備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 路面排水に曝露したギンザケに現れる症状

昨年末に出たScience論文の関連(→その時の自分のメモ)。

 

Blair SI, Barlow CH, McIntyre JK. 2021. Acute cerebrovascular effects in juvenile coho salmon exposed to roadway runoff. Canadian J Fish Aquat Sci 78(2): 103-109.

血液脳関門(BBB; Blood-Brain Barier)の破壊がメカニズムらしいです。BBBが破壊?されることで脳血管系から血漿が漏れ出てくるとか。既報で示されていたヘマトクリット値の増加などは必要条件ではなかったそうです。また浸透圧調節への影響でもなさそうだと。

BBB破壊とScienceで発見された6PPD quinoneとの関係はまだ不明。キノンはredox activeな物質だから云々と考察で述べられてますが、まぁまだまだメカニズムは不明っぽいです。このBBB破壊が、McIntyre et al.(2018, Environ Pollut)で報告されている種間差をどう説明できるのか気になります。

 

 

Chow MI, Lundin JI, Mitchell CJ, Davis JW, Young G, Scholz NL, McIntyre JK. 2019. An urban stormwater runoff mortality syndrome in juvenile coho salmon. Aquatic Toxicol 214: 105231.

行動への影響の出方をStage 1~ Stage 6に分類。水表面を泳ぐようになり、平衡を失い、底に沈み、モリバンド(瀕死)。詳しくは読んでませんが、やってる内容はMcIntyre et al.(2018, Environ Pollut)とほとんど同じ。

 

 

 

論文のメモ: ヨコエビの底質毒性試験における餌の影響

Harkey GA, Driscoll SK, Landrum PF, 1997, Effect of feeding in 30‐day bioaccumulation assays using Hyalella azteca in fluoranthene‐dosed sediment. Environ Toxicol Chem 16(4), 762-769.

このグループの論文、いっぱいあってどれに何が書いてあったか忘れてしまうのでメモ。PAHsの1種フルオランテンの蓄積試験で、餌(YCT)の有無による影響を調べた論文。餌を与えた方が蓄積は増加したそうです。

論文の本筋ではないけれど、底質の表層2~5 mm"fliocculante layer"をピペットで採取して、底質のソコ(ビーカーの底; 深いところ)のフルオランテン濃度と比較してますが、この結果が不思議です。表層の方がソコよりも4倍くらい濃度が高い。汚染されていない水を添加しているため、表層の方が汚染物質が抜けているはずなのにどういうこと?餌がない場合でも同じ結果なので、餌のせいで分配挙動が異なっているわけでもないようですし。経時的に見て表層の濃度は徐々に下がっていき、ソコの濃度は安定、というのは納得できますが。。。

 

論文のメモ: 溶存有機物によるピレンのオオミジンコへの取り込み量増加

 

Lin H, Xia X, Jiang X, Bi S, Wang H, Zhai Y, Wen W, Guo X, 2018, Bioavailability of pyrene associated with different types of protein compounds: Direct evidence for its uptake by Daphnia magna. Environ Sci Technol 52(17): 9851-9860.

面白い。PAHsの1種であるピレンと、分子量の異なるタンパク質を同時にオオミジンコD. magnaに曝露し、体内への移行と毒性を調べた論文。ちゃんとpassive dosingでフリー態濃度を一定にしているのが地味に肝。

分子量2000 Daのトリプトンは消化管内の細胞膜を通過するので、トリプトンと同時にピレンも体内に吸収されるが、より分子量の大きいBSAとフィコシアニンは細胞膜を通過しないためそれらのタンパク質が分解されたものと同時に吸収されるか、それらのタンパク質から脱着したピレンが吸収されるかしかない。

この話自体はJagerの論文で想定している話と大体同じ。Jagerのkinetic modelと合わせて考えると、どの経路の寄与が大きいのかを考慮することができてより面白くなりそう。

さらっと書いている次の文もなかなか大事。"It should be noted that because both the uptake and elimination rates of HOCs in organisms in natural waters might be elevated by the DOM- promoted diffusive mass effect simultaneously, the steady-state concentration of pyrene accumulated in D. magna might state concentration of pyrene accumulated in D. magna might not be affected by the DOM-promoted diffusive mass effect."試験期間を長くしたら、平衡に達してこの論文で議論されている差はなくなってしまうかもしれない訳ですね。でももしかしたら平衡濃度を変えてしまう可能性もあるわけで(本当に排出速度も増加するかはわからないため)…そのあたりは実験しないと分からない?

