Amazonで評判が良かったので、購入。タイトルからアリの生態学に関する本だと思ってたら、「アリと共生する昆虫(好蟻性昆虫)の分類学」に関する本でした。
丸山宗利, 2012, アリの巣をめぐる冒険-未踏の調査地は足下に-, 東海大学出版会
分類学のことは良く分からず、好蟻性昆虫の学名がずらずら並ぶ箇所は少し読むのが辛かったですが、素朴というか実直というか、著者のそんな人柄が伝わってくる本でした。
例えば、「分類学は科学かという議論」のようなコラムがあります*1。このような抽象的な話題は、頭でっかちな議論になりがちですが、著者の分類学者としての経験を踏まえた地に足が着いた論が展開されていて説得力があると思えました。
他にも、分類学研究の苦労を伝えるエピソードを下にいくつか。
- 著者は博士論文を元にした論文で、500枚程の昆虫の絵を描いたそうです。絵を描く際は、実体顕微鏡を見ながら同時に描いたらしいです。その作業の負荷のため、一年間で視力が1.2から0.3に下がったと言います。同じような作業をして、失明した日本の昆虫学者もいるそうです。(p.52)
- 熱帯地方ではデング熱は普通で、現地では風邪程度にしか扱われない*2。(p.99)
- アリを探すために朝から晩まで、ひたすら地面を見て歩くこともあるそうです。日中30℃を超える熱帯地方では、汗が体中からにじみ出てきます。マレーシアでの1か月の滞在で体重が10キロ以上落ちたとか。 (p.86)
アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)
- 作者: 丸山宗利
- 出版社/メーカー: 東海大学出版会
- 発売日: 2012/09
- メディア: 単行本
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