備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

2017-01-01から1年間の記事一覧

論文のメモ: Zebrafishのマイクロアレイメタ解析

「化学物質曝露後のゼブラフィッシュ胚のトランスクリプトーム:メタ解析」 Schüttler A, Reiche K, Altenburger R, Busch W. 2017. The transcriptome of the zebrafish embryo after chemical exposure: a meta-analysis. Toxicol Sci, 157 (2), 291-304. …

論文のメモ: ヨコエビの巣穴潜り

ヨコエビは負の光走性だが、産まれたばかりの個体は正の光走性だと前回の論文にありました。自分の飼っているヨコエビは歳をとるほど穴に潜らなくなるので、てっきり逆かと思ってました。この現象に光走性は無関係で、別の要因が関係しているのかも。 「底質…

論文のメモ: 最近読んだヨコエビ系の話(共食い・光走性)

ヨコエビが出てくる論文。生態毒性と関連するのもあったり、なかったり。 「抗うつ剤はヨコエビを光の方へ向ける」 Guler Y, Ford AT, 2010, Anti-depressants make amphipods see the light, Aquatic Toxicol 99:397-404. 選択的セロトニン再取り込み阻害作…

論文のメモ: 底質の金属毒性

「底質中の金属毒性の予測」 Simpson SL, Batley GE, 2007, Predicting metal toxicity in sediments: a critique of current approaches, Integr Environ Assess Manag 3:18-31. 総説。以下に簡単なまとめ。 底質の金属毒性を考えるときは、生物種による違…

「破壊する創造者」感想

生物ってなんでもありだな、というのが一番の感想。 進化は突然変異と自然選択だけではなく、共生発生や異種交配、エピジェネティクスによっても生じる。そしてウイルスは共生発生による進化の大きな推進力になっている。端折りまくった本書の概要は、おおよ…

論文のメモ: 外来鳥類の定着成功を決めるのは?

「成功した侵略種の生活史を解明する」 Sol D, Maspons J, Vall-Llosera M, Bartomeus I, García-Peña GE, Piñol J, Freckleton RP, 2012, Unraveling the life history of successful invaders, Science 337: 580-583. ここ最近読んでいたinvasion success…

論文のメモ: 外来種と化学物質汚染 その2

前回の続き。前回は、外来種の方が高い汚染耐性を持つという報告を中心に見ましたが、今回はその逆の話。 「在来種の二枚貝は外来種より耐性が高いのか?」 Faria M, López MA, Díez S, Barata C, 2010, Are native naiads more tolerant to pollution than …

論文のメモ: 外来種と化学物質汚染

外来種って応用的な問題であって、純粋科学の扱うトピックではないと勝手に思ってましたが、そんなことないかも。壮大な野外実験だと思えば、結構面白い。 「侵略種はランダムに選ばれているわけではない」 Karatayev AY, Burlakova LE, Padilla DK, Mastits…

論文のメモ:ヨコエビ飼育のための人工海水の素

「汽水産端脚類を用いた慢性非致死底質バイオアッセイ」 Emery VL, Moore DW, Gray BR, Duke BM, Gibson, AB, Wright RB, Farrar JD, 1997, Development of a chronic sublethal sediment bioassay using the estuarine amphipod Leptocheirus plumulosus (S…

論文のメモ: メタゲノム情報の保存庫としての貝殻

気晴らしで読んだ論文。 「メタゲノムアーカイブとしての貝殻」 Coutellec MA. 2017. Mollusc shells as metagenomic archives: The true treasure is the chest itself. Mol Ecol Resources 17(5): 854-857. Der Sarkissianら (2017) の解説記事。貝殻のDNA…

TSAに登録する際のmultifastaファイルの編集

NGSで読んだcDNAをデータベースに登録するとき、生配列はSRA(Sequence Read Archive)だけど、アセンブリ配列はTSA(Transcriptome Shutgun Assembly)という区分だそうな。 提出するfastaファイルは以下の形式に則っていないとダメだそうです。 >CLN01 <--…

論文のメモ: 遺伝子ネットワーク推定とAOP

マイクロアレイやRNA-seqのデータから遺伝子間の関係(ネットワーク)を推定し、有害物質によって引き起こされる悪影響adverse outcomesのメカニズムを明らかにしようという研究について。 「システム生物学アプローチによってNarcosisのCa依存メカニズムを…

論文のメモ: 水生生物の体内に蓄積した金属の細胞内局在と毒性影響との関係

このへんの論文と関係ある話。体内の全蓄積量よりも、解毒された量を除いた画分の量の方が、毒性影響に関係しているのではないかという話。 「二枚貝におけるCd・Znの細胞内局在:MSFとBDMの重要性」 Wallace WG, Lee BG, Luoma SN. 2003. Subcellular compa…

論文のメモ: 侵略的外来種なヨコエビの話

「侵略的ヨコエビになる方法:生活史形質の比較」 Grabowski M, Bacela K, Konopacka A. 2007. How to be an invasive gammarid (Amphipoda: Gammaroidea)–comparison of life history traits. Hydrobiologia 590(1), 75-84. ヨーロッパにおける旧ヨコエビ亜…

論文のメモ: 環境毒性分野での遺伝子発現データと機械学習

マイクロアレイやRNA-seqの遺伝子発現データから、機械学習を使って情報を引き出す話。例えば、発がん性物質に曝露したデータと曝露してないデータを与えて、発がん性の有無を識別できる遺伝子(バイオマーカー)を探索する研究などがあるかと思います。昔こ…

