Natureのニュース記事で紹介されていたPNASの論文。Natureダイジェストのページに邦訳有(→こちら)。
Udikovic-Kolic N., Wichmann F., Broderick N. A. and Handelsman J., 2014, Bloom of resident antibiotic-resistant bacteria in soil following manure fertilization, PNAS, 111(42), 15202-15207.
抗生物質を与えられていない牛の糞を肥料にした土壌は、化学肥料である窒素を投与した土壌に比べて、抗生物質耐性菌がより多くなっていたという話。抗生物質の耐性はβ-ラクタマーゼをコードする遺伝子を指標としています。
β-ラクタマーゼは、β-ラクタム系抗生物質を分解する酵素です。β-ラクタム系抗生物質とは、ペニシリンなどを含む抗生物質の区分名で、農業分野でも家畜の感染症予防などの目的で広く使用されているようです。
非常に不思議な結果ですね。抗生物質はもともと自然由来だから、このようなことも起きうると言われればそうかもしれませんが、牛糞によって耐性菌が増加したメカニズムが気になります。
論文では、牛糞の投与によって耐性菌が増加したのは、耐性菌が牛糞に含まれていたというからという理由ではなく、「元々土壌に存在していた耐性菌群が牛糞の投与によって活性化した/優位になった」からだと結論付けられています。そして考察では、牛糞中の栄養分や重金属が淘汰圧として働いたのではないか、と述べられています。
β-ラクタムを産生する真菌・細菌のことは考察されてないのでしょうか。抗生物質ではなくて、抗生物質を産生する微生物が牛糞に含まれていたというストーリーです。この辺の研究は全く詳しくないので、本当に素人考えですが・・・。