帰省中に読了。
昔「単純な脳、複雑な『私』」を読んでから(「単純な脳、複雑な『私』」感想)、この著者のファンです。著者のTwitterからも分かりますが、自身の研究の直近だけでなく、ちょっと遠い研究の面白ばなしも意識的に収集してるんでしょうね。そんな幅広い知見収集の跡がうかがえる本です。「単純な脳、複雑な『私』」よりだいぶ軽いけど。
ここ数年、赤ちゃん関連の映像や話を観たり読んだりするとほぼ無条件で泣いてしまいます。本書でも何度も涙ぐみました。感動的エピソードが盛りだくさん、という訳では別になく、科学的な知見を交えて淡々と娘さんとの日常を語っている本なので、我ながらヤバいヤツだと思いながら…。
面白かった箇所をいくつか。
- 尿意と睡魔は赤ちゃんにとって不快な感覚。大人がそれらを快く感じるのは、尿意とまどろみの後の気持ち良い感覚を先読みしているから(p. 48)。
- 胎児は、母親のお腹の中から音楽を聴いて脳回路に記憶させている(p.55, 元ネタはPartanen et al., 2013, Plos One)。
- 幼い子は正確な記憶しかできないが、大人になっていくにつれ曖昧な記憶ができるようになっていく。これは進化の過程をなぞるような変化である。例えばトリは正確な記憶しかできない(p. 99)。
- 2歳ころの子どもの記憶には偽の記憶が含まれていることが一般的(p. 159, Conway and Pleydell-Pearce, 2000, Psychological Review)。
- 褒め方の難しさ。絵を描いた子どもを褒めると、絵を描くことへの興味を失うことがある。子どもは褒められ続けると「絵を描くことが好きだったのではなくて褒められることが好きだったのでは?」と解釈してしまうため(認知的不協和の解消)。対策としては、親の主観を述べる(「お父さんはこの絵が好き」)か、子どもの行為ではなく作品を褒める、など(p. 231)。
- なかなか理想通りの褒め方を実践するのは難しい。そんな時はせめて笑顔で楽しそうに接する(p. 250)。
(追記2019.07.07)
この著者の本で取り上げられている科学的知見は、キャッチーで面白いけど、信ぴょう性についての議論がほとんどないのは危うい気がします。例えばマシュマロテストは再現性(というか親の経済格差という交絡因子の解釈?)に疑問符がついてるという話もありますし…。