備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

塩酸からのDOCコンタミ

TOC計で水試料のDOC(溶存有機炭素)濃度をよく測定しています。

TOCはTotal Organic Carbonなので、TC(全有機炭素)からIC(無機炭素=炭酸塩炭素)を差し引いて求めます。その測定法には一般にTC-IC法とNPOC法(Non-Purgeable Organic Carbon)がありますが、いずれの方法でも水試料に酸を添加してICを揮発させる工程が含まれます。この酸として塩酸を用いることが多いです。

私の用いているTOC計では1 mol/Lの塩酸を使用するのですが、12 mol/Lなどの濃く、かつ純度の高い塩酸をたびたび希釈するのは面倒なので、1 mol/Lの塩酸を富士フィルム和光から購入しました。

この塩酸を、2年近く希釈せずにそのまま装置に使用してきましたが、今月になってブランク試料からも明確にピークが検出され始めました。色々検証した結果、純度の高い塩酸を装置に入れた場合はピークが消え、1 mol/Lの塩酸にTOCが含まれていることが判明しました。

 

1 mol/Lの塩酸は2年近くは問題なく使えていましたが、急にコンタミ源になってしまいました。プラっぽい容器(素材は不明)に入っていたため、何かが溶出してきたのでしょうか。TOC分析用のグレードではないのを使用していたのが良くなかったのですが、µg/Lオーダーの微量分析ならともかくmg/Lオーダーで検出されるのかぁと少し驚きました。

塩酸容器の素材が何か分かりませんが、プラスチック汚染、プラスチックの添加剤として使用される化学物質による汚染が問題となっている今、面白い問題でした。