 

 

 

 ↑の兄弟的な論文。自然河川のDOMを分子量分画して同様の検討を行ってます。

Lin H, Xia X, Bi S, Jiang X, Wang H, Zhai Y, Wen W, 2018, Quantifying bioavailability of pyrene associated with dissolved organic matter of various molecular weights to Daphnia magna, Environ Sci Technol 52(2): 644-653.

 

 

論文のメモ: 平衡分配法EqPと曝露経路

 

Jager T, 2004, Modeling ingestion as an exposure route for organic chemicals in earthworms (Oligochaeta), Ecotoxicol Environ Safety 57(1): 30-38.

General Unified Threshold model of Survival (GUTS) のJagerさんの論文。この論文以外にも昔はミミズの試験をかなりやっていた様子。

土壌や底質のリスク評価で用いられている平衡分配法(Equilibrium Partitioning, EqP)は水由来の曝露のみを対象にしており摂餌曝露を考慮していない、という批判に対する反論。HCB(log Kow 5.7)を対象物質として、土壌・ミミズ組織・消化管という3相からなるkinetic modelを構築しています。

摂餌曝露であっても消化管から体内への移行はpassiveなので、EqPの前提を逸脱するわけではない、というのが骨子。EqPによる毒性(蓄積)予測を上回るのは、濃縮が生じる場合、すなわち有害物質を含んだ食物が消化されて有害物質を吸着できなくなるような場合、です。

モデリングの結果、摂餌由来の蓄積への寄与の方が水由来の寄与よりも大きかったにもかかわらず、蓄積の実測値はEqPによる予測から大きく離れていなかった(差は< 50%)そうです。

 

この論文、平衡分配法を論じているECHAの文書(ECHA 2008, Chapter R10)にもちゃんと引用されてますが、正直その解釈がよく分からない。。

論文のメモ: 環境RNA(eRNA)のあれこれ

某オンラインセミナーで紹介されていた論文たち。

河川や海、陸域における生物種の在、不在や生物量を推測するための環境DNA(eDNA)。環境DNAは、既に死んでいる生物からも検出されるため、本当はその対象地域に生息していない魚種なのに漁港や家庭排水のために検出されてしまうこともあるそうです。PCRで増幅する断片の長さを短くするなどの工夫はありますが、もっと生物の活性を反映した手法はないのか、ということで環境RNAに注目が集まっています。

早稲田で生態学会が開かれていた時(なので2017年)くらいに、環境RNAを毒性試験における非破壊的なモニタリングに使えないかなとぼんやり妄想してましたが、まだそういう応用例はほとんどないようです。

応用できたとしても、やはりネックは検出力でしょうか。流水式の魚類では問題ないかもですが、小型の甲殻類などの毒性試験では水は数Lも回収できないですからね。

 

 

Cristescu ME, 2019, Can environmental RNA revolutionize biodiversity science?, Trends Ecol Evol 34(8): 694-697.

2019年の総説、というか軽い読み物。「RNAは素早く分解してしまうから使えないのでは?」という懸念に反し、RNAは意外と分解しないっぽいよ、と述べてます。

環境RNAがどのような形態で存在しているのか、という議論は面白い。細胞に入っているのか、Extracellular vesicles (EV, 細胞外小胞) に入っているのか、カプシドに守られてるのか、それともfreeなのか。まだ知見は全然ないそうですが、ちょろっと書いてある生物体内でのmRNA輸送と絡めて考えると発展の余地が多くて面白そうです。

 

Wood SA, Biessy L, Latchford JL, Zaiko A, von Ammon U, Audrezet F, Cristescu ME,  Pochon X, 2020, Release and degradation of environmental DNA and RNA in a marine system, Sci Total Environ 704: 135314.

海産の多毛類とホヤでeDNAとeRNA(ともにミトコンドリアCOI)の分解速度を室内実験で調べた研究。水だけでなくバイオフィルムも調べてます。絶対量はeDNAの方が多いけど、分解速度はeRNAと大差なかったという結果。

水中では検出されなくなったときに、バイオフィルムでは検出されたのは面白い!毒性試験への応用はこっちのほうが現実的かも?時間的にある程度平均化された値を示しそうですし。

 

 

Tsuri K, Ikeda S, Hirohara T, Shimada Y, Minamoto T, Yamanaka H, 2020, Messenger RNA typing of environmental RNA (eRNA): A case study on zebrafish tank water with perspectives for the future development of eRNA analysis on aquatic vertebrates, Environmental DNA.

