備忘録 a record of inner life

やったことや考えたこと・本・論文・音楽の備忘録。 特に環境科学・生態毒性に関して。

Rejectされたー

W誌に出していた論文。Rejectでした。

コメントから察するに、1人の査読者はおそらくreject判断で、もう1人はmajor revision。rejectにした査読者は、そもそも論文の要件を満たせてないと思ってる様子。今回の論文は「~が原因とは言えない」というのが結論に来るネガティブなものだったからでしょう。ただ自分は今のままでも十分に独立した論文になると思うので、縁がなかったとして諦めるしかないか。というか、これから相当実験を追加しないとポジティブな、何かを言い切れる結論は出せないです。

 

英文校閲しなくてもいけるかと思ってたのですが、査読者から"Bad English"とか"needs to be reviewed by a native English speaer"とあったので、校閲業者に出してから、再投稿します。

 

 

(追記 2016.06.06)

英文校閲から帰ってきました。やっぱりなぜ直されているのかよく分からない箇所多数。冠詞のつけ方はホント分かりません。

直された理由がなんとなく分かるものは、次回から気をつけられるので下に記載しておきます。

・toxicity was the largest  → toxicity was the highest

 毒性は大きい小さいじゃなく、高いか低いか?

・the metal exposure at the same concentration level as found in the baseline of ... → exposure to metal at the same concentration as the baseline level in ... 

 concentrationはexposureにかかるのではなく、metalにかかるから?

・アメリカ英語では3つ以上の項目を羅列するとき A, B, C, and D のようにandの前にコンマを置く。

 ・e.g.やi.e.も同様にe.g., やi.e., 

 ・タイア:査読者からは「tireじゃなくてtyre」(英)と直され、校閲業者からは「tyreじゃなくてtireだ」(米)と直された。アメリカ英語とイギリス英語の間で振り回されてます。

・The concentration of dissolved oxygen and pH were ... → The dissolved oxygen concentration and pH were ... 

前者だとconcentrationsがDOとpHの両方にかかっていると誤解されてしまう。

 

 

 

論文のメモ: DaphniaからのDNA抽出法など

「DaphniaからのDNA抽出法

Athanasio C.G., Chipman J.K., Viant M.R. and Mirbahai L., 2016, Optimisation of DNA extraction from the crustacean Daphnia, Peer J, 4, e2004.

アラートで知った論文。Peer Jの論文ってどういうものなんだろうという興味本位で読んでみました。

Daphnia magnaのDNA抽出法を検討した研究。Whole bodyを用いて抽出すると甲皮(carapace)に含まれるキチンの吸光度が260 nmなので、吸光度でDNA濃度を測ると過大評価になる話とか、RNA later+アルコールベースの抽出法だと塩が共沈して残ってしまうという話とかは参考になりました。

 

(2016.08.21 追記)

DNAの質(断片長)や収量に与える影響は、抽出法より破砕法 homogenization の方が大きいそうです。Plastic pellet pestleでの破砕は、protease Kやビーズでの破砕に比べて長いDNA断片を取得できてます。収量はビーズ破砕 > pestle >> protease K。

 

「DaphniaのDD-PCR条件検討

Diener L.C., Schulte P.M., Dixon D.G. and Greenberg B.M., 2004, Optimization of differential display polymerase chain reaction as a bioindicator for the cladoceran Daphnia magna, Environ. Toxicol., 19 (3), 179-190.

論文の内容は、primer combinationとかDaphniaの個体差とかの条件を検討しているだけで、なんてことのないものです。が、研究の初期段階でこういう基礎的な検討を丁寧にやっておけばよかったなぁと反省。次に実験を立ち上げるときはこういうことをやりたい。

論文のメモ: Adverse Outcome Pathways (AOP)

名前は聞いていたけど、その中身はちゃんと分かっていなかったAdverse Outcome Pathways (AOP) についてざっくり勉強しました。

 

AOP: 生態毒性研究とリスク評価を支える概念的な枠組み

Ankley G.T., Bennett R.S., Erickson R.J., Hoff D.J., Hornung M.W., Johnson R.D., Mount D.R., Nichols J.W., Russom C.L., Schmieder P.K., Serrrano J.A., Tietge J.E. and Villeneuve D.L., 2010,  Adverse outcome pathways: a conceptual framework to support ecotoxicology research and risk assessment, Environ Toxicol. Chem., 29 (3), 730-741. 

