備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 環境RNAで水生生物の生活段階を区別できる

Parsley M, Goldberg C, 2023, Environmental RNA can distinguish life stages in amphibian populations, Mol. Ecol. Resources, in press.

これまでの環境RNAの論文は、リボソームRNAミトコンドリアRNAなど、条件や生活段階で変化しないような遺伝子を対象にしてきたようですが、この論文は生活段階の違い(例:オタマジャクシとカエル)を区別できるような遺伝子(rana larval keratinとkeratin 6A)を扱っています。

実験室、野外でアフリカウシガエルとサラマンダーの環境RNAを検出。感度(=幼体がいる系から幼体RNAを検出した割合)は両種ともに85%以上。一方で、偽陽性(=親のみの系で幼体RNAを検出した割合)もわずかにあった様子。ただ親の皮膚からはこのRNAは検出されなかったそうなので、遺伝子の特異性が低いわけではなさそう。20%を超える偽陽性があったのは初回のサンプリングの時だけなので、何か技術的な問題かもしれません。

野外への適用でも幼体がいない系を試してほしい気はしますが、野外への適用もある程度可能だということを実証していますね。

 

著者は下の総説も書いています。

Stevens JD, Parsley MB, 2023, Environmental RNA applications and their associated gene targets for management and conservation, Environmental DNA 5(2): 227-239.