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a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文「コントロール底質を用いて汚染底質の希釈列を作成するのはOK?」

底質のような固相試料の希釈は、液相の試料の希釈より困難です*1

汚染底質の希釈列作成の必要性:ひどく汚染された底質が複数あります。それらを採取し、底生生物を曝露させたところ、どの底質においても曝露させた全部の個体が死亡したとします。この時、汚染底質の毒性の順位付け、毒性の定量化はどのようにすれば良いのでしょう。汚染底質を、清浄な底質で希釈すれば良いのです。そして、用量反応関係(dose-response relationship)を比較します。1%に薄めて*2ようやく致死が確認されなくなった底質Aと、50%に薄めれば致死が確認できなくなった底質Bでは、底質Aの毒性の方が高いと言えます。このように非常に有益な情報源である用量反応関係を得るということが、汚染底質を希釈する一つの動機です。

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「希釈に用いる清浄な底質を何にするかが重要だ」という問題提起が下の論文です。1993年なので少し古いですが。

Nelson M.K.,Landrum P. F., Burton Jr. G.A., Klaine S.J., Crecelius E.A., Byl T.D., Gossiaux D.C., Tsymbal V.N., Cleveland L., Ingersoll C.G. and Sasson-Brickson G., 1993, Toxicity of contaminated sediments in dilution series with control sediments, Chemosphere, 27 (9), 1789-1812. 

清浄な底質(以下、コントロール底質)と言っても、千差万別です。粒径分布や有機物含量などは、底質によって様々でしょう。そのためコントロール底質の種類が変われば、同じ汚染底質を希釈しても、毒性は変化します

希釈に使用するコントロール底質によって、用量反応関係が変化することが下表に示されています*3。下表は、ヨコエビHyalella aztecaとユスリカChironomus ripariusを、Indian HarborとSaginaw Riverで採取した汚染底質に曝露させた生存試験の結果です。希釈に用いたコントロール底質は粘土質のcontrol soilと、砂っぽいNOAA sandの2種です。例えばH. aztecaの結果を見ると、Indian Harborのどちらの底質でもともに、NOAA sandで希釈した方がcontrol soilより毒性が高くなっています*4。 

*1:と言っても、排水のような液相試料の希釈でも、塩分みたいなマトリックスを考慮する必要はもちろんあります

*2:底質A:清浄な底質=1:99

*3:希釈率は乾重量dry weightベース。

*4:希釈しても毒性が下がっていない。