2010年ETCの総説。化学物質による曝露がどのようにして生物学的に意義のある悪影響(Adverse outcome, AO; 死亡や生殖阻害)などにつながるのかを整理する概念のことを、AOPと呼ぶようです。AOPの考え方自体は別に新しくなさそうです。ただばらばらに存在していた知見をまとめようという動きが新しいんでしょうか(適当)。

この総説ではpathwayの例が5つ挙げられてます。(i) narcosis, (ii) photo-activated toxicity, (iii) aryl hydrocarbon receptor , (iv) activation of estrogen receptor, (v) impared vitellogenesis. (v)に関しては最初にある応答が生じてから(molecular initiating event; MIE)、最終的に生殖阻害につながるまでの経路がかなり明らかになっているみたいですが、他の(i)~(iv)では不明確な部分もあるそう。

読んでみて分かったのは、AOPは意外と実用志向ということ。影響予測や原因推定のために単純化し、さらに途中のpathway, mechanismが不明でも明確な相関があれば規制に応用しようとしてます。単純に気になるのは、将来的にどれくらいの数のpathwayを想定しているのか。この論文では5つ示されてますが。それぞれのpathwayの独立性とかも気になる。

ネット上に井口先生による日本語でのAOP解説がありました(→こちら)。 

 

追記(2018.07.08)

AOPについてもう少し詳しくまとめました(→こちら)。

 

予備審査

博士論文の予備審査、無事に終わりました。本審査に進めるということで一安心。

ど直球の質問が出た時に、詰まって大分沈黙してしまいました。研究の意義に関する質問だったので、はっきり答えられないとダメなんですが…。

審査後に指導教員から「潔すぎる」と言われました。最悪屁理屈でも良いからもっとディフェンスしなよ、ってことだと思います。

 

副査の先生の質問内容は厳しかったけど、雰囲気は優しかったですね。審査の先生は審査に落とそうとするのではなく、むしろ審査に通すための手助けをしてくれている、というのをどこかで読んだことありましたが、確かにそんな印象を受けました。

 

次は7月後半に本審査。その1月前に原稿提出。 

論文のメモ: DEGの選択方法

発現が変動している遺伝子 DEG (Differentially expressed genes) を検出、選別する方法。マイクロアレイに関してはたくさんの手法が提案されていて、いくつか読んでみました。

 

「Rank Products法

Breitling R. Armengaud P., Amtmann A. and Herzyk P., 2004, Rank products: a simple, yet powerful, new method to detect differentially regulated genes in replicated microarray experiments, FEBS Letters, 573 (1), 83-92.

fold changeの大きさで遺伝子をランク付けし、DEGを選び出すノンパラメトリック手法。すごいシンプルで面白いです。遺伝子があるランク以上になる確率はreplicatesの組み合わせから計算して、統計的に有意かどうかはpermutation testによって判断する。Rのパッケージもあります。

理由は理解できていないのですが、等分散を仮定しているようです。ばらつきの大きいデータでt検定との検出力の比較をおこなっているのがこの論文

この手法だと、発現量の絶対値が低い遺伝子もDEGとして選択されますね。

 

「WAD法

Kadota K., Nakai Y. and Shimizu, K., 2008, A weighted average difference method for detecting differentially expressed genes from microarray data, Algorithms Mol. Biol., 3 (1), 1.

こちらもfold changeをベースにDEGを選ぶ手法です。発現量の大きさで重み付けしたfold changeを基準に遺伝子を選ぶという手法。シンプルで面白いです。論文ではp値を出すような計算はしてませんが、上のRank Productと同様におこなえば計算できそう。RP法やt検定ベースの手法との比較論文も。

 

これらfold changeをベースにした手法より一般的に使用されているのが、t検定ベースのものですが、t検定ベースだとfold changeが小さくとも有意差が出るので実感と合わない結果が得られるんですね。

今は、t検定ベースの手法でlimmaパッケージのmoderated t testというのを勉強中。やはり仮定さえ合えばパラメトリックな手法を使用したいので。なんでも全遺伝子のばらつきをプールしてt検定をおこなう方法のようですが。

副査の先生に博論ドラフト提出

GW明けに博士論文の予備審査。今週、副査の先生方に論文ドラフトを渡しました。

 

