備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

最近読んだ論文のメモ: 遺伝子発現レベルでのSSD・類似度検定PERMANOVA

「遺伝子発現レベルでの種感受性分布 SSD

Yan Z., Yang N., Wang X., Wang W., Meng S. and Liu Z., 2012, Preliminary analysis of species sensitivity distribution based on gene expression effect, Sci. China Earth Sci., 55(6), 907-913. 

Cd, Cu, Znの種の感受性分布(SSD)を遺伝子発現レベルで求めてみたよ、論文。Cdで同様のことをおこなっているFedorenkovaら (2010) の研究がベースにあるみたいです。

Fedorenkovaら (2010) の研究はデータ不足だから追加してみた、という趣旨ですが結局この論文でも依然データ不足でSSDが欠けるレベルではないという…。他にも突っ込みどころ満載です。例えば遺伝子発現レベルのSSDを描くときに「何の遺伝子を対象にしているか(すべきか)」という議論が全くないのはどうなんでしょう。とにかく一番sensitiveな遺伝子を選んでいるみたいですが。また、発現レベルではそもそもどういうdose-responseモデルが考えられるのかも、議論すべきでしょうし…。曝露時間も。

 

 

「遺伝子発現レベルでの種感受性分布 SSD:Cdの例」

Fedorenkova A., Vonk J.A., Lenders H.R., Ouborg N.J., Breure A.M. and Hendriks A.J., 2010, Ecotoxicogenomics: Bridging the gap between genes and populations, Environ. Sci. Technol., 44(11), 4328-4333. 

上の論文を読んでもやもやしたので、元ネタ。ざっくり読んでみました。最後の方で述べられているように、発現レベルの試験法を確立するのが先決では。

この論文に対するコメントが、自分の抱いた違和感を代弁してくれていてすっきり。いわく"Fedorenkova et al. should have been a little bit more patient and waited until ecogenomicists had solved all these problems, before applying the SSD approach to gene expression." 結果として悪影響につながるような発現変動のみを考慮すべき、というAOP (Adverse Outcome Pathways) の概念。

 

 

類似度の検定:PERMANOVAについて

Sweetman A.C., Kettenring K.M. and Mock K.E., 2013, The pattern and structure of genetic diversity of Schoenoplectus maritimus: Implications for wetland revegetation, Aquat. Botany, 104, 47-54. 

類似度の検定手法の勉強のためにざっと見。AFLPで調べた地点間の遺伝子の類似度の比較のために、permutational multivariate ANOVA (PERMANOVA) を使用。PERMANOVAの理解は、土居・岡村 (2011) を参考にしました。

各地点の遺伝的類似度のペア比較をPERMANOVAでおこなっていて、なんとなく違和感を覚えました。しかしPERMANOVAではpermutationシミュレーションによって検定しているので、現状post hocのシステムが出来てない。そのためPERMANOVAで一対比較をせざるをえないよう。Rのveganの作者のOkansenさんがネットの掲示板で書いてました

(追記)

 遺伝的類似度と地点間距離の比較はMantel testでおこなっています。Slope, R, p値を表記。

(追記)

Anderson (2001) でも、ペア比較を薦めてます。ちなみにPERMANOVAの唯一の前提は、「観測データの分布が似ている」こと。ANOVAで等分散を仮定するようなもの。

 

(さらに追記: 2015.09.11)

RでのPERMANOVAは、veganパッケージのadonis関数を使います。入れ子型(nested)のPERMANOVAや交互作用のあるPERMANOVAを試していたのですが、下の二つが同じ結果を示しました。

adonis(formula=data~factorA, data=dat, method="jaccard", strata=dat$time, permutation = 5000)

 ## strataでtimeのnestedを試みている

adonis(formula=data~factorA, data=dat, method="jaccard", strata=NULL, permutation = 5000)

## こちらはnestedなし

 なんでやねんと調べてみたら、strataで指定されているのはpermutationの方法であって、F値の算出方法ではないとのこと(参考URL)。F値の算出(群間平方和の算出)法をnestedにしたければ、下のように書かないといけないみたいです。

adonis(formula=data~factorA/time, data=dat, method="jaccard", strata=NULL, permutation = 5000)

## factorAはtimeによってnestされている

 permutationの方法はまだよく理解してません…。