備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

環境化学・生態毒性関連の査読付き雑誌に関する所感 ~2024年1月時点~

環境化学および生態毒性関連の査読付き雑誌(ジャーナル)についての所感。現時点で思ったことを記録として残しておきます。誰かに提言しているわけではなく、将来の自分のために個人的なスタンスを書き残しているという感じ。想定しているのは以下の表のような雑誌。

 

雑誌名 出版社 Impact factor (2022)
Journal of Hazardous Materials Elsevier 13.6
Journal of Hazardous Materials Letters Elsevier
Water Research Elsevier 12.8
Environment International Elsevier 11.8
Environmental Science & Technology ACS 11.4
Environmental Science & Technology Letters ACS 10.9
Science of Total Environment Elsevier 9.8
Environmental Pollution Elsevier 8.9
Chemosphre Elsevier 8.8
Ecotoxicology and Environmental Safety Elsevier 6.8
Marine Pollution Bulletin Elsevier 5.8
Environmental Science and Pollution Research Springer Nature 5.8
Environmental Science: Processes & Impacts RSC 5.5
Toxics MDPI 4.6
Aquatic Toxicology Elsevier 4.5
Environmental Toxicology & Chemistry Wiley 4.1
Archives of Environmental Contamination and Toxicology Springer Nature 4.0
Toxicological Sciences Oxford Univ. 3.8
Water MDPI 3.4
Integrated Environmental Assessment and Management Wiley 3.1
Bulletin of Environmental Contamination and Toxicology Springer Nature 2.7
Environmental Monitoring and Contaminants Research JSTAGE
Journal of Water and Environment Technology JSTAGE
Japanese Journal of Environmental Toxicology JSTAGE

は環境系の総合誌環境化学や生態毒性に限定されないテーマを扱っている雑誌。Water Res. とWater、JWETはそもそも少し分野が違うかもしれませんが、何となく載せてます。

 

 

Impact factorについて

上の表を作ってHAZMAT(J Hazardous Materials)のIFの高さにびっくり。Elsevierのウェブサイトを見ると、2018年は7.7、2019年は9.0、2020年は10.6、2021年は14.2なのでここ2年ほどで急増している感じですね。なぜかは知りません。それほど優れた論文が多い印象は正直ありませんが、これは私の見ている範囲の問題かもしれません。

STOTEN(Science of Total ...)もここ数年でIFが増えた印象でしたが、2018年は5.6だったようなので元からHAZMATよりは低かったんですね。個人的にHAZMATはあまり読みませんが、STOTENは眺めることが多いです。STOTENのIFが上がり始めた2019~2020年くらいに「しょうもない論文が多くなってきたな」と思った記憶がありますが、2023年の今は結構面白い論文も多い印象を受けます。未だ玉石混交ですが、玉の割合が多くなってきたような。もっとも根拠ゼロの体感でしかないです。IFにつられて良い論文が集まりやすくなったのでしょうか。

一方、Aquatic ToxicologyやET&C(Environmental Toxicology & Chemistry)はIFがあまり増加していないため、相対的な地位は低下しています。それに伴ってか、最近は質が低い論文を以前より目にすることが多くなった気がします。これも根拠ゼロの体感ですが。ET&Cは、SETACの旗艦誌(flagship journal)なので、今でも面白い論文や大人数が集まってのオピニオン論文みたいなのはそれなりに掲載されていますがね。しかし両者ともまさかMDPIのToxicsにIFが抜かされているとは…。

ES&Tはそれなりに信頼しています。やっぱりEditorの権限が強くて査読者に頼り切っていないのが査読の過程から感じとれますが、そこが論文の質につながっているのかもしれません。

 

ElsevierとSpringer Nature・MDPIには投稿しない

これは個人的なこだわり。ElsevierやSpringer Natureの暴利を貪る姿勢には辟易しているので、なるべくこれらの雑誌には投稿しないようにしています。学術誌の購読料・掲載料高騰は「有名雑誌に掲載したいという研究者のスケベ心」が引き起こしているという指摘(by @the_kawagucci)にかなり賛同していて、自分自身でできることをやろうという考えです。もっとも有名雑誌に載せる理由は別に報酬目当てや名誉欲だけではなく、論文の反応が得られやすい・引用されやすい、あるいは査読の質が高いという点もあるとは思いますが。

ただこのこだわりは、自身が第一著者や責任著者の論文に限っています。特に若い研究者が第一著者の場合は、Elsevierの雑誌の高いImpact Factorや速い査読期間に強い魅力があるのも事実なので。ある程度の実績を得てきたからこういったこだわりを表明できるのであり、ポジショントークだとは認識しています…。

ElsevierやSpringer Natureを除くと、WileyのET&CかACSのES&T、RCSのESP&I、あとはJ-STAGEの雑誌くらいしかこの業界の雑誌はありません。環境学というより毒性学ですがOxfordのTox Sciもアリでしょうか。こういうところの雑誌を盛り上げていければなぁと思います。