副査は四人。うち三人が同じ学科で、一人は外部機関所属(つくばの某研究所)。

渡すためだけにつくばまで行くのは面倒だなと思ってましたが、直接会って良かったかも。色んな話が聞けてすごい勉強になったし単純に楽しかったです。審査の際に聞かれるであろうことを今分かって良かった。(まあ「何を聞かれるか分かっている=明快に答えられる」ではないのですが。)

 

論文ドラフトは本当にドラフトで、データ解析や考察がかなり不十分なのですが、一区切りさせたことで満足感が出てしまってました。副査の先生方と会って話したことで、ちょっと気持ちが引き締まったかな。

論文のメモ: Biotic Ligand Modelで考慮されていない水質の影響

環境試料に含まれている溶存態重金属がどれくらい毒性に寄与しているか推定中。今扱っている実験系では、各金属のフリー態濃度までは算出できるけど、Biotic Ligand Modelのように生物リガンドへの吸着量を推定するのは難しそう。どうしよう…。

というところで、そもそもBLMってどうやって生物リガンドへの吸着量を推定してるんだろうとか疑問が出てきて、下の論文たちを読んでみました。

 

 

「ニッケルと銅の毒性は 鰓への吸着量から推定できるが、フリー態活量からは推定できない

Meyer J.S., Santore R. C., Bobbitt J.P., DeBrey L.D., Boese C.J., Paquin P.R., Allen H.E., Bergman H.L. and DiToro D.M., 1999, Binding of nickel and copper to fish gills predicts toxicity when water hardness varies, but free-ion activity does not, Environ. Sci. Technol., 33 (6), 913-916. 

本当に鰓を採取してNiの含有量を調べていたんですね。知らなかったです。同じことを小さいヨコエビでもできるでしょうか…。どうも今の多くの研究はここまでやらずに回帰分析とかで推定しているっぽい?ですが(たぶん。これとか。いつか読もう。)。

面白いなと思ったのは、硬度が変化したとき別に鰓への吸着量も一定ではなくて、硬度が上がるほど吸着量も増えたという点。なんでも硬度によって膜のイオン透過能が変化するからだとか。水質の影響がspeciationだけじゃなくて生理面にも及ぶってのは、当たり前かもしれないけど面白かったです。

あと、DiToro (2001) のBLM総説のpart I, IIもざっと見。

 

 

「広塩性のカイアシへの銅の急性毒性:汽水域・海域でのBLM発展に向けて

Pinho G.L.L. and Bianchini A., 2010, Acute copper toxicity in the euryhaline copepod Acartia tonsa: implications for the development of an estuarine and marine biotic ligand model, Environ. Toxicol. Chem., 29(8), 1834-1840. 

塩分と曝露経路(waterborne or/and dietary)を変えて、Cuの毒性を調べた研究。ちょっと複雑なので内容をつかみきれてないかも。

上に書いたような水質変化と生理面への影響が言及されてます。餌なしの水系曝露だと低塩分域ほどCu毒性は高いけれど、餌ありの水系曝露だとむしろ高塩分域のほうが毒性が高いという結果。

考察で書かれていること:塩分が下がると、浸透圧を調整するために代謝率が上がってエネルギーが欠乏しやすいんじゃないか、だから餌がないとCu毒性も必要以上に?高くなってしまうんじゃないかという話。

 

 

最初に書いた問題は、ふわっとですが解決できそうです(なんとか逃げきれそう)。上に取り上げたのは結局自分の疑問に直結しない論文でしたが、ぼんやり読んでるうちに考えがなんとなくまとまりました。

 

 

(追記 2016.03.23)

IWSKさんにコメントで教えて頂いたWHAM-Ftoxについて、ざーっと文献を読んでみました。コンセプトに関する記述重視で、他は大分読み飛ばしてます。特に複合影響に関する箇所は ほぼスルー(というかパラメータの設定とかが理解できず)。

Tipping E., Vincent C.D., Lawlor A.J. and Lofts S., 2008, Metal accumulation by stream bryophytes, related to chemical speciation, Environ. Pollut., 156 (3), 936-943.
Stockdale A., Tipping E., Lofts S., Ormerod S.J., Clements W.H. and Blust R. ,2010, Toxicity of proton–metal mixtures in the field: linking stream macroinvertebrate species diversity to chemical speciation and bioavailability, Aquat. Toxicol., 100 (1), 112-119. 
Iwasaki Y., Cadmus P. and Clements, W. H., 2013, Comparison of different predictors of exposure for modeling impacts of metal mixtures on macroinvertebrates in stream microcosms, Aquat. Toxicol., 132, 151-156.

