備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 環境RNA(eRNA)のあれこれ

某オンラインセミナーで紹介されていた論文たち。

河川や海、陸域における生物種の在、不在や生物量を推測するための環境DNA(eDNA)。環境DNAは、既に死んでいる生物からも検出されるため、本当はその対象地域に生息していない魚種なのに漁港や家庭排水のために検出されてしまうこともあるそうです。PCRで増幅する断片の長さを短くするなどの工夫はありますが、もっと生物の活性を反映した手法はないのか、ということで環境RNAに注目が集まっています。

早稲田で生態学会が開かれていた時(なので2017年)くらいに、環境RNAを毒性試験における非破壊的なモニタリングに使えないかなとぼんやり妄想してましたが、まだそういう応用例はほとんどないようです。

応用できたとしても、やはりネックは検出力でしょうか。流水式の魚類では問題ないかもですが、小型の甲殻類などの毒性試験では水は数Lも回収できないですからね。

 

 

Cristescu ME, 2019, Can environmental RNA revolutionize biodiversity science?, Trends Ecol Evol 34(8): 694-697.

2019年の総説、というか軽い読み物。「RNAは素早く分解してしまうから使えないのでは?」という懸念に反し、RNAは意外と分解しないっぽいよ、と述べてます。

環境RNAがどのような形態で存在しているのか、という議論は面白い。細胞に入っているのか、Extracellular vesicles (EV, 細胞外小胞) に入っているのか、カプシドに守られてるのか、それともfreeなのか。まだ知見は全然ないそうですが、ちょろっと書いてある生物体内でのmRNA輸送と絡めて考えると発展の余地が多くて面白そうです。

 

Wood SA, Biessy L, Latchford JL, Zaiko A, von Ammon U, Audrezet F, Cristescu ME,  Pochon X, 2020, Release and degradation of environmental DNA and RNA in a marine system, Sci Total Environ 704: 135314.

海産の多毛類とホヤでeDNAとeRNA(ともにミトコンドリアCOI)の分解速度を室内実験で調べた研究。水だけでなくバイオフィルムも調べてます。絶対量はeDNAの方が多いけど、分解速度はeRNAと大差なかったという結果。

水中では検出されなくなったときに、バイオフィルムでは検出されたのは面白い!毒性試験への応用はこっちのほうが現実的かも?時間的にある程度平均化された値を示しそうですし。

 

 

Tsuri K, Ikeda S, Hirohara T, Shimada Y, Minamoto T, Yamanaka H, 2020, Messenger RNA typing of environmental RNA (eRNA): A case study on zebrafish tank water with perspectives for the future development of eRNA analysis on aquatic vertebrates, Environmental DNA.

ゼブラフィッシュの組織特異的に発言する遺伝子に着目し、環境RNAがどの組織(鰓、腸管、表皮)から放出されたのかを追求した論文。ゼブラのSkinやmuscleで発現していない遺伝子でも水中の環境RNAとしては検出されています。