備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 底質の何%が路面堆積物に由来するのか

路面上に堆積している塵埃は雨天時に水域に運ばれます。水に溶けにくい、あるいは分解されにくい物質は水域の底質として蓄積していきます。では、底質の何%が路面堆積物に由来するのか。その割合を調べた論文たち。

 

「総説:タイヤの摩耗粒子の発生と影響

Wik A. and Dave G., 2009, Occurrence and effects of tire wear particles in the environment – A critical review and an initial risk assessment, Environ. Pollut., 157 (1), 1-11.

タイヤの分子マーカーとして使用されているベンゾチアゾール類などを測定した既往文献のレビューによって、上に書いたような推定をしてます。いわく底質中のタイヤ由来粒子の割合は、0~15.5% w/wだそうです。

意外と割合が高いなと思いましたが、どうも推定方法が妥当かびみょうな気が…。"Based on the reported concentration of the tire marker in the environment and its concentration in tire tread, the corresponding concentration of tire wear particles in the environment was calculated."が「タイヤ濃度」の推定法。物質Aの環境中濃度x mg/kgを、タイヤ中の物質A含有率y%で割って環境中のタイや濃度を求めてる様子。タイヤがまるごと環境中に出ていくんじゃないのに、こういう方法で良いのでしょうか。

 

「タイヤ由来分子マーカーとしてのベンゾチアゾールアミン

Kumata H., Yamada J., Masuda K., Takada H., Sato Y., Sakurai T. and Fujiwara K., 2002, Benzothiazolamines as tire-derived molecular markers: sorptive behavior in street runoff and application to source apportioning, Environ Sci Technol., 36 (4), 702-708. 

こちらの推定方法の方が信頼できます。

底質中と路面排水中とにおけるベンゾチアゾール類(ここではNCBA)濃度を比較して、底質の何%が路面排水由来なのかを推定してます。いわく0.8~6.8%だそうです。

ちなみに筆者らの先行研究で、底質中と道路塵埃とにおける(NCBAではなく、より親水性の)24MoBT濃度を比較したところ、平均13%または25%になったとか。これだと上の総説とも一致する範囲です。感覚的には多いけれど。

流出中の分配の話はちょっとフォローしきれてないので再読必要。