ゼブラフィッシュの組織特異的に発現する遺伝子に着目し、環境RNAがどの組織(鰓、腸管、表皮)から放出されたのかを追求した論文。ゼブラのSkinやmuscleで発現していない遺伝子でも水中の環境RNAとしては検出されています。

 

 (追記 2021.02.02)

Liu M, Sun Y, Tang L, Hu C, Sun B, Huang Z, Chen L, 2021, Fingerprinting fecal DNA and mRNA as a non-invasive strategy to assess the impact of polychlorinated biphenyl 126 exposure on zebrafish, J Environ Sci 106: 15-25.

ゼブラフィッシュをPCBに曝露して、糞のDNAとmRNAを調べた論文。DNAのエンリッチメント解析もやってmRNAより差がない、と述べてますが当たり前では…?むしろなぜDNAで差が出てしまうのでしょうか。単純に誤差?

 

論文のメモ: ギンザケの死亡を引き起こすタイヤ由来の化学物質が同定される

悔しい気持ちはあるけど、それ以上に妄想が広がって楽しい。ただ悔しい気持ちが少ないのは、今はもうこの界隈から手を引きかけていたからかも。

 

Tian Z, Zhao H, Peter KT, Gonzalez M, Wetzel J, Wu C, ...  McIntyre JK, Kolodziej EP, 2020, A ubiquitous tire rubber–derived chemical induces acute mortality in coho salmon. Science.

路面排水を受ける河川におけるギンザケの死亡(→この記事参照)。  2000年代からアメリカ西部で確認されていて、2010年代に色々と論文が出ていました。

どうやらタイヤ由来の物質が怪しいというところまでは近年の検討から分かっていましたが、なかなか原因物質までは辿り着けていませんでした。「原因物質を同定するまでには数年はかかるかも(Spromberg et al., 2016 JAE)」なんて言われていましたが、今回、ついにギンザケ死亡の原因物質が同定されました。Science!

原因物質は6PPD-quinone(2-anilino-5-[(4-methylpentan-2-yl)amino]cyclohexa-2,5-diene-1,4-dione; CAS不明, PubChemにページあり ID:154926030)。タイヤの酸化防止剤である6PPD(CAS:793-24-8)が酸化によって変化したもの。6PPDはタイヤの0.4~2%w/wを占めている成分で、その用途から考えて6PPD-quinoneが普遍的に路面環境中に存在するのは、ある意味当然と言えるでしょう。

やっている内容は結構地道で、TIE&EDAな分画と曝露試験、化学分析の繰り返し。面白かったのは、6PPD-quinone(=C18H22N2O2)がデータベースや文献に存在しない"true unknown"な物質だったこと。ならば、環境中で変化した物質だろうと推測してタイヤに含まれる物質でC18HxNxOxな物質がないか探したところ、6PPDにヒットして、6PPDをオゾン酸化したら見事それっぽい物質ができた、そうです。この辺りのストーリー語りはScienceとかNatureの論文形式ならでは。興奮が伝わってきます。

親物質である6PPDの24時間半致死濃度(LC50)は251 μg/Lである一方(設定濃度ベース)、6PPD-quinoneの24h LC50は1.46 μg/L(設定濃度ベース? 実測だと0.79 μg/L?)。

 

論文でも書かれている注意事項は、①6PPD-quinone以外の物質による毒性への寄与は否定していない、②6PPD-quinoneの定量はsurrogateを用いない絶対検量で行われているため特に環境試料の定量結果には改善の余地があるかもしれない、③毒性試験中の6PPD-quinoneや6PPDの安定性はよく分からない(logKowはそれぞれ5~5.5, 5.6なので吸着などによるロスは大きいはず)、ことなど。

個人的に気になったのは今回のScienceではjuvenileの鮭を用いているけれど、2011年のPlos One論文では「adultでは影響がみられたけどjuvenileでは見られなかった」という報告があること。成長段階の違いや種の感受性の違いを考慮すると、6PPD-quinoneの影響はこの論文で議論されているよりもっと大きいかもしれない?

また、現在使われている多くのタイヤに含まれているなら、代替物質が出て来たとしても当分6PPDおよび6PPD-quinoneによる影響は残るはず。現場環境での影響低減策が求められますね。

 

なお第一著者のZhenyu TianさんとJenifer McIntyreさんのインタビューなどを含む動画はここ

 

 

Moldovan Z et al., 2018, Environmental exposure of anthropogenic micropollutants in the Prut River at the Romanian-Moldavian border: a snapshot in the lower Danube river basin, Environ Sci Pollution Res 25(31): 31040-31050.

