※本記事は2013/09/06に別のブログ用に書いたものの転記。
日本大学津田沼キャンパスでの土木学会・全国大会(2013.9.4-6)に行ってきました。自分の発表ではなく、人の発表を聞きに行っただけです。
結果的には行って良かったです。ただ、高額な参加費を先生に払って頂いた価値があったのか、参加費に見合うほどの効果があったのかどうかは疑問ですが…。
やはり土木工学の学会なので、自分の関心に直接関係ある発表(環境生態毒性)はほとんどなく、水理学や数理モデルの発表を聞きました。自分の勉強不足のため、頭にすっと入らないことが多かったです。一度、汚濁物質の流出に関するモデルは勉強したいと思ってはいるのですが、いつも思っているだけで終わっています。
ブルーカーボンとは?
最も面白かった、そして最もためになったと思えたのは、ブルーカーボンに関する研究討論会です。 今行っている作業に関係する討論会なので来た方が良いよ、と先生に誘っていただいたのが、そもそも全国大会に参加した理由でもありますが、本当に面白かったです。
簡単に概要を。 まず、そもそもブルーカーボンって何かと言いますと、「水の中に吸収・貯留されている炭素」のことです。
地球温暖化の対策として、その原因物質であるCO2の取り扱い方は大きく2通り考えられます。 1つはCO2の排出を抑制する方法。もう1つは大気中のCO2を地中や水中に押し込める方法です。後者にはCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)という言葉がありますが、水中に貯留される炭素に限定したものを「ブルーカーボン」というようです。(もっともブルーカーボンは、温暖化対策として意図的に貯留した炭素以外も含めた呼称でしょうが。)
浅海・沿岸域でのブルーカーボン
外洋ではCO2は吸収されていることが分かっています。しかし外洋での知見に比べて、浅海域に関しては知見が少なく、そこでCO2の吸収が行われているのか、放出が行われているのかさえ分からないそうです。
ただ浅海では、炭素が蓄積されている可能性があります。それは植物が高密度で存在しているし、土砂の沈降に伴って有機物も速く沈降しているからです。また、浅海は都市域に近接していますから、人間活動の影響(例えば排水の流入)の影響を受けやすいので、浅海で炭素がどのように振る舞っているかを解明することは、気候変動対策を考える上で非常に重要であると言えます。
討論会で面白かったこと
以上のような背景から、浅海でのブルーカーボンと都市活動(というか下水処理の話)を考えよう、という討論会でした。
面白いと感じたのは、主に次の話です。
①窒素リンの含有率が炭素量に比べて高い下水処理水を放流することは、(植物プランクトンの異常増殖を招くために)赤潮発生・水質悪化の観点からは避けるべきことだと通常考えられているが、ブルーカーボンの観点から考えると、光合成が活発になり、炭素が水中に固定されるため(もちろん死骸が異常発生しない、高次摂食者への移行がうまく行われる、等の条件付きではあるが)むしろ望ましいかもしれない。
②深海中の溶存有機物の平均年齢は約6000年(Druffel et al., 1989)。非常に分解されにくい有機物質だが、その特徴に関しては分子量1000以下の低分子でC/N比が高い(15-20)ということの他の情報は、明らかになっていない。ただ近年、バクテリアが有機物を分解する際に副次的に生成される物質ではないかということが検討されている。
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