備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

論文のメモ: 環境DNAのメチル化

Zhao B, van Bodegom PM, & Trimbos KB, 2023, Environmental DNA methylation of Lymnaea stagnalis varies with age and is hypermethylated compared to tissue DNA. Molecular Ecology Resources, 23(1): 81-91.

環境DNAでメチル化を見た初の論文。異なる月齢4段階(1~200日)のモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)を用いて、飼育水槽の環境DNAのメチル化をbisulfite処理+HISeqシーケンスで網羅的に調べています。比較のために組織DNAのメチル化も見ています。非常にシンプルなデザインですが、環境DNAのメチル化を調べた論文は初めてとのことで、面白かったです。環境DNA界隈は個々の遺伝子のみを定量PCRで読んでいる研究は多いですが、これは網羅的に読んでいる点が個人的には良かったです。

環境DNAのメチル化は日齢によって異なるパターンを示しており、環境DNAから齢構成を推測できる可能性が示唆されています。しかし、面白いのは環境DNAと組織DNAはかなり異なるメチル化パターンを示していて、環境DNAはhypermethylatedのようです。おそらく不要になってメチル化された細胞が環境DNAの起源だからと議論されています。

本文ではほぼ議論されてませんが、mapping efficiencyが環境DNAでは5%以下、組織DNAでは18%以下(SupportingのData S1)。環境DNAではバクテリアのDNAが多くてマッピング率が低いのかと思いましたが、なぜ組織DNAでもこれほど低いのでしょうか…?