ドナウ川支流のプルート川における、親物質である6PPDの検出報告例。平均37 ng/Lで、最大140 ng/L。

 

 

Prosser RS et al., 2017, Toxicity of sediment‐associated substituted phenylamine antioxidants on the early life stages of Pimephales promelas and a characterization of effects on freshwater organisms, Environ Toxicol Chem 36(10): 2730-2738.

親物質である6PPDの毒性試験例。論文中ではDPPDAと称されています。このグループは他の生物種でもフェニルアミン類の試験をいくつか行っていて、2017年にいっぱい論文が出ています。

この2017年のET&Cの論文ではそれらの試験結果をまとめた種の感受性分布(SSD)が示されていて(Fig1およびTable S14)、急性影響に限るなら、魚類+無脊椎動物に対する6PPDのEC50はざっくり100~数百 μg/Lの範囲。上のScience論文ともおおむね一致します。

 

2020年よく聴いた曲

SpotifyがYour Top Songs 2020なるリストを出してくれてました。

 

Top 1~15がこれ。

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Slyが1位とは。。本当に2020年のリストでしょうか、これは。

今年上半期に謎のSly&The Family Stone再評価の波が(自分の中で)来てたのでした。確かにThank Youは聴きまくったかも。

NORIKIYOはそんなに積極的に聴いてた覚えないけど、適当なシャッフルの中によく入っていたのかな。Elle Teresaはこの1ヶ月かなりヘビロテ。多分ゆるふわギャング繋がりで、ゆるふわ自身も相変わらずよく聴いてました。

 

Spotifyは通勤中にしか使わないので、在宅勤務をしていた今年はそもそもの分母が少ないのかも。だから数回聴いただけでもTopに入ってくる偏った(2020年の個人的な音楽鑑賞実態を反映していない)リストになってる可能性。。すごい狭いアーティストしか入ってないし。

 

以下Top15~45。

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カメレオン・ライム・ウーピーパイ、最近のお気に入り。気だるさと若干の棘のあるオルタナロック感。ちょっとChibo Matto的な。

Top 44のKID FRESINOの曲も良かった。FRESINOって客演活かすの上手い。

論文のメモ: 土壌汚染の生態リスク評価 ~平衡分配や有機物含量による標準化など~

土壌汚染の生態リスク評価について。

底質のリスク評価では、間隙水と底質と生物の3相で化学物質の平衡状態を仮定する平衡分配理論(Equilibrium Partitioning Theory; EqP)を割と良い感じで使えて、非イオン性の有機物については、間隙水のフリー溶存態で毒性影響や生物蓄積がざっくりと説明できそう、という現状です(細かいことを言い出すと色々違うとなりそうですが、ざっくりと言うと)。

同じような考え方が、土壌の生態リスク評価に適用できるのか。つまり間隙水のフリー濃度を指標にしておおむね説明できてしまうのか、単純に気になって、いくつか文献を見てみました。

  

Redman AD, Parkerton TF, Paumen ML, McGrath JA, den Haan K, Di Toro DM, 2014, Extension and validation of the target lipid model for deriving predicted no‐effect concentrations for soils and sediments, Environ Toxicol Chem 33(12): 2679-2687.

この論文については、以前もブログに書きました。土壌も底質もEqPを適用できる対象として特に区別なく扱われています。  

 

van Beelen P, Verbruggen EM, Peijnenburg WJ, 2003, The evaluation of the equilibrium partitioning method using sensitivity distributions of species in water and soil, Chemosphere 52(7): 1153-1162.

水生生物を用いた毒性試験データ(ug/L)にEqPを適用して土壌の毒性値に換算したものと、土壌を用いた毒性試験のデータ(ug/g)とを比較した論文。比較は、種の感受性分布(SSD)をかいた時のHC5(Hazardous Concentration 5%)などで行なっています。HC5が100倍以上異なる物質もあるという結果。この差は分配係数の不確実性によるところもあれば、SSDの生物種の構成によるところもあるそうです。

あまり丁寧に読んでませんが、金属も含めている点や有機物含有量の標準化の方法など、良く分からないもあり。

 

2021.02.02 追記

Golsteijn L, van Zelm R, Hendriks AJ, Huijbregts MA, 2013, Statistical uncertainty in hazardous terrestrial concentrations estimated with aquatic ecotoxicity data, Chemosphere 93(2): 366-372.

上のBeelenら(2003)とほとんど同じ。土壌と水試験の結果をEqPでつないだもの。突っ込みどころも多いですが、Kocの不確実性をQSAR予測値の誤差?で議論しているのは面白い。

追記終わり

 

Frampton GK, Jänsch S, Scott‐Fordsmand JJ, Römbke J, Van den Brink PJ, 2006, Effects of pesticides on soil invertebrates in laboratory studies: a review and analysis using species sensitivity distributions, Environ Toxicol Chem 25(9): 2480-2489.

