環境毒性と環境化学の学会であるSETACのAsia-Pacific会議に参加しました。2年に1回の開催で、今回は天津での開催でした。
縁あって、あるセッションの共同座長として招待してもらったのですが、すごい歓迎ぶりでした。座長や招待講演者のおそらく全員に対して、空港から会場までの1時間半ほどの車での送迎を手配し、さらに参加費と宿泊費を提供していました。セッションの数は全部で37個だったので座長が2人ずつだとしても最低74人。100人以上は招待していたはずです。夕食では食べきれないほどの料理を山ほど出してくるというベタな歓待もありました。
ちなみに参加者は1000人超えで、体感では9割以上が中国人でした。たぶん日本人は10人くらいだったと思います。
例えば18セッションも同時に進んでいるなど、パラレルで実施されているセッションが多すぎて、あまり全体像は把握できなかったかも。
中国がすでにオンライン決済が進んでいるとは良く聞いてましたが、学会の交流でも名刺交換など一切なくて、WeChatのIDを交換しまくりでした。交換した後に誰がどれか分からなくなるので、所属とか話したことをメモしました。
個人的に面白かった発表は、以下。
- 誘導ラマン散乱による分子分光イメージング法で水滴内の各種イオン濃度を測定し、pHの分布を計算するという研究(Gong et al., 2023, PNAS)。
- 分子学的・生化学的な影響をSSDに組み込んだ研究。具体的にはvitellogeninnのmRNA発現などをエンドポイントとして、重みづけしてspecies sensitivity weighted distribution(SSWD)の中に組み込んでいるということです。「おいおい」と始めは思いましたが、NAMsな昨今、方向性は間違ってないかも。重みづけは何らかのvalidationが必要とは思いましたが。論文はZhang et al., 2024, Chemosphere。
- トロント大学のHui Peng氏による6PPD-Qの毒性。いくつかは既に発表しているpreprintの内容でしたが、6PPD-Q-C3OHはギンザケ細胞CSE-119で約60 ppbのLC50を示し、6PPD-Qと同程度であったものの、6PPD-Q-C4OHは有害影響を示さなかったという結果は新しいデータで色々とびっくり。 (2024.11.08追記)細かいデータの値が後ほど出たプレプリントと違う?この記事参照。プレプリントでは6PPD-Q-C3OHのEC50は67.4 ppbだが、6PPD-QのEC50は17.1 ppbで、6PPD-Q-C3OHの毒性は6PPD-Qより低め。(追記ここまで)
- 抗菌材Azoxystrobinの継世代影響(Transgenerational effect)。F0にNOEC以下で曝露し、F1とF2には曝露をしていないのに、F2に心拍や体長などの発達異常が見られたという話。原因となる遺伝子のDNA methylationや発現なども解析されていて、中々面白かったです。いくつか関連の論文はすでに出ているようです(例:Cao et al., 2019, STOTEN)。