シンプルなコンセプトゆえ、どこかに書かれてたけど、汎用性は高そう。一つ一つの現象を説明するためというよりは、幅広い影響予測とかに使われる感じなんでしょうか。

 

論文のメモ: 路面排水の生態影響

降雨時の路面排水が及ぼす生態影響を、バイオアッセイで調べた文献たち。

  

「降雨時間と高速道路排水の毒性との関係

Kayhanian M., Stransky C., Bay S., Lau S.L., and Stenstrom M.K., 2008, Toxicity of urban highway runoff with respect to storm duration, Sci Total Environ., 389(2), 386-406. 

淡水産のC. dubia、ファットヘッドミノーP. promelas、緑藻P. subcapitatumと海産のウニS. purpuratus、発光バクテリアP. phosphoreum (Microtox) を用いて、高速道路排水の毒性を評価した研究。大規模な研究で面白かったです。

この論文のメインの結果は、初期降雨に伴う流出 first flush の毒性が高いというもの。first flushほど汚濁物質の濃度が高いからこの結果は妥当なんですけど、注意しないといけないのは時間が経った時の排水でも毒性の高いものがあるという点。

毒性の原因物質は、TIEで調べられてます。EDTAの添加やpH9で毒性が下がっていることや、化学分析結果からCuとZnがメイン毒性要因だと結論付けてます。

最後に排水サンプルのobserved Toxic Unit (TU) とCu・Zn濃度から推測されるpredicted TUとを比較して、多くのサンプルで「observed TU > predicted TU」 になったと示してます。そんで、Cu, Zn以外の要因が影響しているだろうと考察してますが、スペシエーションを考慮してないから実はCu, Znの影響ってもっと小さいかも。特にCuはかなりDOCと錯体を形成するだろうから(下のNason et al., 2012 参照)、predicted TUはもっと小さい可能性あり。(もちろんフリー態だけが毒性を示すのかどうかとか、色んな議論があるでしょうが。)

またabstractに「Surfactants were also found to be the cause of toxicity in less than 10% of the samples.」と書いてますが、その根拠がいまいち分かりませんでした。TIEでAerationによって毒性の低減したサンプルがあって、発泡してたからでしょうか? それでSurfactantが要因だと断定するのは行き過ぎでは…。

 

「降雨時の都市排水の毒性評価

Waara S. and Färm C., 2008, An assessment of the potential toxicity of runoff from an urban roadscape during rain events, Environ. Sci. Pollut. Res., 15(3), 205-210. 

高速道路排水の急性毒性をD. magnaとMicrotox、ホウネンエビT. platyurus、ウキクサL. minorで評価した論文。同じ場所から時期を分けて65サンプルを採取したけど、急性毒性を示したものはなかったみたいです。こういうネガティブ?な結論(毒性がないのは実際の生態系にとってはポジティブですけど)だけの論文も珍しい。

毒性がないのは交通量が2万/日と少なめだから、との考察。

 

「都市排水毒性の探索的研究

Marsalek J., Rochfort Q., Brownlee B., Mayer T., and Servos M., 1999, An exploratory study of urban runoff toxicity, Water Sci. Technol., 39 (12), 33-39. 

多くの路面排水サンプル(70個)でスクリーニング的な試験をおこなったexploratoryな研究。D. magnaと発光バクテリアMicrotox、クロモカルト、ミトコンドリア毒性を対象にしてます。

それぞれのバイオアッセイでEC10程度ならば影響なしと判断しているのですが、大体半分の試験で影響なしだったとか。交通量10万/日以上の高速道路では比較的毒性が検出されやすく、影響ありのサンプルは60%という結果(といっても上のKayhanianの論文 (2008) のように降雨時期との関係を示さないとあまり意味ない議論かも)。

 

 

 

ここからは、排水に含まれる重金属のspeciationに関する論文たち。

「高速道路排水における銅のspeciation測定

Nason J.A., Sprick M.S. and Bloomquist D.J., 2012, Determination of copper speciation in highway stormwater runoff using competitive ligand exchange–Adsorptive cathodic stripping voltammetry, Water Res., 46(17), 5788-5798.

