昨年末に出たScience論文の関連(→その時の自分のメモ)。
Blair SI, Barlow CH, McIntyre JK. 2021. Acute cerebrovascular effects in juvenile coho salmon exposed to roadway runoff. Canadian J Fish Aquat Sci 78(2): 103-109.
血液脳関門(BBB; Blood-Brain Barier)の破壊がメカニズムらしいです。BBBが破壊?されることで脳血管系から血漿が漏れ出てくるとか。既報で示されていたヘマトクリット値の増加などは必要条件ではなかったそうです。
BBB破壊とScienceで発見された6PPD quinoneとの関係はまだ不明。キノンはredox activeな物質だから云々と考察で述べられてますが、まぁまだまだメカニズムは不明っぽいです。このBBB破壊が、McIntyre et al.(2018, Environ Pollut)で報告されている種間差をどう説明できるのか気になります。
(追記2022.04.22)
生じている事象の順序が、まだよく分からない。要はメカニズムが分からないってことですが。この論文の書き方が悪いとかではなくて。この論文の観察事実は、
- 血中の抗酸化力とチオール値は変わらず
- 血中タンパク量はわずかに増加
- 平均赤血球中ヘモグロビン濃度 MCHC は減少 (= THb/Hct)
- 総ヘモグロビン濃度 THb は増加
- ヘマトクリット Hct は増加
- メトヘモグロビンはない(=ヘモグロビンの酸素運搬力は失われてない)
- BBB破壊(=血漿流出)
という感じ。あとは行動に異常が生じている個体でもヘマトクリット値は大きく増加していなかったことから、ヘマトクリットよりもBBB破壊の方がマストではないかと論じてます。
(追記終わり)
Chow MI, Lundin JI, Mitchell CJ, Davis JW, Young G, Scholz NL, McIntyre JK. 2019. An urban stormwater runoff mortality syndrome in juvenile coho salmon. Aquatic Toxicol 214: 105231.
行動への影響の出方をStage 1~ Stage 6に分類。水表面を泳ぐようになり、平衡を失い、底に沈み、モリバンド(瀕死)。詳しくは読んでませんが、やってる内容はMcIntyre et al.(2018, Environ Pollut)とほとんど同じ。