備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: MP影響実験での底質中MP濃度の定量

マイクロプラスチック(MP)の話。MPの影響を調べた論文はもうすでにめちゃくちゃ多いですが、実はMPの曝露濃度を実際に測っている研究は多くないそうです。もっとも、蛍光ビーズを用いた場合は実測している場合も多いでしょうが、ファイバーやフラグメントではやはり実測していない研究が多いようです。なおこれは自分で調べたわけではなく伝聞です。

底質にMPを混ぜ込んで曝露する実験もそれなりに報告されてきていますが、その論文でMP濃度の実測をしているのか、少し見てみました。論文の選択は適当です。

 

de Ruijter VN, Hof M, Kotorou P, van Leeuwen J, van den Heuvel-Greve MJ, Roessink I, Koelmans AA, 2023, Microplastic effect tests should use a standard heterogeneous mixture: Multifarious impacts among 16 benthic invertebrate species detected under ecologically relevant test conditions, Environ Sci Technol 57(48): 19430-19441.

MPのリスク評価のトップランナーKoelmans氏のグループの論文。16種の底生生物を、environmentally relevant microplastic standard(ERMP)なるものに曝露して致死やら成長阻害やらを調べた論文です。ERMPはPP・PE・PS・PETのフラグメント、PPのファイバーを混合したもので、環境中の比率を反映しているそうです。

曝露濃度は0.1~20% w/w-dryと非常に高くて、5%と10%の底質については28日間の曝露終了後にMP濃度を強熱減量で測っています。強熱減量って粗すぎるやろと思わなくもないですが、5%や10%も入れているなら、糞や餌の食べ残しなどの変動する要因よりもMPが圧倒的に多いから妥当なのでしょうか。

 

Bour A, Haarr A, Keiter S, Hylland K, 2018, Environmentally relevant microplastic exposure affects sediment-dwelling bivalves, Environ Pollution 236: 652-660.

PEのフラグメントを二枚貝に曝露した論文。二枚貝と底質中のMP濃度を実測しています。底質については、乾燥後、飽和NaClで繰り返し密度分離してセルロースろ紙でろ過して個数を計数。けっこう簡易な手法ですね。実測値は理論値の半分程度だったり。回収率の確認などは特にしていないっぽいです。

 

Wazne M, Mermillod-Blondin F, Vallier M, Hervant F, Dumet A, Nel HA, ... Simon L, 2023, Microplastics in freshwater sediments impact the role of a main bioturbator in ecosystem functioning, Environ Sci & Technol 57(8): 3042-3052.

二枚貝イトミミズ(Tubifex tubifex)をMP底質に曝露して、生物撹乱(bioturbation)やCO2、N-NOxのフラックスへの影響を調べた論文。始めMP濃度を測っているかと思って読んだら、測ってませんでした。Control条件(=MPを添加しない底質)のMP濃度を測っているだけでした。

ちなみにControl条件では、ZnCl2で密度分離の後、フェントン反応で、ナイルレッド染色して傾向顕微鏡で計数。たぶんこのような手法が一番ベタな感じだと思います。