どうして消毒してはいけないのか。それは、消毒によって細菌だけでなく人間の皮膚の細胞まで破壊され、さらに皮膚が乾燥してしまい、傷の治りが遅くなるから。また、消毒すると、皮膚常在菌が殺されて、その隙に病原性を持つ通過菌(例:黄色ブドウ球菌)が侵入してくるため、傷が化膿する原因にもなります。
ではどうすれば良いのか。「消毒しない・乾燥させない」を徹底すれば良いそうです。近頃よく見るハイドロコロイド素材の絆創膏などで傷口を覆えばOK。傷口からの滲出液には細胞成長因子なる物質が含まれており、傷の治りを促進するため、滲出液を傷口で保持しておくことが大事みたいです。
書名に関連する内容はあらかたこんな感じです。
ただ本書は、それ以外の枝葉が多い。面白い部分もあれば少しシツコイ部分も。
筆者の湿潤医療が医学界に中々受け入れられなかったこともあってか、医学界への攻撃やらパラダイムの話に紙幅がけっこう割かれています。これはシツコイなと思った部分。まぁ気持ちはわからなくもないですが…。医師は常に目の前で苦しんでいる患者に対処しなければならないため、誤った治療法であってもとりあえず施され続け、今まで残ってきた、という話は自分の専門の実学・工学にも通ずるところがある気がします。
最後の章の進化についての脱線?は面白かったです。皮膚に存在する神経伝達物質は元々は創傷治癒物質だったのでは、とか。専門家から見てどこまで正しいかは分かりませんが楽しく読めました。
傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)
- 作者: 夏井睦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/06/20
- メディア: 新書
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