高速道路排水に含まれるCuのフリー態濃度を、stripping voltammetryで調べた論文。

細かい部分は読んでませんが、多くのサンプルでCuの錯形成率(有機・無機含む)は90%以上だったそうな。化学平衡モデルのVisual Minteqによる計算結果もその傾向を支持していて、でもVisual Minteqは実測値よりフリー態濃度を多めに計算していたそうです。

 

「水文学が降雨時排水中の重金属speciationに及ぼす影響

Dean C.M., Cartledge F.K., Pardue J.H. and Sansalone, J.J., 2005, Influence of hydrology on rainfall-runoff metal element speciation, J. Environ. Engineer., (4), 632-642.

路面排水の大御所Sansalone氏の論文なのでチラ見してみました。Minteqで排水中の重金属(Cu, Zn, Cd, Pb)のspeciationを計算した論文。DOMとの平衡計算はGaussianモデル使用。

論文のメモ: ヨコエビの慢性試験用の人工淡水

「人工淡水におけるヨコエビの活動に及ぼす臭素の影響」

Ivey C.D. and Ingersoll C.G., 2016, Influence of bromide on the performance of the amphipod Hyalella azteca in reconstituted waters, Environ Toxicol Chem, accepted. 

ヨコエビの飼育・慢性試験はふつう、環境中の井戸水や自然海水(+落ち葉や環境底質)を使用しておこなわれます。EPAプロトコルにある人工淡水(or 海水)だけでは、なぜか上手く長期生存+繁殖してくれません(例えばKemble et al., 1999)。ちなみに自分はヨコエビを人工海水+環境底質で飼育してます。人工海水+人工底質ではうまく繁殖できませんでした…。 

Ivery and Ingersoll (2016) は、これまでのHyalella azteca の毒性試験に使用されていた人工淡水に臭素Brが不足しているのはないか、という研究。イントロによると、1990年代後半から既にBrの重要性が指摘されていたようです。少なくとも0.02 mg/L以上はBrを加えた方が生存・体長・産仔数に良いという結果。

 

自分は30‰人工海水で飼育しているので、既に60 mg Br/Lは与えています。海産ヨコエビを人工的環境で繁殖させるのに必要なのはBrではなかったか…。しかし何か特定の微量元素を加えるだけで飼育状態を大きく改善できるかもしれないというのは、良い示唆でした。例えばヨウ素Iやフッ素Fは、今の人工海水に欠けているので検討してみても良いかも(参考:Davis and Gatlin, 1996)。

 

最近読んだ論文のメモ: ニコチンの生態毒性 その5 ~微生物分解~

まだニコチン関連の論文読んでます。こうやって一つの物質に関して色んな角度から情報を収集するのって、意外と楽しいですね。

 

「カフェイン・コチニン・ニコチンの微生物分解」

Bradley P.M., Barber L.B., Kolpin D.W., McMahon P.B. and Chapelle F.H., 2007, Biotransformation of caffeine, cotinine, and nicotine in stream sediments: Implications for use as wastewater indicators, Environ. Toxicol. Chem., 26(6), 1116-1121. 

カフェインやコチニンを人間活動のマーカー物質として用いる研究があるけど、微生物によって分解されることを考慮しようぜ、という趣旨の論文。ニコチンはおまけ的な扱いですが、その部分だけ拾い読み。

河川底質にニコチンをスパイクすると42日間で、完全にCO2に分解されてしまう。ただ、下水処理場の下流にある底質だとほとんど分解されない。有機物リッチな底質だから、分解実験のバッチが嫌気的になることが原因のようす。

 

 

 「汽水・沿岸域における医薬品の微生物分解」

Benotti M.J. and Brownawell B.J., 2009, Microbial degradation of pharmaceuticals in estuarine and coastal seawater, Environmen. Pollut., 157(3), 994-1002. 

沿岸域で採取した海水にニコチンやカフェインなどをスパイクして、15°C暗所で曝気しつつ培養。一次反応で分解されるとして、ニコチンの半減期は0.68日~9.7日と短め。一方コチニンの半減期は70日~>100日と長めでした。実際ニコチンは下水処理場でほとんど分解されるそうなので、妥当でしょうか。

 

 

 「ニコチン分解の微生物学・生化学」

Brandsch R., 2006, Microbiology and biochemistry of nicotine degradation, Appl. Microbiol. Biotechnol., 69(5), 493-498. 

総説。ほとんど読んでません。ニコチンの微生物分解はPsedomonas属やArthrobacter属などによって行われることが分かってるそうです。高等生物の代謝経路とは異なってます。