土壌の毒性試験データで種の感受性分布(SSD)を推定したという論文。パラチオン、クロルピリホス、λ-シハロトリンなど11物質を対象。

試験標準種であるミミズだけでリスク評価するのは危険だよ、というのが論文の主眼ですが、土壌中濃度を有機物含量で補正していない点が少し気になりました(全てbulkの濃度で評価している)。平行分配法理論に従うなら、有機物含量で補正したいところ。

 

 

Gainer A, Bresee K, Hogan N, Siciliano SD, 2019, Advancing soil ecological risk assessments for petroleum hydrocarbon contaminated soils in Canada: Persistence, organic carbon normalization and relevance of species assemblages, Sci Total Environ 668: 400-410.

あまりちゃんと読んでませんが、土壌でも底質と同じように有機物含量で補正すると毒性値のばらつきが小さくなることが述べられています。

GUTSモデルのRパッケージ

TK-TD(Toxicokinetics-Toxicodynamics)モデルのGUTS(General Unified Threshold model of Survival)のRパッケージについて。なぜか2つもあってややこしいので、メモ。

 

GUTSは、Tjalling Jagerさんらが2011年に発表したTK-TDモデルの一つで、Critical Body ResidueモデルやDEBTox survivalモデルなど、既存のTK-TDモデルを統合した数理モデルです(Jager et al., 2011, ES&T)。名前の通り、生存率を解析するためのモデルで、繁殖影響などには対応してません。

 

GUTSの中にも、TKとTDを分けて考えるFull GUTSと、両者を区別せずに生物を1つのボックスと認識するReduced GUTSがあります。Reduced GUTSは、生存率の経時変化のみを使って、一時的に濃度が急上昇するなど非定常的な曝露に対する致死応答を予測できるという点で、農薬のリスク評価に活用されてきているっぽいです。

 

 

 

そのReduced GUTSを簡単に解析できるツールは、i) ウェブ上でできる"MOSAIC"、ii) Rパッケージの"morse"、iii) Rパッケージの"GUTS"、iv) ダウンロードして使用するGUTS専用のソフトopenGUTSあたり。ここにJagerさんによるまとめあり。

 

MOSAICとmorseは同じもので、ウェブブラウザでできるかRでやるかの違いっぽいです、たぶん。論文はDelignette-Muller et al., 2017, ES&Tベイズ推定とMCMCのコードはJAGSで書かれています。この2017年の論文に対しては、Jagerさんからコメントがあり、パラメータの事前分布を置くことに対する注意喚起がなされています。

なおウェブ上でできるMOSAICについても紹介論文(Baudrot et al., 2018, ET&C)があります。

 

GUTSパッケージは、2011年のGUTS論文の著者の一人でもあるCarlo Albertさんが開発したもののようで、パッケージの論文はAlbert et al., 2016, Plos Comput Biol。こちらはadaptMCMCというRパッケージを使っていて、R内で計算が完結している?また、morseと異なる特徴は、通常の4パラメータのReduced GUTSだけでなく5パラメータのReduced GUTS-properが計算できる点。この妥当性は正直よく分かりません。

 

 

論文のメモ: クロレラとマイクロプラスチックとミジンコ

Albini D, Fowler MS, Llewellyn C, Tang KW, 2020, Turning defence into offence? Intrusion of cladoceran brood chambers by a green alga leads to reproductive failure, Royal Society Open Sci 7(9): 200249.

偶然出あった論文。

緑藻類のクロレラがオオミジンコの育房に入り込んで、オオミジンコの産仔数を減らしてしまうというお話。面白くて一気に読んでしまいました。内容については正直まだ半信半疑ですが。。。24時間明という極端な条件でないと影響がでないというのも。。。

ミジンコは卵に酸素を送るために、水の流れを育房に作っているらしく、そのおかげでクロレラが入り込んだのかもしれない。ただ、クロレラとほぼ同じサイズの緑藻ムレミカヅキモではこれらの現象は見られなかったので、クロレラの戦略ではないか、とのこと。

クロレラのサイズは12μmだそうで、これマイクロプラスチック問題やん、摂食以外の経路を示唆してるやん、と思ったら、すでにそういう論文↓もありました。

  

Brun NR, Beenakker MM, Hunting ER, Ebert D, Vijver MG, 2017, Brood pouch-mediated polystyrene nanoparticle uptake during Daphnia magna embryogenesis. Nanotoxicology 11(8): 1059-1069.

ほぼ読んでません。一応メモ。