第23回環境毒性学会@東洋大

参加してきました。 面白い発表もあり、自分のポスターでも多くの人と深い議論ができて充実感がありました。ただあんな成果0の発表で賞をいただいて、申し訳ないです…。最後の海洋汚染に関するシンポジウムは所要のため参加できませんでした。 増えすぎても…

新モンスターになって欲しかった人 @フリスタダンジョン

フリースタイルダンジョン。2代目モンスターがようやく全員発表されましたね。 2代目もバランスの取れた良いメンバーだと思いますが*1、もう少し幅のある人選を期待してました。初代は漢とかサイプレス上野とか、楽曲面や人望?で既にプロップスを得てる人が…

論文のメモ:ヨーロッパの新しい水質モニタリング (EDAや網羅的な化学分析)

年始に参加させてもらった、混合物・複合影響評価に関する勉強会。その内容に近い論文を読んでみました。 ヨーロッパでの水質モニタリングの話。 河川には人為起源の多数の化学物質が含まれるので、決められた少数の物質だけモニタリングの対象にしていては…

海外ポスドク目指して就活中 ~メール・Skype編~

去年学位をとったポスドクです。 今の契約は今年度末までなので、そろそろ次のポジションを確定させておきたいところです。 何も考えず自由に海外へ行けるのは今ぐらいしかなさそうだし、一度は行ってみたいので、海外就活を目指すことにしました(適当)。 …

「化学の歴史」感想

全部読み通しました。が、ちょっと退屈だったかも。研究の歴史を勉強するのは好きです。高校の時、村上陽一郎の「新しい科学論」というブルーバックスの本を読んでから。 科学史を知ると、今現在の科学が磐石ではないこと、これからダイナミックに変化してい…

論文のメモ: トキシコゲノミクスのデータベースを生態毒性学に活用した例

トキシコゲノミクス(toxicogenomics)は、トキシコロジー(toxicology, 毒性学)とゲノミクス(genomics, ゲノム学)をあわせた言葉で、遺伝子の変異や発現変動を網羅的に見ることで生体内で生じる毒性影響のメカニズムを理解しようという学問です。 Compar…

右下腹部の違和感の原因

右下腹部に鈍い違和感。走った後に脇腹が痛くなる感覚に似ているが、それよりも軽い痛み。 一度目は3か月くらい前。その時は、特に何もせず、4日間くらいで収まりました。 次は1週間くらい続いたので、お医者さんに診てもらいました。血液検査に尿検査、そし…

リアルタイムPCRで発現量比の差を解析する統計的手法

リアルタイムPCRで発現解析時の統計手法 遺伝子Aの発現量が条件αと条件βで変わらないかどうか、リアルタイムPCRで調べたい。そんなときの話です。 複数のハウスキーピング遺伝子のCt値(あるいはCp値)と遺伝子AのCt値との差(=ΔCt)を条件α・βごとに求めて…

論文のメモ: 28S rRNAのhidden breakについて

一部の生物種は、28S rRNAの真ん中あたりに切れ目が入っていることをこの記事に書きました。その切れ目はhidden breakと呼ばれ、28S rRNAが分裂するときに一部の塩基が消失することはgap deletionと呼ばれているみたいです。 今回は、hidden breakについて少…

論文のメモ: RT-PCRを始めるにあたって読みたい文献

リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析の原理、実験手法やデータ解析法について。 いちばん分かりやすく丁寧なのは、タカラやサーモの日本語解説でしょう。特にサーモの「リアルタイムPCRハンドブック」は最高。それらを読んだ後に、将来論文に引用すること…

論文のメモ: RINは 全ての生物種のRNA分解指標にはできない

動物組織から抽出したRNAの分解度合は、電気泳動によって評価するのが普通です。ヒトなどの場合は、バイオアナライザーという装置で泳動して RIN (RNA Integrity Number; Schroeder et al., 2006) なる指標で分解度を評価します。RINの考え方は、RNAの中で大…

生物サンプルの送付依頼

1月ほど前、某国の研究者から遺伝子解析したいので生物サンプル送ってくれないか、という問い合わせメールが来ました。 良いよ~、でもCOI領域なら既に300 bpくらい既に読んであるので配列データ送るね、と返信したところ、1月ほど音沙汰なし。 自分とは異な…

論文のメモ: 化学物質曝露と甲殻類の脱皮

この記事とほぼ同じ内容。 どうも、ZnやCdが脱皮を阻害する発端のメカニズムはCa摂取阻害で説明できそう。Caは殻の材料でもあるし、またCaは脱皮を制御するecdysteroidホルモンをコントロールしているので。 「総説:異物曝露が甲殻類の脱皮に与える影響」 Z…

H先生の最終講義

先日H先生の最終講義があって、見てきました。先生の半生記とか、学科の歴史とか、研究に対する哲学とかが聞けるかと思いきや、本当にふつうの講義みたいなのをしていました…。いちおう近年の研究の象徴的な話だったようですが、ちょっと残念でした。まあ、H…

映画「La La Land」

公開初日に観ました。プレミアムフライデーで。 まあ面白かったです。でも前評判ほどではなかったかな。 夢追い人の話。ストーリーはありきたりですが、二人がケンカしてからは、けっこう感情移入しちゃいました。ラストの切ない感じは良かったです。もし、…