TK-TD(Toxicokinetics-Toxicodynamics)モデルのGUTS(General Unified Threshold model of Survival)のRパッケージについて。なぜか2つもあってややこしいので、メモ。
GUTSは、Tjalling Jagerさんらが2011年に発表したTK-TDモデルの一つで、Critical Body ResidueモデルやDEBTox survivalモデルなど、既存のTK-TDモデルを統合した数理モデルです(Jager et al., 2011, ES&T)。名前の通り、生存率を解析するためのモデルで、繁殖影響などには対応してません。
GUTSの中にも、TKとTDを分けて考えるFull GUTSと、両者を区別せずに生物を1つのボックスと認識するReduced GUTSがあります。Reduced GUTSは、生存率の経時変化のみを使って、一時的に濃度が急上昇するなど非定常的な曝露に対する致死応答を予測できるという点で、農薬のリスク評価に活用されてきているっぽいです。
そのReduced GUTSを簡単に解析できるツールは、i) ウェブ上でできる"MOSAIC"、ii) Rパッケージの"morse"、iii) Rパッケージの"GUTS"、iv) ダウンロードして使用するGUTS専用のソフトopenGUTSあたり。ここにJagerさんによるまとめあり。
MOSAICとmorseは同じもので、ウェブブラウザでできるかRでやるかの違いっぽいです、たぶん。論文はDelignette-Muller et al., 2017, ES&T。ベイズ推定とMCMCのコードはJAGSで書かれています。この2017年の論文に対しては、Jagerさんからコメントがあり、パラメータの事前分布を置くことに対する注意喚起がなされています。
なおウェブ上でできるMOSAICについても紹介論文(Baudrot et al., 2018, ET&C)があります。
GUTSパッケージは、2011年のGUTS論文の著者の一人でもあるCarlo Albertさんが開発したもののようで、パッケージの論文はAlbert et al., 2016, Plos Comput Biol。こちらはadaptMCMCというRパッケージを使っていて、R内で計算が完結している?また、morseと異なる特徴は、通常の4パラメータのReduced GUTSだけでなく5パラメータのReduced GUTS-properが計算できる点。この妥当性は正直よく分かりません。