システム生物学アプローチによってNarcosisのCa依存メカニズムを…

論文のメモ: 環境毒性分野での遺伝子発現データと機械学習

マイクロアレイやRNA-seqの遺伝子発現データから、機械学習を使って情報を引き出す話。例えば、発がん性物質に曝露したデータと曝露してないデータを与えて、発がん性の有無を識別できる遺伝子(バイオマーカー)を探索する研究などがあるかと思います。昔こ…

リアルタイムPCRで発現量比の差を解析する統計的手法

リアルタイムPCRで発現解析時の統計手法 遺伝子Aの発現量が条件αと条件βで変わらないかどうか、リアルタイムPCRで調べたい。そんなときの話です。 複数のハウスキーピング遺伝子のCt値(あるいはCp値)と遺伝子AのCt値との差(=ΔCt)を条件α・βごとに求めて…

論文のメモ: 28S rRNAのhidden breakについて

一部の生物種は、28S rRNAの真ん中あたりに切れ目が入っていることをこの記事に書きました。その切れ目はhidden breakと呼ばれ、28S rRNAが分裂するときに一部の塩基が消失することはgap deletionと呼ばれているみたいです。 今回は、hidden breakについて少…

論文のメモ: RT-PCRを始めるにあたって読みたい文献

リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析の原理、実験手法やデータ解析法について。 いちばん分かりやすく丁寧なのは、タカラやサーモの日本語解説でしょう。特にサーモの「リアルタイムPCRハンドブック」は最高。それらを読んだ後に、将来論文に引用すること…

論文のメモ: RINは 全ての生物種のRNA分解指標にはできない

動物組織から抽出したRNAの分解度合は、電気泳動によって評価するのが普通です。ヒトなどの場合は、バイオアナライザーという装置で泳動して RIN (RNA Integrity Number; Schroeder et al., 2006) なる指標で分解度を評価します。RINの考え方は、RNAの中で大…

論文のメモ: 甲殻類の脱皮と金属曝露

「オオミジンコのecotoxicogenomicsによって金属毒性のメカニズムが推察できる」 Poynton H.C., Varshavsky J.R., Chang B., Cavigiolio G., Chan S., Holman P.S., Loguinov A.V., Bauer D.J., Komachi K., Theil E.C., Perkins E.J., Hughes O., and Vulpe…

論文のメモ: NGSでミトコンドリアDNAの全長解析

D2のWさん関係で、環境DNAに最近興味あり。 「古腹足類のミトコンドリアゲノム全長配列」 Williams S.T., Foster P.G., and Littlewood D.T.J., 2014, The complete mitochondrial genome of a turbinid vetigastropod from MiSeq Illumina sequencing of ge…